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【いちばんすきな花】第4話:細かすぎるあらすじ&感想

いちばんすきな花
第4話 2023/11/2(木) 22:00~

第4話。夜々ちゃん回でした。
思わず涙がこぼれましたが、より強く深くなった4人の絆が感じられて、ほっこりもした回でした。

本記事では、ドラマ「いちばんすきな花」第4話のあらすじや台詞を、感想や考察を交えながらまとめています。
脚本や台詞が好きすぎて細かすぎるほどに残しているので、長いです!笑

※ネタバレを含みますので、これからご覧になる方はご注意ください。





●「いちばんすきな花」第4話

息苦しい

4-1. 私はお人形

幼少期の夜々の回想シーン。怪獣の人形で遊ぶ男兄弟に混じりたかった夜々だが、母の沙夜子に止められ、女の子のお人形さん遊びを強いられる。

夜々の高校時代の回想シーン。クラスの出し物がメイド喫茶に決定し、メイド役の夜々との2ショット撮影を有料にしようとクラスは盛り上がる。「笑って写真撮られるだけでお金もらえるんやけん」と盛り上がるクラスに、無理に笑って合わせる夜々。

夜々、美容院Snail入社時の回想シーン。店の看板娘、マスコットとして、ホームページに載せるための写真を撮られる夜々。

夜々モノローグ「私は、お人形だ。」


今回は夜々回ですね。
幼少期から母には女の子として"女の子らしさ"を求められて育ち、その容姿から、学校でも職場でも、マスコット的な扱いをされてきた夜々のこれまでが表現されました。
この役は本当に、今田美桜さんが演じられるから説得力がありますね。
誰が見ても可愛くて、いつもまず外見や性別で決めつけられてしまう。
その上で、性格が悪いわけではない夜々ちゃんの、気遣いが出来るところや繊細さが丁寧にお芝居で表現されていて、夜々という役に余計ないやらしさを感じずに物語を見ることが出来ます。


4-2. 枯れた花束

椿、ある朝の出勤途中、前夜に元恋人の純恋がゴミ捨て場に置いていった花束を見つけ、しゃがんで手を合わせる。
それを見ていたご近所の方に、椿が花を置いていったと誤解され、仕方なくその花束を職場まで持って行き、自分のデスクに飾る椿。
-同僚A「見て、春木さんが今朝無意味に持ってきたお花、もう枯れてんの。」
-同僚B「え、なんで、実家花屋でしょ。花見る目なさすぎじゃない?」
-同僚A「だから弟さんが継ぐんでしょ。」
-同僚B「だから結婚もなくなったかぁ。」
-同僚A「女見る目もないかぁ。」
-同僚B「幸せになってほしいねぇ。頑張れぇ。」

このシーン、なんてことないシーンでしたが笑いました。
椿のデスクの花束を見て、勝手に色々と想像してひそひそ話をする同僚の女性2人。
あぁ、人ってこういう風に勝手にあれこれ想像されて、決めつけられて、噂されて、それが広まって、コミュニティの中でのキャラクターが出来上がっていくんだなと感じました。
同僚たちは椿を傷つけていたり見下している意識はないのだと思いますが、椿はこんな風に自分が言われている声が聞こえてしまうこと、今まで何度もあったんだろうな。
それでも、黙ったり、薄ら笑いを浮かべてやり過ごしてきたんだろうなぁと、この1シーンで色々と思いを巡らせてしまいました。


4-3. 今夜うち来る?

紅葉。出版社との打ち合わせの帰り、オフィスビルのエレベーターで偶然椿と鉢合わせ、そのまま二人でランチへ。
紅葉のイラストを見る椿。前回会った時に「好きな事を仕事にするのは…」という話を自分がしたことで傷つけてしまったのではと思い、詫びる椿。
紅葉のイラストを見て、「才能とかはわかんないけど、好きだなぁ。可愛い。」と椿。嬉しそうな紅葉。
「今夜うち来る?」とあまりにナチュラルに言ってしまい、照れる椿。
「ごめんなさい。一生言わないと思ってた台詞…」と椿。

前回3話の終わりの予告シーンで気になっていた「今夜うち来る?」の台詞が、こんなに早い段階で回収されるとは思いませんでした(笑)
一緒に過ごすことが椿にとってあまりに自然なことになってきているんですね。

前回の自分の話について詫びる椿ですが、前回、椿宅で当該の発言を椿がした際、表情が曇る紅葉の様子に椿は気付き、声をかけ、話題を変えていました。この時は何が紅葉に引っかかったのか分からなかった椿ですが、今理解し、あらためて謝ったんですね。
きっと椿はいつも他人の些細な変化にも敏感だから、「あれはなんだったのかな」とずっと気に掛けていたのかなと思います。

紅葉ですが、以前、出版社との打ち合わせにて、イラストについて「大事なのは良さより好きになってもらえるか」と言われてしまった紅葉。
椿さんが「好き」と言ってくれて、嬉しそうにする表情が可愛らしかったです。

椿がイラストレーターのことを絵描きさんと言うのも、椿らしくて可愛いですよね。
前回はおにぎりのことをおむすびと言っていたと思います。
こういうちょっとした言い回しでも人柄が表現されていて、巧みな演出だなと思いました。


4-4. おむすび

夜々の母・沙夜子。夜々への花を買うため、花屋に立ち寄る。
夜々の好きな花は何かと聞かれ、店内を見回しながら、迷う沙夜子。
好きな色はと聞かれ、「ピンクです」と即答する。

夜々、職場での昼休み、ピンク色のお弁当箱に入った母手作りのお弁当を食べる。母から夕飯は何がいいかとLINEが入ったが、友達と約束していると返す夜々。ちょうどゆくえからLINEが入り、「今夜ヒマだったりする、、?」のメッセージに嬉しそうにする夜々。
夜、ゆくえと夜々で定食屋で食事。椿がおにぎりのことをおむすびと言うこと、ポケットをポッケということを話し、「あの人自分が可愛いっていうことに自覚ないよね」「可愛いねぇ」と笑い合う。
夜々のもとには母から立て続けにLINEが入り、早めに解散する。

紅葉、コンビニでのバイト中、同僚に、飲み会の最初だけ顔を出してほしいと頼まれる。座っているだけでいい、盛り上がってきたら帰っていいと言われ、仕方なく「いいよ」と承諾する。

娘のために花を買う沙夜子。
女の子にはお花、という考えで、家に来るたびに飾っていくのかもしれませんね。
「夜々の好きな色はピンク」と決めつけているような雰囲気でした。

母とのLINEや会話を、なんとなく鬱陶しそうにする夜々ですが、夜々にとってはLINEで繋がることの出来た4人、中でもゆくえの存在が救いになっているようですね。
二人で行くのがオシャレカフェでもなく庶民的な定食屋さんというのも、気取らない感じがして良いなと思いました。
椿さんの「おむすび」呼びがいじられていて嬉しかったです(笑)

ゆくえも、4人で出会う前はこういう時の夜ごはんには赤田を誘っていたんでしょうね。それが自然に夜々に変わったのかな。微笑ましいです。


4-5. 女の子

夜々、帰宅後、4人のグループLINEにて、椿の好きな食べ物やお酒について質問。他愛ない会話で盛り上がる4人。
夜々のLINEの画面を後ろから覗き込み、「ゆくえ、椿、紅葉…」と呟く沙夜子。慌てる夜々。何の友達か、女の子かと沙夜子にきかれ、全員同い年の女の子だと嘘をつく夜々。

-夜々「ねぇママ。お兄たちがさ、誰か一人でも女の子やったら、夜々は産まんかった?」
-沙夜子「あぁ。そうかもしれんね。3人おる時点でもう家計は厳しかったけんね。でもそれでもどうしても女の子が欲しくて。で、最後の最後のチャンスに夜々が生まれてくれたけん。ありがとね、女の子に生まれてくれて。」
-夜々「(笑って) 産んでくれてありがとう。」

グループLINE、ほんとに普通の仲良い友達っていう感じで、みんなやりとりが楽しくて少しはしゃいでいるような雰囲気で、微笑ましいです。
お母さんの後ろから覗いてくるあの感じ、いやでしたね~!(笑)
夜々が自分の知らないところで男性と関わりをもつことを母は心配しているのだと思いますが、ここで、「ゆくえ」「椿」「紅葉」という、文字だけでは女の子ともとれるネーミングが生きていますね。

夜々は、母がどうしても女の子が欲しくて生んだ子だということがわかりました。
夜々が、自分の価値は女の子であること、自分は女の子としてしか求められていない、というある種の強迫観念を異常に強くもっていることには、母親が大きく影響しているんですね。
母としては、念願の女の子で、たっぷりの愛情を注いできたのでしょう。
その愛情が、夜々的には少しピントがずれていて、ずっと苦しかった。
その息苦しさがこの第4話でどう描かれるのか、この親子関係には注目です。


4-6. 差別と区別

美容院での仕事中、重い荷物を運ぶ夜々と同僚の女性。
-同僚「こういうのは男がやれよマジで。」
-夜々「男女で仕事の内容分けるのはセクハラって言われるからって店長が。」
-同僚「男女平等っていい言葉になってんの怖くない?隅々まで男女平等な世界、想像してみ?不具合多すぎて逆にどっちも生きにくいでしょ。」
-夜々「必要な区別をしてもらえないって、何よりも差別ですよね。

おのでら塾。朔也が適当に席につくと、「そこ女子の席だから座ると笑われるよ」と別の生徒が声をかける。それを聞いていたゆくえが、「自由席だから気にしなくていいよ。勝手にいつの間にか、こっちが女子でこっちが男子みたいになってて、でも関係ないから。あぁでも、実際いじってくるような子はいるから、気になるならこっち側座って。」と声をかける。
男子側の席に移動しようとした朔也だが、ちょうど隣の席にやってきた希子が、自分が隣に座ろうとしたから朔也が移動したと感じて声をかける。
-希子「は?別に隣がよくて座ったんじゃないから。いつもここだからここ座っただけだから。」
-朔也「いや女子の席だ…」
-希子「は?自由席だから。しょうもな。男子とか女子とか異論区別して、しょうもな。」

美容室スネイル。困ったように店内を見回す夜々。相良を見つけ、自分の客のシャンプーだけ変わってほしいと頼む。自分の客に、女の美容師のシャンプーは力が弱いから嫌だと言われたと話す夜々。シャンプーを代わる相良。

この物語で、夜々を軸に描かれる男女の区別や差別の話ですが、この物語の中で今後どこまで深く描かれていくのか、何か答えが提示されるのか、疑問を投げかけて終わるのか、気になります。

「男女平等」というワードと、それが掲げられたもとに広がる実態には、疑問や違和感を抱く場面が日常の中には多々ありますよね。
夜々と同僚の美容院での会話も、おのでら塾での男女が気付いたら分かれていく現象も、あるあるだなと思います。
希子ちゃんが学校に行かない理由のひとつにも、そういうことがあるのかな?

それにしても美容院でのシャンプーですが、女のシャンプーは嫌だなんていうお客さん、いるんですね。
確かに、マッサージとかだと、男性の方が力が強くていいなと思う時はありますが…。この美容院のシャンプーは指名システムがあるわけでもなさそうだし、こういう時に、なんで女であることを申し訳なく思わなければならないのか。面倒なのは客なのに、夜々が相良に迷惑をかけているような。理不尽ですよね。


4-7. お気に入りのお人形

スーパーで二人で買い物をする椿と紅葉。
別の客が可視の棚に置いていったポテトサラダを買ってあげる紅葉。子どもが走って落としたパイの実を買ってあげる椿。
「最後にアイス買いましょう。雪見だいふくとパピコ2つずつ。」と紅葉。パイの実が何個入りか、4で割れるか確認しながら歩く二人。
その後、椿宅に集まった、椿、ゆくえ、紅葉。ピザの宅配を取ろうとする3人。LINEに反応がない夜々のことを気にする椿。

4人のグループLINE。椿の家に集合するという夜々以外の三人。向かおうとする夜々だったが、店の前まで突然母が"お迎え"にきたため、母と帰宅し夕飯を食べる。
「ピザ残してあるよ」「いまパピコ食べながらUNOしてる」と届く3人からのLINE。LINEを返そうとする夜々。食事中にスマホをいじる夜々を、女の子なんだからやめなさい、行儀が悪いと叱る沙夜子。不服そうに謝る夜々。

-沙夜子「お友達がそうなんやろ?やめり?お行儀の悪か人と一緒におると伝染するんやけん。最近仲良くなった子たちやろ。だってこの前会った時、そん時までは今までの夜々やったから。こういうのは、大概周りが悪いっちゃけん。友達はちゃんと選ばな。」

食事中で席を立ち、友達とごはんに行くと出かけようとする夜々。自分より友達を優先するのかと止めようとする沙夜子。

-沙夜子「友達やけんて、他人やん。ママは母親やろ?やのに他人優先するとね?」
-夜々「他人やけど、他人の方が母親より私のこと分かろうとしてくれとるもん。ママは母親ってだけやん。産んだってだけ。お気に入りのお人形産んで、それで遊んどるだけ。

家を出ていく夜々。家に残された沙夜子。

雪見だいふくも、パピコも、開けたら2個食べないといけないやつ。
ピザは、一人では多すぎてなかなか食べられないやつ。
4人で当たり前のように分けるんだろうな。こういう小物使い、素敵。
前に紅葉が忘れ物にしたハンカチをしまった椿宅の引き出しの中にあったUNO、4人で遊ぶんだな。UNOも一人じゃ出来ないもんね。
ますます可愛い"4人組"にほっこりしました。

夜々と沙夜子の会話。ついに夜々が沙夜子に本音をぶつけましたね。
沙夜子の前ではこれまでずっと、夜々は本音は言わず、母親に合わせて、いつも笑顔で、対応してきたのでしょう。
夜々がそうだったから、沙夜子もまさか娘にとって自分が負担になっているなんて思いもせず、以前と違って自分だけを見てくれない夜々に違和感を感じて、心配になったのだと思います。
お母さん、ちょっと鬱陶しいけど、夜々の事を想っていないタイプの悪い母親ではなさそうなんですよね。
でも、これまでは黙って耐えていた夜々も、最近出来た"友達"のことを悪く言われて、ついに耐えられなくなった
今まではこういう時、行く場所もなかったけれど、今は"4人組"がある。
母の前から飛び出した夜々は、椿宅へ向かうのでしょう。


救われる場所

4-8. ピザ

椿の家に到着した夜々。着いて早々、玄関にて、椿と紅葉に「大丈夫?」「何かあったの?」と心配され、「大丈夫」と笑う夜々。
ゆくえに、「夜々ちゃん。ピザ固くなっちゃったからチンするね。」と言われ、涙が溢れそうになり、黙って頷き、部屋に入る夜々。

部屋に入った夜々。ピザを温めるゆくえの袖を無言で掴む。
泣きそうな夜々に気付き、椿にアイコンタクトを送るゆくえ。
それに気付き、サシで飲みに行こうと紅葉を連れ出そうとする椿。
それに気付き、「サシ飲み、行きます」と答える紅葉。
家を出ていく椿と紅葉。

-ゆくえ「ごはん食べた?」
-夜々「まだです。」
-ゆくえ「ピザでいい?」
-夜々「ピザがいいです。」

涙をこられられなくなった夜々。ピザを温めるゆくえ。

椿と紅葉の前では耐えたのに、ゆくえの顔を見て泣きそうになってしまった夜々。
椿、紅葉、ゆくえ、3人とも、現れた夜々の様子を見て何かあったのかと心配はしているのですが、椿と紅葉は「大丈夫?」「何かあった?」と聞いたのに対して、ゆくえは何も聞かず、ピザの話だけしました。
人って、大丈夫かって聞かれたら、大丈夫ってつい答えてしまう。
特に、今までどんな時もそうやってやり過ごしてきたから、それが癖になっている夜々ですし、自分のことで周りに迷惑をかけたくない夜々は、そうしてしまう。
逆に、何があったのかなんて聞かずに、いつもと同じように笑って、ピザをチンするねって言ってくれたゆくえ。
夜々が今いちばん心を許しているゆくえが、そうやっていつも通りいてくれるのが、夜々は嬉しかったんですよね。

その後ゆくえに甘える夜々。夜々が泣いても、すぐに「どうしたの?」と聞くわけでもなく、ピザを温めるゆくえ。
ゆくえの、こういうところ、好き。こういうところが人を救うんですよね。

気を利かせて二人で出ていく椿と紅葉。
一番苦手だった"二人組"を、夜々のために躊躇いもなく提案する椿
アイコンタクトで通じ合えてしまう3人。
4人が、少しずつ心の距離を近づけていて、お互いのために思い合って感じ取り合って行動が出来る。
出会った時間や会った回数に関係なく、この4人は、分かり合える4人、なんだなと感じられるシーンでした。
椿とゆくえの、お兄ちゃんお姉ちゃん感も良いですよね。

4人が、初めて自主的に二人と二人に別れる演出も好きです。
夜々がいない間も、3人が夜々の席を空けて座っていた演出も好きです。
4人組だからって、いつも4人でいないといけないわけでもない。
その時々、居たいように、居たいかたちで、一緒に居る。
それが出来る4人組
、いいな。


4-9. サシ飲み

居酒屋のカウンターで横並びに座り、サシ飲みをする椿と紅葉。サシ飲みはマルチ以外で初めて誘われたと笑う紅葉。

-紅葉「友達からパンダって呼ばれてて。直接呼ばれるあだ名じゃなくて、陰で呼ばれるやつ。あだ名っていうか記号。客寄せパンダって意味のパンダです。女の子に声かける係で、引っかかったらあとは男友達に引き渡すっていう、そういう役割やってて、今日もそれ系のお願いされてたんです。初めてドタキャンしました。椿さんがスーパー行こうってLINEくれたから。今頃何言われてるか。」

夜々が、母親の前から飛び出せたのは、4人組があったから。
紅葉が、パンダ役を断れたのも、4人組があったから。
4人組が出来る前と後でのそれぞれの変化が表現されているシーンでした。

陰で呼ばれるやつは、相性のこもったあだ名ではなくて、ただ貼りつけられたラベルのような記号。
あだ名と記号というワードで皮肉っぽく表現する台詞も印象的でした。


4-10. 夜々の辛さ

椿の家にて、キッチンに立っているゆくえと、席に座る夜々。

-夜々「中学生の時、保健室の先生に相談したことがあるんです。女の子でいることが辛いって。こう思うのは良くないのかなぁって。そしたら、いろんな定義の説明をされて。Lはこうで、Gは、Bは、みたいな。違いますってハッキリ言いました。男の子になりたいわけじゃない。そういう意味じゃないって。そしたら、男の子を好きになったことある?女の子を好きになったことは?って。」
-ゆくえ「なんで恋愛対象の話になるの?」
-夜々「そう思って、あぁもう話しても無駄だ、もういいやって思いました。」
-ゆくえ「あてはまらないものって、不安なんだろうね。
-夜々「あてはめないと間違って傷つけちゃうかもしれないから確認したかっただけなんだと思います。優しさだったと思います。
-ゆくえ「そういう優しい人って、さらに辛い想いしてる人を探し出して、その人使って慰めるんだよね。あなたは恵まれてるのよって幸せ強要して、そのより一層辛いって決めつけた人の辛さだって、結局は妄想でしかないのに。
-夜々「納得はしてるけど、辛いです。私は女だけど、女の子でいることがどうしようもなく辛くなる時があって。それだけなんです。こう思うのは、我儘で、贅沢で、良くないと思って、満足してますって顔して生きてきたけど、久々に母親に会ったら、ダメになっちゃって。」

泣き出す夜々。夜々の隣の席に座るゆくえ。

-夜々「女の子として愛されてることが、感じすぎてキツイし。こう思っちゃう自分も嫌い。多数派の"辛い"は、我儘なんですかね。」

ゆくえ、首を横に振る。夜々の背中をさする。

前半は、夜々に背を向けてキッチンに立って、静かに話を聞いてあげるゆくえ。
夜々が想いを吐き出して泣き出した後は、いつもの斜め前の自分の席ではなく、隣にそっと座ったゆくえ
"黙って背中をさする"は、生方さん脚本のドラマ「silent」でも要所で登場した表現でしたが、今回も印象的でした。

「多数派の"ツライ"」は、LGBTを「少数派の"ツライ"」とした上での表現なのかな?と思いました。

夜々が抱えている女の子であることの辛さは、自分が自分である前に"女の子"という記号でラベリングされて、誰も自分の中身を見ようとせず、外側である容姿や性別しか見てくれない、自分の価値はそこにしかない、という思いからの辛さですよね。
それは、母親の夜々の愛し方が大きく影響を与えたベースになっていて、夜々はずっとそれが苦しかった。

人の辛さって、誰かと比べるものでもなければ、なにかにあてはめて名前をつけなければいけないものでもない。
私は、これが辛い。あなたは、それが辛い。それだけで本当は良くて。
だから、"自分の辛さは誰かの辛さよりも辛くないから私は大丈夫"とか、そんな風に何かと比べてサイズを測るようなものでもないし、同じ辛さを抱えている人数が多いか少ないかも関係ない。
人からそうやって決めつけられて、わかったように対応されることも辛いけど、自分自身でそういう風に自分の辛さを処理して、大丈夫と思い込もうとしてやっていくことが、一番苦しいですよね。

やっと打ち明けた保健室の先生が、夜々の話をちゃんと聞いてくれて、相談に乗ろうとしてくれたのも、優しさかったのも、わかってる。
母親が、母親なりに自分を愛してくれているのも、想ってくれているのも、わかってる。
わかってるけど、違うんだよな。
でも、わかるから、もういいや。
そう思ってしまって、頼れる場所がどんどんなくなっていってしまった。
そんな夜々の苦しさが、ゆくえの前で吐き出されて、それをただ静かにゆくえが聞くという描写に、ぐっときました。

"私は、これが辛い。"
"あなたは、それが辛いんだね。"
それだけでよかったんだよね。


4-11. お人形にならないでね

二人でバスで帰るゆくえと夜々。
-夜々「ママは男の子みたいに育てられたらしくて。お兄ちゃんのおさがりの服着て、男の子のオモチャで遊んで、女の子の物がもらえなかったって。それが悲しかったけど我慢してたそうです。だから娘には思いっきり女の子を楽しませてあげたいって。それを聞かされちゃったから反発出来なくなったんですけど。」
-ゆくえ「妹がね、昔からあんまり人と話すのが上手じゃない子でさ。ちっちゃい頃ずっとぬいぐるみに話しかけてるから、お姉ちゃんが聞くよ、話してごらんって言ったの。そしたら"お姉ちゃん言い返すからやだ"って。ぬいぐるみに話すのは、言い返されたくないからなんだって。」

夜々に、「お人形にならないでね。夜々ちゃんでいてね。」と言ったゆくえは、自分の最寄り駅に到着すると、「降りるよ」と夜々を連れて下車する。

自分の家に夜々を泊めようと連れて来たゆくえ。
突然の来客に驚くこのみに、"友達"と夜々を紹介するゆくえ。
-このみ「そのちっこい鞄にパジャマ入ってんの?」
-夜々「入ってないです。」
-このみ「貸したげる。」

自分はお人形だというコンプレックスを持つ夜々の心を、またゆくえがそっとほぐしていくシーンでした。
帰らなくて大丈夫?とも、帰った方がいいよ、とも言わず、当たり前のように夜々を自分の家に連れて帰るゆくえちゃん、男前です。

このみちゃんが夜々を受け入れたのもほっこりしました。
ゆくえが"友達"を家に連れてくるなんてほとんどなかったんでしょうね。
夜々を連れてきた時点で、何か察して、そっと受け入れたこのみちゃん。
人付き合いが苦手だということですが、人の気持ちや関係性に気付けない鈍感な子ではないことがわかりました。


いちばんすきな花

4-12. 好きな人の好きなもの

翌朝、自分の家に帰った夜々。母親の姿はない。
ゴミはまとめられ、食器は綺麗に表れ、洗濯物は畳まれ、ごはんの作り置きは冷蔵庫に。棚には花が飾られている。母親に電話をかける夜々。

-夜々「あなたの長男が言ってました。”すごいよな、俺長男なのに4番目のお前より子どもの頃の写真少ないんやもんな"。次男はこう言ってました。"中学の時、部活で大けがして病院に運ばれた時、母さんお前のピアノの発表会優先したんやぞ"。三男は、三男が言うには、"俺たち3人なんかお前が生まれるまでの助走でしかない"って。」
-沙夜子「そっか。」
-夜々「すごく大事にしてもらえて感謝しとるけど、けど、辛かった。期待に応え続けるのも、他人だけやなくて家族からも"お前はええよな"って思われて辛かった。」
-沙夜子「うん。」
-夜々「ピンクもスカートも嫌いじゃないとよ。でも一番好きな色は紫やし、スカートよりズボンのが好き。料理は本当に嫌い。」
-沙夜子「うん。」
-夜々「ママのことは嫌いじゃない。好きだよ。好きやけど、嫌いなとこがいっぱいある。私の好きな物、わかった気になっとうところがすっごい嫌い。」
-沙夜子「ママも…ママも、夜々の事大好きなんよ。」
-夜々「うん。」
-沙夜子「好きやけん、嫌いになりたくないけん、ママの理想を押し付けてしまったのかもしれんね。ありがとね、付き合ってくれて。夜々は、好きな人が何を好いとうか、わかってやれる人になってね。
-夜々「…パパとお兄たちによろしく。」
-沙夜子「うん。じゃぁね。」
-夜々「うん。…あ。お花、ありがとう。」
-沙夜子「あぁ。あのピンクの、ごめんね。」
-夜々「別に、ピンクが嫌いとかやないって。」
-沙夜子「紫陽花なかったけんね、さすがにこの季節やと。
-夜々「うん。」
-沙夜子「ちゃんとお水ば変えてね。じゃぁね。」
-夜々「うん。またね。」

電話を切り、涙を拭う沙夜子。泣きながら母の作り置きを温める夜々。

夜々のいちばん好きな花は、紫陽花。
カタツムリがいる紫色の紫陽花。スマホの待ち受けにもしている紫陽花。
お母さんは、夜々のいちばん好きな花を、ちゃんと知っていましたね
花屋さんで最初に店内を見回していたのは、紫陽花を探していたんですね。

紫色の紫陽花の花言葉のひとつに、「辛抱強い愛」があります。
第1話を鑑賞した時は、夜々がずっと周りからの目に耐えてきた辛抱を表現しているのかと思いレビューしましたが、この「辛抱強い愛」って、夜々の母親に対する愛なのかもしれないなと、今思いました。
ずっと苦しかったけど、お母さんのことが好きだったから、耐えてきた。
雨が降る中でも凛と咲く紫陽花に自分を重ねて、一生懸命笑って、ちゃんと綺麗に咲いて。
その裏に隠していた本当の自分を一番見つけてほしかったお母さんに、やっとちゃんと自分の気持ちを言えた夜々。
お兄ちゃんたちもずっと、「夜々ばかり可愛がられて」って思いながら過ごしていたんですね。
夜々の話を静かに聞き、理解するお母さん。
お母さんはあまりにも"女の子"を夜々に押し付けていましたが、ここで夜々の事を理解してくれるお母さんで、この二人がちゃんと"親子"で、良かったです。

もっと早く本音を伝えていたら、もっと早く夜々は辛さから解放されていたかもしれません。
口に出して話してみれば、意外とあっさりわかってもらえて、変われちゃうことってありますよね。
なんだ、私ってこんなことも言えなかったのかって、意外とあっけなく、つかえが取れていったりする。
でも、そんな簡単なことをなかなか出来なかったのは、夜々が、お母さんの愛情をちゃんと理解していたからですよね。
お母さんの愛情は確かにあって、夜々に伝わっていて、だけどそれが、夜々が欲しいものとは少し違っただけ。
お母さんのこと、夜々はちゃんと好き。好きだけど、嫌いなところがあっただけ。
ここで本音を言えて、分かり合えたこの親子なら、今後も気まずくならず、変わらず親子でいられそうですね。よかったです。
母親がただの毒親という描写で終わらないのもよかったです。
生方さんの作品の世界には、本当の正真正銘の根っからの悪者がいつもいないのが好きです。

夜々ちゃんの涙には、お母さんごめんね、という、期待に応えられなかったことへの申し訳なさもあるように思いました。
だけど、やっと本音を言えて、楽になれた安堵感もある。
今田美桜さんのこのシーンのお芝居には、思わず涙してしまいました。

椿宅でのピザもそうですが、泣きながらごはんを食べる演出も、坂元裕二さんや生方さんの脚本でよく登場しますよね。
人の生きる逞しさとか、生きていける、大丈夫、というこの表現。
カルテットのすずめちゃんとか、silentの紬とか。とても好きです。


4-13. いちばんすきな花

椿、自宅の冷蔵庫に残された「4で割って余ったぶん、あげます」という夜々のメモ付きのパイの実を食べながら、何かを思う様子。
その日の夜、閉店間際の美容室Snailを訪れた椿。驚きながらも中に通す夜々。椿の髪の毛をカットしながら会話する二人。

自分のスマホの待ち受け画面のカタツムリを見せて、「これなんでしょう?」と椿に聞く夜々。「でんでん虫」と答える椿。
「紫陽花も好きなの?」と椿に聞かれ、「一番好きな花です」と答える夜々。

-夜々「椿さんは?」
-椿「一番とかはないかな。いろんなのに囲まれてたから。一番て決めちゃうのが申し訳なくて。」
-夜々「椿さんぽい。」

-夜々「なんで椿さんなんですか?お名前。」
-椿「花屋にないからって。花屋に、まぁ置いてる店もあるかもしれないけど、うちの実家は椿ないから、だから。」
-夜々「たくさんお花があるおうちだけど、椿さんは椿さんだけってことですね。」
-椿「まぁそういうことらしいです。夜々ちゃんは?」
-夜々「長男アサト、次男マヒル、三男ユウヤ。」
-椿「朝、昼、夕!」
-夜々「(自分を指して) 夜々です。単純ですよね。」
-椿「兄弟って感じでいいけどね。」
-夜々「椿さん、もしうちの母親に会う機会があったら、26歳女子の椿ちゃんってことで押し通してください。」
-椿「無理じゃないかな。」

笑いながら話す二人。カットを間違える夜々に慌てる椿。
楽しそうに話す二人。

椿さん、夜々ちゃんのことが心配で、大の苦手な"2回目の美容院"に自ら足を運んだんですね。
ゆくえはゆくえの優しさで夜々に寄り添って、椿は椿の優しさで夜々に寄り添う。
やっぱりこの二人のお兄ちゃんお姉ちゃん感、好きです。

カタツムリのこと、椿ならでんでん虫と言うと思ってわざと聞いたであろう夜々。
「椿さん、でんでん虫って言ってましたよ」って、ゆくえと笑うんだろうな。

タイトルの「いちばんすきな花」がサラっとここで回収されましたね。
相手が好きなものを知ることって、よく考えたら愛おしいことですよね。
これが好きだろうって一方的に押し付けるのではなく、ちゃんと相手が好きなものを知ること。知ろうとすること。
人との関係を築くって、そういうことなのかもしれないですね。
嫌いなものを知って避けることよりも、好きなものを知って尊重すること。
この物語のタイトルに込められたひとつの意味なのかもしれません。

夜々の兄弟の名前が、三男に「夜」でなく「夕」をつけたあたり、母親の女の子がほしいという執念を感じます(笑)
そんなことも笑ってネタのように話す夜々の表情が、すごくスッキリしていて。
お母さんに本音を言えた後だから、心が軽くなってよく笑いよく喋る夜々に、ほっとしました。
椿さんも、何があったのかはもうあえて聞かないけれど、そんな夜々を見て安心しただろうな。
椿さんはこのままSnailに通うのか?楽しみです。


4-14. 良い悪いと好き嫌い

紅葉のバイト先のコンビニを訪れたゆくえ。外で二人でコーヒーとピザまんを食べながら紅葉のイラストについて話す二人。

-紅葉「小5の時、ゆくえちゃんが高3の時、大学受かって上京するって時に、絵描いて、あげて。」
-ゆくえ「あれねぇ。うん、まだあるよ。持ってる。」
-紅葉「え、持ってるの?」
-ゆくえ「こんなちっちゃい男の子がプレゼントしてくれた絵、捨てらんないよ。」
-紅葉「そっか。あれあげた時、好きって言ってくれたのがすごい嬉しくて。子どもだったって言うのもあるけど、絵見せるとみんな、上手だねぇとか才能あるねとかそういう褒め方するんだけど、ゆくえちゃんだけは好きって言ってくれたから。
-ゆくえ「良いとか悪いをさ、好き嫌いとごっちゃにする人いるでしょ。
-紅葉「うん。そういう人嫌い。」
-ゆくえ「私も、絵の良し悪しはよくわかんないけど、好きなのはわかるし、良し悪しと好き嫌いは違うし。ほら、椿さんのことは好きだけど、いい人だから好きってことじゃなくて。良いとか悪いには理由はいるけど、好きとか嫌いに理由はなくてもいいんだよ。
-紅葉「椿さんのこと、好きなんだ。」
-ゆくえ「好きだよ。好きでしょ?」
-紅葉「うん。」
-ゆくえ「夜々ちゃんも好きでしょ?」
-紅葉「うん。」
-ゆくえ「ゆくえちゃんも好きでしょ?」
-紅葉「…」
-ゆくえ「え?嫌い?あんなに市民プール連れてってあげたのに」

昔話をして笑う二人。

-紅葉「今度はちゃんとどっか食べに行こうよ。」
-ゆくえ「うん。4人で行こ。」
-紅葉「…うん。行こう。」

おおおーーーーーー
紅葉のゆくえちゃんへの想いについてはチラホラと伏線がありましたが、やっぱりそういうことなのか。
この4人組には恋愛感情はないといいななんて思っていたけど、ここから物語のテーマであった「男女の友情は成立するのか」に繋がっていくのかな?
次は紅葉回のようなので、展開が気になりますね。

紅葉のイラストをめぐって、「良い」「悪い」「好き」「嫌い」のキーワードが度々描かれますが、このシーンでのゆくえの台詞には共感です。
良い悪いと好き嫌いをごっちゃにして、自分の好き以外を悪だとして否定する人っていますよね。
自分はそうなりたくないなと思います。
また、好き嫌いに理由はいらないというのも、心に残る台詞でした。
何かしら理由をつけて一緒にいたのが椿と純恋で、理由もなく好きというだけで一緒にいられたのがゆくえと赤田でしたね。
そう、その赤田が!!!次回また登場しそうですね!!
また仲野太賀さんに会えるとは、歓喜です!!
ゆくえの赤田への想いだけは、どうかぶれないで友情であってほしいなぁ。





次回4話から、恋愛感情の「好き」が描かれ始めるのか?
楽しみですね。



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