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【silent】第7話 こまかすぎるあらすじ&感想

昨年2022年10月期に放送され、社会現象にもなったドラマ「silent」。
ドラマ大好きな私はもちろん当時も見ていましたし、何度も録画も見ましたし、シナリオブックも購入し、ついには円盤も購入してしまいました。
1年が経ち、Blu-rayでディレクターズカット版を観直しているのですが、本当に大好きな作品です。
当記事では「silent」第7話のあらすじ&感想を好きなだけ語っています(笑)


●「silent」概要

公式サイト

放送時期、キャスト、スタッフ

【放送時期】2022年10月期 フジテレビ 木曜22時
【キャスト】青羽紬役…川口春奈さん、佐倉想役…目黒蓮さん(SnowMan)、戸川湊斗役…鈴鹿央士さん、桃野奈々役…夏帆さん、佐倉律子役…篠原涼子さん 他
【脚本】生方美久さん
【プロデュース】村瀬健さん
【演出】風間太樹さん、高野舞さん

●「silent」第7話

7-1. 関係ない

想と奈々を少し遠くから見つめる紬。奈々は鳴り続けるスマホを耳にあてている。想は紬の姿に気付き、奈々にかけた電話をそっと切る。紬の姿に気付いた奈々。奈々と目が合った紬は、二人に背を向けて来た道を戻っていく。
奈々は、想の前から去るように歩き出す。振り向くと、想は紬の背中を追いかけて走っていた。
紬に追いついた想。そんな二人を見つめ、俯き、別の方向へ歩き出す奈々。

ベンチに座る想と紬。「奈々と話したの?」と聞く想。ちょっと話したと言う紬に、何を話したのかと聞く想だが、紬は少し黙った後に、「大丈夫。大丈夫。」と答える。
-想「奈々、泣いてて。」
-紬「泣いてた。うん。泣いてて。私のせいかもしれなくて、わかんなくて。(手話にせず話したため伝わっていないと気付き) あ、えっと、なんて言えばいいんだろう…」
-想「青羽は大丈夫?昨日ちょっと喧嘩になって。聴者とろう者と中途失聴者、みんな違うから分かり合えないって言われた。」
-紬「…」
-想「青羽には関係ないから気にしないで」
-紬「関係ない?」
-想「巻き込んでごめんね」
ううんと首を振る紬。心配そうに紬を見る想。

奈々と紬の間に挟まれてしまう想、紬を追いかけました(涙)
紬は奈々とあの話の後だから、想と奈々が今は二人で話すべきだと思い立ち去ったのだと思います。
そんな紬を追いかけた想。以前は避けようとしていた自分を紬が何度も向き合ってきてくれたように、今度は想が紬を追いかけました。
想の中では、好きなのは奈々ではなく紬。紬一直線。その思いから、紬を巻き込みたくない、心配かけたくないと思い、「関係ないから」と伝えました。
一方紬は、「関係ない」という言葉や、「分かり合えない」という言葉に、どこか線を引かれたような気持ちになったのか、複雑な表情を浮かべました。

紬が「大丈夫」を繰り返す時は、大丈夫じゃない時。
こんな時に今まではいつも湊斗がいてくれたんだよね(涙)
はぁ。オープニングから切ない。

そして、目黒くんのお芝居ですが、手話をしながら音が鳴るような息遣い、ろう者特有の音が、この第7話あたりからよく聞こえるようになってきたように思います。
夏帆さんもずっとそうですが、本当にリアルなお芝居ですよね。
これって鳴らそうと思って鳴らせている音ではないような気がします。手話で思いを伝えよう、自分の言葉で話そうとしているから聞こえる音。
真摯に手話と向き合って習得されてお芝居をされたのだと感じます。


7-2. 自己満足

古賀のフットサル施設を訪れた湊斗。「今日は青羽来ないの?会いたかったなぁ」と古賀。知っていてわざと聞いた古賀に、顔を合わせて笑う二人。
-古賀「あれだよなぁ。振った方って悪者っぽくなるもんな。事情を知らないやつから見ると。青羽、別れたくないって感じだったろ。」
-湊斗「思ってたより。」
-古賀「じゃぁ、なんで?」
-湊斗「自己満足。二人がどう思うか、もう途中からどうでもよくて、ただの俺の自己満足だったんで。だから満足です。大丈夫です。」
頷く古賀。笑う湊斗。

紬の部屋にて、光と真子の2人。
恋愛って、自己満足のぶつかり合いでしょ?相手のためにって自己犠牲ばっかり払っても、バランスとれなくなってうまくいかないんだって。結婚とかなると違うのかもだけど、恋愛なんて一時の感情と口約束なんだからさ。自己中振りかざしても上手くいく相手といるのが正解なんだって。」と真子。
真子に最近恋をしているかと聞かれ、「他人の恋愛客観視してる方が楽しいんだよね。参加するの疲れるし。」と答える光。
そこに紬が帰宅。奈々と会ったことを話すと驚く真子と光

来ました、大好きな古賀セン!
紬が別れたくない感じだっただろうって、傍から見ていてもやっぱり、紬のぽわぽわと好きは溢れていたんだろうな。
自分への自信のなさから、湊斗だけが気付けていなかった。
別れるってなってからの会話の中で、紬の自分への想いに気付き受け止められた湊斗でしたが、もうこの時点では、湊斗も前を向こうとしている様子です。
最初は二人のためだったけど、最後は自分のため。もういいやって、降りる方が苦しくなかったし、それを正解にするしかなかったんだよね。
湊斗、おつかれさまだよ本当に。幸せになって。

からの、真子ちゃんと光くんの会話。
どちらか一方だけが我慢したり相手に合わせようとするとうまくいかないという真子ちゃんの台詞と、参加すると疲れるという光の台詞。
紬と湊斗のことを思っての発言でしょうが、今後の想と紬の関係にも通じる言葉でした。


7-3. 振らなくていいよ

奈々、自宅にて本を整理している。何冊かをまとめ、紙袋へ。
想の自宅を訪ね、玄関前にて、ドアノブに本を入れた紙袋を掛ける奈々。用意していた「借りてた本 ありがとう。」と書いた付箋を袋に貼り、帰ろうとすると、ちょうど帰宅してきた想と遭遇してしまう。
「借りてた本、返しにきた。全部そろってるか確認して。また会って返すのめんどくさいから。」と伝える奈々。
「分かった」と言い。家に入ろうとする想に、「ここで待ってる」と伝える奈々。奈々の様子を見て、想も家に入らず、玄関前で本を確認し始めると、図書館から借りた本が紛れていた。

-想「貸しすぎてて、全部そろってるか分かんない」
-奈々「実は半分も読めてない」
-想「読み終わってからでいいよ」
-奈々「ううん もう読まないからいい。想くんが勧めてくれる本、正直あんまりおもしろくなかった。」
-想「面白いって言ってたじゃん。」
-奈々「想くんが好きって言うから 好きなふりしてた。

恥ずかしくなり、本で顔を隠す奈々。奈々に近づき本を奪う想。笑い合う二人。
-奈々「振らなくていいよ。振った側って悪者みたいになるでしょ?勝手に好きになられただけなのに。想くんは今までもこれからもずっと友達。悪者になろうとしなくていい。大丈夫。またね。」

背を向けて歩き出した奈々。立ち止まり、少し考えてから振り向き、忘れていた図書館から借りた本を回収して、帰っていく。背中を見送る想。

奈々ちゃん(涙)
今日は想と会うつもりがなかったから、あらかじめメモを書いた付箋を用意していたのでしょう。
ここからは妄想ですが、奈々が、大好きな想から借りた本を間違えるわけないと思うんですよね。
だから、図書館から借りた本を一冊忍び込ませたのはわざとで、気付いた想から後日連絡をもらったら、その本を受け取るために会って、そこから"私達友達ね"って、少し日をおいて笑えるようになったら話そうと思ってたんじゃないかな、と妄想しています。
だけど、想に会ってしまった。その場で本を確認してもらって、図書館から借りた本に気付いた想。
少し話せて、奈々ちゃん的には想くんへの恋愛感情をおしまいにするつもりで話が出来て、またねって笑えて。
もう、"図書館の本"という口実がなくても、前みたいにわざとリュックのチャックを開けておかなくても、また普通に友達として会えると思えたから、本は忘れて行かずに、わざわざ戻って持ち帰ったんじゃないかな。
という、私の妄想です。妄想ですが、そんな奈々ちゃんが愛おしくて。奈々ちゃんも幸せになってほしい(涙)

ていうか「読み終わってからでいいよ」とか言っちゃう想くん、もうほんと佐倉くんだな君は(笑)
恋愛偏差値だけ低めな感じ、こういう鈍感な感じが想くんですよね。本当にモテる男はこうなのか。湊斗はあんなに繊細で察しまくり星人なのに微妙にモテないのに。あぁ、湊斗…(エンドレス)

好きな人が好きって言うから借りて読んだ本、全然面白くない。可愛い。
湊斗もそうやって紬に合わせてたなぁ。
紬も高校時代、そうやって佐倉くんに合わせてたよね。いつからか佐倉くんの好きな物が紬の好きにもなれたけど。
こういうちょっとした分かり合えなさと分かり合えることの違いが、一緒にいられる"二人"を分けるのでしょうか。深いです。


7-4. 声

想の実家、想の部屋の本棚の本を見ている萌。律子がやってくる。
-律子「想…高校の時の友達に会ってるの?」
-萌「うん。普通に仲良くしてるみたい。」
-律子「…」
-萌「え?何が不満なの?良かったじゃん。お兄ちゃん楽しそうだよ。みんなとフットサルして。高校生の時みたいに。」
-律子「高校生の時みたいにいかないでしょその頃と違うんだから。ここ何年もあんな風に人と会わなくてもいい仕事して、奈々ちゃんしか友達もいなくて。声だってめったに出さなくなっちゃって。聞こえる人と関わると傷つくから。だからそうしてきたの。やっと静かに…落ち着いて生活が出来るようになったのに…変に刺激になる人と関わらせたくないの。」
-萌「それは…それは、お母さんの自己満足だよ。」

契約更新のため職場を訪れた想。聴者の上司とは音声変換アプリで会話。
-上司「あのさ、いつからって言ったっけ?耳悪くなったの。」
-想「(指で数字を作って) 18歳」
-上司「えそれって、そういう場合ってさ、しゃべれないもんなの?全然いいんだけどね、どうなのかなって思っただけで。いや、ごめんごめん、あの仕事はね、今まで通りメールのやりとりで全然問題ないし…ごめんね…」
表情が曇る想と、謝る上司。

やっぱりお母さんは想が心配ですね。
高校卒業してからこの8年の間、想が自分の耳に訪れた変化のなかで苦しむ姿を見てきた母親ですもんね。
想が傷つかないこと、苦しまないことを一番に優先して、想がしたいことを優先して、大学に進学することも、サッカー部を辞めることも、友人と縁を切ったことも、人と関わらない仕事を選んだことも、東京で一人暮らしを続けることも、想が自分で決めた静かに生きていくための選択を、すべて尊重してきてあげたのだと思います。
聞こえた頃の自分に線を引いた想が、またその頃の友人と関わることで苦しむのでは。そう思う母の気持ちは分かりますが、そばで母のイライラや心配を受け止めなければならない萌ちゃんは苦しいですね。
お母さんと想も、なかなか通じ合えない二人です。

想が声を出さないことを不思議に思う上司。ここでの上司は、"簡単な答えであれば声で言ってくれれば早いのに"と、嫌味ではなく単純にシンプルにそう思って聞いた質問だったように思います。
普段は在宅勤務の想は、こんな会話になることが嫌で、そういう働き方が出来る職場を選んだのでしょう。
自分が喋らないことを、面倒だと思われる。そんな風に思って、ちくちく傷ついてきたのかなと思うと切ないです。
最後、一瞬想が笑うんですよね。力なく。そうやって笑って、すみませんって、自分が悪いみたいに笑うこと、いっぱいあるんだろうな。


7-5. 声で喋らない理由

ファミレスで待ち合わせをした紬と想。想の仕事の話。
「人と関わるの嫌で、今の仕事に落ち着いたのに時々こういうことあって緊張して疲れた。」と手話で早口で話す想だが、手話を理解出来ず、もう1回言ってとお願いする紬。「大丈夫 仕事の愚痴」と笑う想。
奈々が大丈夫だったかを聞く紬に、「青羽は気にしなくていいから」と笑う想。少しだけ笑って頷く紬。

一緒にファミレスに来るのは高校生ぶりな二人。昔は遅くまで話しててよく店員や親や光に怒られたねと思い出話をする。
「よく話したよね…」と独り言を呟く紬。少し黙ってから、想に話しかける。

-紬「ずっと気になってたんだけど…」
-想「なに?」
-紬「声で喋らないの、なんで?もともと聞こえてた人だと、声で話す人が多いって聞いたから。佐倉くん、なんでかなって。」
-想「…」
-紬「あ、声出してってことじゃなくて、私が手話わかんない時、わざわざ繰り返したり、文字打ったり、めんどくさいかなって思って。」
-想「(スマホで) この時間がもどかしいから声で話せよってこと?」
-紬「違うよそんなこと思ってない。理由があるのかなって思っただけ。」

スマホで「声が好きなんだもんね」と打つが、まっすぐ自分を見る紬を見て、その文字を消し、手話で「手話があれば十分ってだけ。奈々としか話さないから、声が必要ないってだけ。」と言って笑う想。そっかと頷く紬。
「わかった。もっと手話わかるように頑張るね。ごめんね。」と紬。
気まずい空気の中、店内でマグカップが落下し割れる音が響く。驚く紬。想には聞こえない。「どうしたの?」と言う想に、「なんでもない」と答える紬だが、紬の様子を見て店内を見回した想は、割れたカップに気付く。

想と紬の距離感が少しずつ表れてきました…。
職場でのこともあり、苛々していた想。その苛々を紬に見せられるようになったのかと思うと、再会してから想もだいぶ心を開いたんだなと思えますが、この時の想にとってトリガーだった「声」の話を紬がしてしまいました。
聞いたものの、想の様子を見て、「あ、聞いちゃいけないやつか」と思って話を追求しなかった紬。
高校生の頃は、そんな気遣いなんてせずに、遅くまであれこれ尽きない話題を話していた二人。
今は、紬は言葉を選んで、話題を選んで、表情を察して…想にたくさん気を遣っている。
奈々のことでも相変わらず"気にしないで"としか言われないし。昔だったら、声で話せたら、もっと喋ってくれるのかな。そんな風に思っている様子でした。

一方で想も、手話が伝わりきらなかったり、自分が声を出せなかったり、紬と同じ音に気付けなかったり。
変わってしまった自分を思い知る出来事の連続で、切なげな表情。
苦しいフェーズの二人です(涙)


7-6. "少ない"って"いる"ってこと

紬の家で飲む紬と真子。想とのファミレスをデートじゃないと否定する紬に、「好きな人とファミレスでごはんはデートだよ。デートの基準は場所じゃないよ。相手だよ。」と真子。

真子のもとに湊斗から電話が着信。「今隣に紬いるんだけど何か言うことある?」と湊斗に聞く真子。無いと答える湊斗。「紬は?」と聞く真子に、「ちょっといい?」と言う紬。スピーカーにしてスマホを差し出す真子。

-湊斗「どうした?」
-紬「ちょっと聞きたいことあって。」
-湊斗「うん。」
-紬「二人で会ったりしてる?」
-湊斗「あ、想?うん、たまにごはんとか。」
-紬「そっかそっか。」
-湊斗「え、で、想が何?」
-紬「湊斗と話す時ってさ、あの…声、声で話すことあるのかなって。」
-湊斗「ううん。スマホに文字打ってくれることが多いけど。」
-紬「そうだよね。」
-湊斗「あ、名前は呼ばれたけど。青羽のアパートで二人で話した時、俺アプリ使ってたんだけど、離れて、声拾えてないの気付かないまま話し続けちゃって。で、想が、湊斗って。喋った方がいい?って聞かれたんだけど、喋りたくないなら、ねぇ。無理に喋ることないし。嫌なことの理由って、わざわざ言いたくないこともあると思うし。
-紬「そうだよね…。」
-湊斗「奈々さんってわかる?想の友達。声出さなくていい相手だから、心開けるっていうのもあるのかもね。…あ、ごめん、なんか余計なことを…」
-紬「ううん。私が余計なこと…多分余計なこと言っちゃって。」
-湊斗「大丈夫だよ。顔見て話せば、大丈夫だよ。
-紬「ありがとう。」

真子に電話を戻す紬。
-真子「なんかあった?」
-紬「もともと聞こえてた人だと、声で話す人が多いらしくて。普通は声で話すって。手話使わない人が多いって。」
-真子「"普通"ねぇ…」
-紬「多いってだけで、それが普通なんだって思い込んじゃって。それで…佐倉くんなんでなんだろうって気になって聞いちゃって。少ないっているってことだもんね。いるよね。いるのに。やっと目の前にいてくれるようになったのに。
-真子「うん。いるいる。大丈夫。いるよ。」
-紬「こんなんじゃまたいなくなっちゃうよね。
-真子「ほれ!顔見て話せって!って、戸川くんが言うと説得力あるよね。」

夜、「奈々さんと話したいんだけど、連絡先教えてもらってもいい?奈々さんってどんな人?」と想にLINEを送る紬。便箋に何かを書き始める。

こういう時の湊斗、ほんとやさしい。湊斗も紬にとっては欲しい言葉をくれる人ですよね。

想が湊斗の名前を呼んだと聞いて驚いた紬。一瞬自分には声を聞かせてくれないのに、と驚いたようでしたが、そのまま湊斗の話を聞いて、余計なことを聞いてしまったなと後悔する様子でした。
想に会えなかった8年間の間、紬は、次にもし想と再会したら、ただ話したかっただけだったんですよね。
元気でいるのか、どうしていたのか、たくさん、なんてことない話とか、たくさんしたかっただけ。
今、やっと目の前に現れてくれて、二人でいられるようになったのに、目の前にいる佐倉くんと、時々うまく話せない。
気を遣いすぎてしまったり、言葉を間違えてしまったり、傷つけてしまったり、言葉を吞み込んでしまったり。
目の前にいるのに、うまく話せない。こんなんじゃ、また一緒にいられなくなってしまう。想との関係に悩む紬でした。

湊斗の「大丈夫」は、本当に安心するなぁ。湊斗の声っていいですよね。
真子ちゃんもそばにいてくれてありがとう。
そんな紬が、顔を見て話そうと思った相手は、想ではなく、奈々でした。



7-8. 自分で伝えます

授業のない日に手話教室の春尾のもとを訪ねてきた紬。
便箋を渡し、そこに書いた内容の手話を教えてほしいと頼む紬。

-春尾「うん。全然構わないですけど、もしあれだったら通訳しに行きましょうか?」
-紬「いや、自分で伝えます。自分で直接言います。
-春尾「はい。わかりました。」

奈々に会って伝えるためのメッセージを自分で伝えられるように、手話を教えてほしいと頼む紬。
この紬の真っすぐさが、人を動かしていくんですね。強い。紬。頑張れ。

言いたいことは直接言う事。その大切さが、何度も何度も描かれるこの物語。
LINEや便利なツールがたくさんあって、離れていてもいつでも繋がることの出来る時代ですが、その中で、相手の目を見て、自分の言葉で話すこと。時に伝わらずもどかしい思いをすることがあったとしても、その力の強さが描かれていて、素敵です。
結局相手に伝わる言葉は、綺麗な言葉や上手な言葉よりも、気持ちのこもった言葉、その言葉を受け取ってくれる相手の目を見て、表情を見ながら、伝える言葉。伝わったなってわかるまで、一生懸命伝える言葉ですよね。


7-9. 奈々さんのおかげ

カフェで待ち合わせをした奈々のもとにやってきた紬。音声変換アプリを使おうとする奈々を制して、手話で話し始める紬。

-紬「あの、一気に話しますね。すみません。最後にまとめて質問、ご不満、聞きます。」
-奈々「分かった。どうぞ。」
-紬「(声を出さずに手話で) 佐倉くんから奈々さんのこと聞きました。話を聞いてくれる人と言ってました。誰かに話を聞いてほしかったときに出会って、不安とか悩みとか全部聞いてくれたって。あの頃奈々さんに出会わなかったら、生きてこれなかったって言ってました。音がなくなっていくのは悲しかったけど、音がなくなってからも悲しいだけじゃなかったのは、奈々さんがいてくれたからって。」

泣きそうになる奈々。慌てて声を出しながら手話を続ける紬。
-紬「佐倉くんにそう伝えてって言われたんじゃないです。奈々さんがどんな人か聞いたら、そう言ってたんです。今の佐倉くんがいるのは、奈々さんのおかげなんだなって思って。私に感謝されても全然嬉しくないと思うんですけど、でも、伝えたくて。」

静かに頷き、まっすぐ紬を見つめる奈々。
-紬「(声を出さずに手話で) 私はこの8年、ただ元気にしてるかどうか、それだけずっと心配でした。また会いたいとかより、とにかく毎日誰かと笑って過ごして欲しいって、それだけ願ってました。だから、佐倉くんのそばに奈々さんがいてくれて、本当によかったです。佐倉くんが一番そう思ってます。ありがとうございました。

「以上です」と話を終える紬。「それ全部手話確認してきたの?」と奈々。
「はい。手話教室の先生に訳してもらって。あ、質問受け付けます。」と紬。

-奈々「想くんと手話で話してる?」
-紬「はい。でもまだ通じないことも多いです。」
-奈々「想くん声で話さないの?」
-紬「話しません。声、聞いてません。」
-奈々「(頷き) 手話、下手くそだね。」
-紬「ごめんなさい。」
-奈々「便利なものいっぱいあるけど、上達したいならとにかく手話で話すようにしたほうがいい。」
-紬「そうですよね」
-奈々「想くんとたくさん話したほうがいいよ。

そう言って、行くところがあるからと、帰ろうとする奈々。
奈々がしまおうとした「微熱期」というタイトルの本に気付く紬。
-紬「佐倉君、その人の本、よく読んでます。奈々さんのおすすめですか?」
-奈々「読んだことある?」
-紬「ちょっと読んでみたんですけど、私には難しかったです。」
-奈々「私も」
少し微笑み合う二人。

紬ちゃん。今一番話をしたいのは奈々で、奈々に一番伝えたいのは、感謝だったんですね。
「佐倉くんのこと好きなんですか?」でも、「この8年の佐倉君の様子は?」とかでもなく、佐倉くんのそばにいてくれたことへの感謝。

このシーン、穿った見方をすると、紬が奈々にマウントを取りに来たみたいな見え方もあり得ますが、そう感じさせないのはこの紬のキャラクターと、一生懸命な素直さがよく表現された川口春奈ちゃんの演技力ですよね。
8年の間に想が失ったもの、その苦しみに、たくさん想いを馳せてきた紬。
自分がいなかった8年間、何も知らず、会うことも出来なかった時間の中で、佐倉くんがひとりぼっちにならないように、そばに奈々がいてくれたこと。今の佐倉くんがいるのは、奈々のおかげだということ。それに対する心からの感謝の気持ちを、自分の言葉で直接伝えたかったんだと思います。
大切な人の大切な人。その人への感謝の気持ちを持てるまっすぐさ。素敵だなと思いました。

それを一生懸命に伝えてくれる紬を、まっすぐに見つめて言葉を受け取る奈々も、素敵でした。
紬と分かり合えるわけがないと、以前は想に伝えた奈々。
「たくさん話した方がいい」という言葉は、一生懸命に自分たちの言葉である手話を覚えて、まっすぐに伝えようとしてくれる紬を見て、紬と想なら分かり合えるかもしれないと思ってのエールのように聞こえました。
奈々にとっても紬は、大切な人の大切な人。

時間にすれば短いけれど、直接会って、紬の事を知ったからこそ、ほぐれた二人の雰囲気。
やっぱり直接会って話すって、大切ですね。

ちなみに「微熱期」ですが、峯澤典子さんの詩集で、silentの物語ともリンクするところがある作品のようです。こうしたアイテム選びにもたくさんの想いが込められている作品です。

--峯澤典子さんnoteより--
そんな「微熱期」に感じていたものや、そのとき失くしてしまったものをもういちど言葉で探してみたい、とずっと思っていました。
あのとき、見失ってしまったもの、諦めてしまったもの、手放してしまったものたちの、つかのまの輝きに言葉でふれる。
もう、それらを取り戻せないのだとしても、せめて会いに行く。
そのための長い旅に出る。
それは、私がいまも詩を書く理由の一つです。


7-10. おすそわけ

借りたままだった「微熱期」の本を図書館に返却しに訪れた奈々。図書館に来ていた想を偶然見つけて思わず隠れる。
想のもとに幼い男の子がやってきて、「来て」と想の手をとり歩き始める。高いところにある本を取ってほしいと想に頼む男の子。「赤いやつ、あれ取って」と言うが、聞こえず困った想は、男の子を抱えあげてやり、ひとつひとつ本を指さして確認していく。見つけ出した「昆虫のひみつ」という希望の本を取ってやると、喜ぶ男の子。笑顔になる想。
そんな想の様子をずっと眺めていた奈々。少年がいなくなり、想と奈々の目が合う。

図書館にて、二人の会話。「青羽と話せた?何話したの?」と聞く想に、水をかけるフリをして「想くんに近づかないでください!っていう修羅場になるの覚悟してたけど、全然和やかだった。」と話す奈々。安心して笑う想。

-奈々「この8年、どれだけ想くんのことを心配してたかって熱弁された。下手くそな手話で一生懸命話してくれたよ。言いたいことまとめて手話教室の先生に訳してもらったんだって。真面目だよね。手話覚え始めたころの想くん思い出して、ちょっとかわいく思えた。気持ちを伝えようって必死になってくれる姿ってすごく愛おしい。まっすぐにその人の言葉が自分にだけ飛んでくる。想くんもあの子と話してるとそんな気持ちなんだろうなって思った。この前、プレゼント使いまわされた気分って言っちゃった。私が想くんに教えた手話があの子に伝わっていくの。でも今は、おすそ分けしたって気持ち。あげて良かったって気持ち。
-想「奈々に手話教えてもらって、ほんとによかったと思ってる。」
-奈々「想くんのために教えたんじゃない。私と話してほしかっただけ。私の自己満足だよ。だから、こうやって手話で話せて満足。お互い耳が聞こえて声で話すのもちょっと夢だったけどね。」
-想「(何かを思い出したように笑って) たまに夢に見ることがあって、奈々も俺も耳が聞こえて、電話したりお互い両手に荷物抱えて声で話したり、多分、奈々の顔とか性格でこんな声かなってイメージできるんだと思う。夢で話す時はその奈々の声が聞こえてくる。起きるともうどんな声かよく覚えてないんだけど。」
-奈々「(笑って)よかった。私も似たような夢見るけど、音がないから。想くんの夢の方でちゃんと声出てるならよかった。私にも想くんの声聞こえてるならよかった。
-想「奈々 声でもすごいよくしゃべるよ。」
-奈々「そんな気がする。」

笑い合う二人。さきほどの男の子がやってきて「しーっ」と二人に注意する。怒られて笑う想と奈々。

男の子を抱えてあげて笑顔になる想くん。あぁ、こういうとこ、やっぱ好きだなぁ。…って、勝手に奈々の気持ちになってしみじみしてしまいました(笑)
伝わらなくても、わからなくても、伝える方法やわかる方法は、いくらでもあるんだな。
そしてこのシーンで男の子に渡してあげた「昆虫のひみつ」っていう本の表紙のイラストがテントウ虫なんですよね。
あの時湊斗の手から飛んでったテントウ虫。幸せの象徴。どこかに行ってしまいそうだったけど、ちゃんと想のもとに戻ってきたね。
テントウ虫で泣くなんて人生で初めてなんですけど。

そして奈々の夢にまで見た夢が、想の夢の中で叶うというこのロマンチックすぎる展開、神ですか(涙)
生まれつき音のない世界を生きてきた奈々は、どんなに想像しても、想の声も、自分の声も、イメージ出来ないんですよね。
それが、想の夢の中では叶った。よかった。少し切ないけど、よかった。
分かり合えないって一時は線を引こうとした想と、同じように夢を見れて、願いが叶った。奈々ちゃん、少し救われたね。
紬から、想が自分のことをどう思っているかを知って、恋愛感情の好きはなくとも、大切な人の大切な人に自分がなれていたことをちゃんと知った奈々ちゃん。
結局想くんへの恋は実らなかったけど、想と出会ったことや、8年間の想との世界は、少し報われたかな。
お裾分けしたって言える奈々ちゃん、自己満足だよと言える奈々ちゃん、素敵。マジで幸せになって。
夢の話でさりげなく胸キュンポイント大獲得していく佐倉くんはさすがですよ本当に。奈々の想いにびっくりするくらい応えなかったんだから絶対幸せになってよ佐倉くん(圧)
でも本当に、想と出会ったのが奈々ちゃんでよかった。
人って出会うべくして出会うんだな。



7-11. 作文

タワレコでバイト中の紬。3年前に発売されたスピッツのアルバムを手に取る。想がこのアルバムを持っているのかどうか、思いを馳せる。

想との待ち合わせ場所に現れた紬。相変わらず想はまた難しい本を読んで待っていた。
-紬「本、好きだよね。高校生の時から得意だったし、国語。だってあれ、作文。」
-想「作文?」
-紬「高2の時、佐倉くん書いたやつ。」
-想「あれ青羽にあげたよね?」
-紬「まだあるよ。うちにある。読み来る?」

戸惑う想。「違う違う、うちに来るって意味じゃなくて、いやそう意味なんだけどそうじゃなくて…」と慌てる紬に、「行こうかな」と言う想。

手話教室の前で看板を見ている奈々。「ご興味ありますか?」と声をかけた春尾は、奈々に気付き驚く。「久しぶり」と奈々。

春尾さんと奈々ちゃんも動き出しましたね!

高2の時の作文、円盤の購入特典で作文の全文が読めるのですが、この作文に、なんだかこの物語の答えのすべてが詰まっているんですよ。
ドラマの中では書き出しの何行かしか読み上げられなかったのに、全文を読むと、そういうことか、と思えるところが本当に多くて。
想にとって、音を失うということ、声を出さないと言うこと、声で話せないということがどれだけのことだったか。手話という新しい言葉がどんな意味をもつのか。その作文を繰り返し何度も読んで想の考えを理解した紬が、どんな思いで音を失った想と再会し、向き合ってきたか。そして、どんな思い出あの最終回の黒板の前での会話したのか。全部わかるんです。
わかるのに、本編の中では冒頭しか読み上げないなんて…すごい。


7-12. 伝わったね

紬の家にやってきた想。光は不在で、二人きり。ソファに座り話している。
-想「最近覚えた手話教えて」
-紬「最近?うーん、あ、"片想い"。」
-想「覚えなくていいよ」
-紬「だよね」

なんとなく緊張が漂う空気。作文を取りに行こうと紬が席を立つと、想が紬の腕を掴んで止める。想に促されてもう一度座る紬。
紬の両手を取って向き合う想に、「ん?どうした?」と紬が声をかけると、想は何かを声で伝えようと、声を出そうとする。
少しして想が声を出そうとした瞬間、「いい」とそれを制する紬。想に両手を取られたままなので、手話はせず、まっすぐに想を見つめて静かに話す。

-紬「いいよ。大丈夫。喋んなくていいよ。ごめん、この前無神経なこと言ったから。違うから。声好きだったけど、それは本当だけど、でも、声以外も好きだから。だから大丈夫。無理に喋んなくていいよ。喋んなくても、好きだから。大丈夫。…好きとか言っちゃったけど、手話してないし、セーフ。それ以外訳すね。ちょっと手を放していただいて。」

そう言って手を放そうとする紬をそのまま引き寄せて抱きしめる想。
-紬「…ん?伝わった…?伝わってる?」
紬が想の背中を静かにトントンと手でたたくと、抱きしめる腕の力を強めて目を閉じる想。
-紬「うん。伝わったね。

ありがとうございます(真顔)
こんなにもハグだけで心が震えるようなラブストーリーがありましたか…?
「片想い」「覚えなくていいよ」もサラっと胸キュン。ありがとうございます。

勇気を振り絞って声を出そうとする想くん、表情や喉の動き、呼吸から緊張感がヒシヒシと伝わってきて、頑張れ!って思う一方で、声を出すって想にとっては本当に勇気の要ることなんだなというのが伝わってきました。何を言おうとしたのかな、想くん。
紬が喋るのをじっと見つめて聞きながら、少しずつ目が潤んでいく想くん。
ここの目黒くんのお芝居、本当に繊細で、愛おしかったです。

この、紬が喋るシーン、音を消して想の気持ちになって見てみると、まっすぐに自分を見てひとつひとつ言葉を紡いでくれる紬の声が、当然だけど聞こえてこなくて。
なんとなく、何を言っているかは分かるんだけど、紬の声が聞こえてこない。想くん、紬の声、聞きたかっただろうな。
自分が声を出しても、相手の声は聞こえてこない。実感しちゃうよね。想くんだって苦しいよね。
目の前で一生懸命に紬が自分のために話してくれるのに、そしてきっとそれは今自分が一番聞きたい言葉なのに、聞こえない。
紬が自分の気持ちを理解してまっすぐに向き合ってくれた嬉しさだけじゃなく、そんな寂しさ、苦しさもあったような気がします。
それでも、まっすぐに喋ってくれる紬が、音無しで見てもめちゃめちゃ愛おしくて。
もどかしいんだけど、寂しいんだけど、できれば声で話したかったし声を聞きたかったんだけど、愛おしくて、もう手放したくなくて、思わず抱きしめた。そんな感じ。
奈々が言っていた、「気持ちを伝えようって必死になってくれる姿ってすごく愛おしい。まっすぐにその人の言葉が自分にだけ飛んでくる。想くんもあの子と話してるとそんな気持ちなんだろうなって思った。」が、まさにこのシーンだと感じました。

そして、何度か(いや何度も永遠に)リピートして見て思ったのですが、紬が想の背中をトントンする直前に、想くんも紬の背中でじゃっかん手をトントンしてるように見えるんですよね。紬はそれに応えたのかな?
目を閉じる想くん、睫毛が長くて美しい。

想くんが紬が言った言葉のすべてを理解したかどうかはわからなかったけれど、心が伝わったんだね。
一生懸命紬が手話を覚えたり、紬が分かるようにゆっくり手話をしたり、文字を打ったり、音声変換をしたり、色々な手段を使って分かり合おうとして少しすれ違いそうだった二人が、伝わり合えたのは、直接顔を合わせて話す言葉に込めた気持ちだった。愛してるよりも愛が届くことってあるんだね。髭ダンのSubtitleエンドレスリピートですわ。

このドラマで描かれる愛の表現って、手を繋いだり、背中をさすったり、背中をトントンとたたいたり、抱きしめたり、人の温もり、体温が伝わってくるとてもあたたかくて優しい表現ですよね。
すごくピュアで、そっと静かに心に寄り添ってくれるような。

要所で流れてくるサントラも、そうしたぬくもりや優しさ、時に切なさが感じられる名曲ばかりで。
silentドハマりした私は、サントラも漏れなく購入しました。
シナリオブックも、Blue-rayも買って、サントラも買った。
最近寒くなってきたので、サントラ聞きながらsilentを思い出して歩いて涙ぐんだりしてます(笑)
silentにどっぷり。もう自分が出演していないのが不思議なくらいです。(殴)


はぁ。久々にハッピーで終われた第7話。幸せです。
ここからまた怒涛の展開!あー終わってしまう!また、8話で。

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