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PERFECT DAYS

テレビで役所広司が出ていた。
公開中の映画「PERFECT DAYS」の話や
昨年のドラマ「VIVANT」の話をしていた(うろ覚え)

「VIVANT」もかなりハマって観ていて
ノゴーン・ベキ役が凄くよかった。

たまたま会員カードのポイントが貯まっていたので
映画館で「PERFECT  DAYS」を鑑賞することにした。
前もっての情報は
役所広司が公衆トイレの清掃員の役であること
セリフがほとんどない事 くらいであった。

平日ということもあり、映画館は空いていて
客層は50代以上が多いような感じであった。

最近は映画館でのパニック発作の心配もなく
(とはいえ、平日で時間帯や席は慎重に決める)
映画も割と楽しめるようになった

ポップコーンを買うか悩んだが
食べてばっかりなので珍しく、ミネラルウォーターのみで鑑賞
席は最後方の右端の階段側
10分前には席に座り、劇場の宣伝を見ていた

物語は始まってから
役所広司演じる主人公「平山」の毎日のルーティンを追っている
セリフもなく淡々と丁寧にその姿を捉えるドキュメンタリーのような展開
朝、近所の清掃をする竹箒の音で目を覚ます平山
スマホやテレビなどはなく、生活音で朝を感じ、1日をスタートさせる。

2階建ての古いアパートには、お風呂は無く必要最小限のものと
平山を支える本と植物が整理されて気持ちよく置かれている
流行りのミニマリストとかではなく
質素で身の丈に合った、自分だけの楽しみがある空間という感じ

早朝、身支度して制服に着替え
販売機で缶コーヒー(BOSSだった!)を毎日買い
仕事先の公衆トイレへ行く車内で飲む
車内ではその日の気分に応じて平山の好きな古い洋楽のカセットを回す

颯爽と空いた道路を駆け抜ける平山の車が
慌ただしい「東京」が始まる前の静かな夜明けの時間を示している

仕事場は都内のあらゆる公衆トイレ
黙々と手順よく、丁寧にトイレ掃除を仕上げる

鏡で隅々まで汚れがないかチェックする姿
必要に応じて道具は手作りしているとか(同僚の柄本時生のセリフより)
平山の几帳面で真面目な性格が伺える。

お昼には毎日決まった木の下で
サンドウィッチと牛乳
食べ終わるとフィルムカメラで木の下から空をに向けて手を延ばし
「影」を毎日撮る。
毎日、レンズを覗くことをせずに手の感覚で「影」を捉える
「影」これがこの作品の要となるのだが
何を象徴し、そこにどんな意味が含まれているのかまだ解釈できていない。(こういう抽象的な解釈が苦手だったりする)

家に帰ると平山は自転車に乗り
銭湯へ行き、食事を駅地下の慣れ親しんだ居酒屋で済ませ自転車で帰路に着く
寝る前にはわずかな明かりと共に1冊の本を手にし、1日を終える

映画は、この平山のルーティンを繰り返し綴っている

平凡で刺激の無いような平山の生活であるが
晩御飯を食べる居酒屋の店員
休日に行く古本屋とカメラ屋の店主
スナックのママが平山を温かく迎える

時に、同僚の若い青年のワガママに巻き込まれたり
思わぬ形でちょっと好意を寄せられたり
家出した姪っ子の突然の訪問
久しぶりに会う妹
淡い気持ちを寄せ合うスナックのママの元旦那との遭遇

突然のキスにニヤリと喜びが溢れたり
姪っ子の成長にドキッと動揺したり
妹との対話に静かに涙を拭ったり
車がガス欠で落胆したり
バックれた同僚の分まで働かせられて怒鳴ったり
スナックのママの歌声に微笑んだり

セリフは少ないが表情の変化で平山の人となりが分かる
単に几帳面なだけで無く
人間味があって魅力的なのである
こんな人がいたら惚れちゃうだろうなと思ってしまう

淡々とした生活の繰り返しにスパイスになるような人との繋がり
決して繋がっている人は多くない平山
むしろ繋がりを絶ってしまった方が多いようにも見える
でも平山は自分に「充分」な量や形や繋がりを知っている

古いカセットのコレクションも好きな本の数、撮り溜めた影の写真のストックは
かなりの数がある。植物も増やしている。
しかし、服は同じで洗濯も休みの日にしか行かない
それは、誰かの基準でなく平山の自分にとっての充分なのだろう。

「影は重なると濃くなる」
スナックのママの元旦那とのやりとりの中で出てきた平山の気持ち

影は光があるからできるもの
光と反対側にあるような平山の生活
でも消えることも薄くなることも無く
平山が重ねていく日々もまた影のようにどんどん濃くなっていくのだろう

最後のシーンは
人生のいろいろな味を受容し、今日も淡々を日々を重ねる涙に見えた。
圧巻の演技力だったな。

あと、劇中に登場する東京の公衆トイレはどれも意匠が凝っていて見ていて飽きなかった。一番印象に残っているのがカギを占めると内側が見えなくなるトイレ。

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