「Vtuberバブル」を考える

はじめまして。この度この記事を投稿するべくnoteに登録したナトリウムと申します。
今回は評論記事です。
Twitterのアニメ垢をフォロー頂いている方はご存知かと思いますが、私ナトリウムはVtuberのファンをやっております。Vtuberそのものについて知らない方は各自適当に調べてもらうとして、今回はこのVtuber界隈が抱える問題について考えてみたいと思います。だいぶ厳しいこと言うと思うのでVuberファンの方は一応閲覧注意でお願いします。

2017年末にブームの始まったVtuber。2018年上半期に今の実力勢が次々とデビューしコンテンツとして急成長しましたが、同年後期になると実力勢の登場も少なくなり落ち着きを見せ始めます。それに代わるように今度は商業的展開が始まり、漫画化やリアルイベント、そして2019年に入りテレビアニメ化までされるようになりました。
特に昨今、商業的展開の目覚ましいVtuber界隈ですが、そもそもVtuberはビジネスとは切っても切れない関係にあります。というのもVtuberはYoutuberと比べて企業が運営する配信者が多く、利潤追求が第一義になる民間企業にとってVtuberはビジネスそのものです。ただ、最近の商業展開ブームについてはそうした運営企業ばかりが主導しているとは言えません。グリーの大規模投資、そしてニコニコ系やイベント、出版・グッズ展開とKADOKAWAが相当Vtuber界隈に資本投入をしているのが現在の商業展開ブームの本質でしょう。そしてまた、この新しい未開のコンテンツを見て、ITベンチャー等が利権獲得を狙ってこぞって参入しようとしてもいます。こうした経緯もあり、Vtuber界隈の商業的ブーム、市場拡大は目覚ましいものがあります。

ですが、このブームは本当に真っ当なものでしょうか?今回問題にするのがこの点です。今のVtuber界隈の商業的ブームは果たして健全なものなのでしょうか?
人工知能やVR技術が台頭しゆく中「バーチャル」を名乗る話題性、アニメキャラクターのような見た目のアバターが人間らしく動く意外性、そうしたものを糧にVtuber界隈は社会的に注目されました。しかしそれらはVtuber界隈の属性的、概念的な特徴に過ぎず、コンテンツの本質には何ら触れられていないのが事実です。では、Vtuber界隈の本質的な内容、具体的にどのようなコンテンツが供給されているかというと、多くが「歌ってみた」や「ゲーム実況」など、正直言って既存の配信者コンテンツの焼き増しに過ぎません。むろんそれが悪いとは言いませんが、今更商業的にブームにするような内容かというと、筆者は首をかしげざるを得ないのです。さらに言えば、Vtuber界隈のアイデンティティであるアバター性についても、多くの“キャラクター”は世界観管理が極めて雑でメタ発言も多く、アバターの挙動についてもFaceRigを用いた簡易で不自然、非人間的な表情動作や、場合によっては無表情のままという配信者も、(実力勢にすら)かなりいます。Vtuberファンは慣れきっているのかもしれませんが、一般的な見方で見れば正直「レベルが低い」(非Vtuberファンの筆者の友人談)のです。
つまり、今のVtuber界隈は商業コンテンツとしてはあまりにもクオリティ不足なのです。では何故そんなコンテンツが商業的にブームになってしまっているかというと、ひとえにその話題性や意外性によって過度に投資されているという状況だと言えましょう。
これで読者の皆さんも記事タイトルの意味に気付かれたかと思いますが、今のVtuber界隈はまさに「バブル」状態にあると言えます。本来実体的に持つ質的価値より大幅に高い評価が不当に与えられ、中身が伴わないまま経済的に過熱しつつあるのが、今のVtuber界隈の商業的な実情だと考えられます。

しかし当然、「バブル」はいつか弾けるものです。Vtuber界隈で言えば、今「価値」として評価されている話題性や意外性は、それらが効果を発揮しているのはごく一時的で、まもなく存在が当たり前になり人々が慣れてくればそんなものはすぐに無価値になります。そうなれば当然、価値を失った(商業的旨味の無くなった)Vtuber界隈への投資は激減するでしょう。それで「商業的ブームが終わる」だけならまだしも、バブル経済状態を前提とした経営を行っていた界隈内企業(配信者の運営企業等)は大ダメージを受ける可能性があります。ことVtuber事業については、純粋な投げ銭での収入よりもグッズ販売等の商業展開に依存していると言われており、これが落ち込むと経営危機にすら陥りかねません。まさしく「バブル崩壊」になるおそれがあるのです。
正直なところ現状が既に「バブル」になってしまっている以上、この「バブル崩壊」は避けられないものと筆者は考えています。でもそれは当然望ましいものではありませんし、少しでも被害を軽減できるに越したことはありません。
「バブル崩壊」のダメージを抑える方法はなんでしょうか。前述したとおり、今のVtuber界隈はクオリティ:質的レベルに見合わない、大幅に過剰な投資・市場拡大:量的レベルになってしまったことで「バブル」状態にあり、このギャップ、落差が「バブル崩壊」という形であらわになる、と考えられます。つまり、バブルが崩壊するより前に、このギャップ、落差をできるだけ小さくする、すなわちクオリティ:質的レベルを向上させ、高い位置にある量的レベルまで引き上げることこそが、「バブル崩壊」に向けた対策として有用なわけです。中身が伴っていないのなら伴わせればいい、ということです。
そしてこの質的レベルの向上は、その気になれば難しいことではないはずです。何のことはありません、界隈内企業が市場拡大という量的拡大への投資を減らし、その分をコンテンツ制作そのもの:質的拡充へ回せばよいのです。もちろんこうすれば市場拡大は減速しますが、そもそも質的レベルより市場でのレベルが大きく上回っているのが問題なのでむしろ好都合ですらあります。そうして量と質のギャップを縮めていくことができれば、来たる「バブル崩壊」を経ても、質的価値を以て、それを乗り越えることができるのです。
ただ、こんなことはただのオタクである筆者なんかより実際の界隈内企業の人間の方が分かっていてしかるべきです。筆者より頭の良い人ばかりであるはずのVtuber界隈で、では何故このような施策が行われないのでしょうか。それは結局、企業の経営的判断なのではないかと推察します。
民間企業の第一目的は当然ながら利潤追求です。では、どのように利潤を追求するかというと、「市場に投資」をして量的供給を増しつつ需要を誘起するのです。そう、Vtuber界隈の企業がいくら「バブル」になっても市場拡大を推し進めるのは、単純に民間企業としてそうするのが基本だから、と考えられます。逆に、質的拡充に投資をしても、それが利潤にそれほど繋がるかというと、おそらくば市場に投資するより効果は薄いでしょう。したがって、彼ら界隈内企業は合理的な経営判断を下しているだけなのです。
ですが、「バブル崩壊」が迫る中それでいいはずがありません。ここからは一オタクが生意気にもVtuber界隈の企業に対して忠告しますが、市場拡大という量的拡大にひたすら投資するのは確かにある意味真っ当な経営判断だとは思いますが、それは短期的な視点でしか見られていません。この記事で主張している通り、Vtuber界隈には近い将来経済的カタストロフが訪れるでしょう。それを見越した長期的な判断を考えれば、多少なりとも今のうちに質的拡充に投資をシフトすべきではないでしょうか。細かい状況は異なるとはいえ、我々は1990年代の日本の金融業界が犯した失敗を、「失われた20年」を繰り返すわけにはいかないのです。私は一人のVtuberファンとして、この界隈が健やかに長く続いてほしいからこそ、Vtuber界隈に属する各企業の皆さまにおかれましては、何卒ご検討のほどよろしくお願いします。そして私たちファンにできることは、今Vtuber界隈が「バブル」状態にあることを認識し、その過熱に踊らされることの無いよう地に足を付けた応援活動を心掛けることでしょう。皆さまへのお願いを挨拶に代えて、この記事を終わります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?