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北海道・天塩川の1日を語る

このシリーズは、暮らしをつなぎ続けるためのヒントについて、「ネイティブ」を知る様々なゲストをお呼びしてお話を伺っています。北海道の天塩川でアウトドアガイドをされる辻亮多さんに、川とともに生きる暮らしについてお話を伺います。

目まぐるしく移ろう季節の中で

村上 今回から北海道の美深町というところを流れる天塩川でアウトドアガイドをされている辻亮太さんをお招きします。早速、今日見てきた辻さんの風景を教えてもらえますか。

辻 はいこんにちは北海道美深町っていうところでガイドをしてます辻亮太といいます。いきなり振られちゃった感じなんですけども、まさに今、川から帰ってきてお話してるような感じなんですけど 。今10月なんですけど、今日は、もう朝、外に出た瞬間に気温が0°c だったんです。ボートも何もかも凍ってすごい寒い朝だったんですが、ボートをこぎ出した瞬間、サケの大群に出くわして、何千、何万、もう数えきれないくらい中を川下りをして、いい一日だったなと思って帰ってきたところです。

村上 いやーみなさん、今、風景浮かびました?辻さんはいまお話しいただいたような、川の流域で暮らしてガイドをされてるわけなんですけども、僕は横浜に住んでますけど、川という存在があまり身近じゃないんですね。もちろん水辺とかいろんなものを見たりはするんですけど、川の水に触れたりするって滅多にないですし、最近だと川は災害とかで怖い物っていう印象もあると思うんです。川から遠ざかっていると僕も実感していて、今日は辻さんに川ってなんだろう、水ってなんだろう、そのまわりはどんな暮らしや、どんな風景があるんだろうという話をたっぷり伺いたいなと思います。

今井 美深町とか天塩川という名前を紹介いただきましたが、まずは北海道のどの辺りで、どういう場所なのか、教えていただけますか。

辻 本州の人で美深町とか天塩川っていう名前を耳にしたことがある人は少ないと思うんですけど、北海道の北の端の方という感じですね。旭川という北海道の真ん中の町から北に100 km ぐらい、稚内っていう北海道の北の端から南に100 km。そこに日本で4番目に長い大きな大きな川が流れている。そんな川のそばに暮らしてます。

村上 「四季折々」という言葉があるんですけど、川を見ている辻さんからすると、四つよりもっとたくさんあるんじゃないかなと思うんですけど。

辻 あまりカレンダーの季節っていうのは気にせず過ごしてたりするかな。今日だったらサケがいっぱい来てるから秋が深まってきたな、とか。川を下りながらオス鹿がすごく鳴いているんですよ、それは求愛の発情の声なんだけど、それが聞こえてきたらもう秋も終わるなぁとか。そんな風に生き物の動きだとか、川の水温だったりとか、そういうのを見ながら次々季節が変わっていくドラマチックな感じの日々を楽しんでいる感じですね。
これからどんどん寒くなりマイナス30°を下回るんですよ。かと思ったら2か月前の8月は30°cを超えてるんですよ。プラスマイナスで80°ぐらいの気温差の中を、1年のサイクルで、まるでジェットコースターみたいにドラマティックに上下している土地かなと思います。

村上 プラスマイナス80度の世界の中で、人間の体は毛が生え変わるわけでもないので、道具を少し変えてくんだと思うんですよね。季節の刻々と変化するなかで道具という観点からすると、辻さんは何種類ぐらい、どういった変化を持って川に接してるんですか。

辻 大きく分けるとカヌーだとか、ボートという川下りの道具と、あともう2ヶ月もすると雪が積もるので、雪の上を移動するスキーだとかスノーシュー。同じ水の上を移動する道具でも季節とかやりたいことで使い分けていくのが僕は好きかなと思います。

朝日ではじまる一日

今井 まるで日本じゃない話を聞いているような、北海道の自然がすごく変化に富んでいるんですね。辻さん、普段はどんな一日を過ごしてらっしゃるんでしょうか。

辻 僕の生業としてはガイドを仕事にしていて、僕自身もたまに自分の楽しみで出かけることもあるんですけども、基本的には誰かを案内する仕事で川に出かけるんですよね。今日なんかは天塩川でニジマスを釣りたい、イトウというネイティブな魚がいるんですけども、イトウを釣りたいという人をガイドしてきたんだけど、日が昇るときには川にいましたね。
毎日毎日この朝日を浴びて暮らすっていうのが、一週間や一年のサイクルじゃなくて、毎日毎日リセットされながら、朝から魚の動き、水温の動きを見ながら、お昼ぐらいになると何だかあったかくなってきて魚もウキウキしだして、綺麗な大きなお魚が釣れて、もう今時期だと4時には暗くなるんですよ、それで川をあがって、そのままゲストと近くのパブに行って、ビールを飲んで、ちょっといい気分で帰ってきて、今お話ししているって感じです。

村上 朝の動き出しが、光も地平線から出る前からのざわめきとか、空の色の変化とか、境目がどの辺にあるのかなっていうかね、その始まりの境目って、なんかそれは辻さんの目から見てどの辺からざわざわ、人間もそうだし生き物もそうだし、どんな感じなんですか。

辻 空が白み始めてきたなーというところで一日が始まった感じがしますね。今日なんかはね、日が昇るの前のなんだか明るくなってきたなってきたころ、霧で真っ白。何も見えないような状態でした。それで太陽が差し始めたら霧が晴れて、満天の青空の朝でしたね。とても綺麗だった。

村上 山とかでいうと太陽が出てきた時って、風の流れがちょっと変わるなっていう印象があるんですけど、川に関してはどうですか?何かしら変化があるんですか。

辻 日が出ると、やっぱりであったかくなって生き物が元気に動き出しますね。サケが急にバシャバシャ産卵の動きが活発になったり、オジロワシが飛び始めたり。

村上 逆に1日の終わりは暗くなったら物理的に人は行動しづらくなってくると思うんですけど、生き物によっては目覚めの時間だったりするものもいると思うので、夜っていうのはどういうふうに終わって、あるいは他の生き物にとってどういうふうに始まって、どんな風景なんでしょう。

辻 釣りをメインにあの川に出かけたから夜には帰ってきたんだけど、カヌーで川を旅する時とかは、そのまま河原にキャンプしちゃうんですね。そうすると都会じゃ味わえないような、泳ぐような真っ暗さ。その中で小さい小さい火を焚いて一晩過ごすんですけど、昼間は気にしなかった川の音が目で見えなくなった瞬間すごく大きくなってざわざわざ流れてるように聞こえて。そうすると不思議とほかの動物の足音とか、鳥の声とか、いっぱい聞こえるようになってドキドキしちゃいますね。

村上 それはどんな音?

辻 今だったら魚のはねる音。あとは鹿が川を渡っていく音。とにかくその目に頼らなくなった瞬間、すごく耳が敏感になるっていうかんじですかね。

(文・ネイティブ編集長今井尚、写真提供・辻亮多)

次回のおしらせ

北海道美深町で、アウトドアガイドをされている辻亮多さんに、北海道の人と自然のかかわりや、天塩川を中心とした自然の中での暮らしについて聞きます。お楽しみに!

The best is yet to be!

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