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訪問者でも住民でもない、間の人たちの声

19人の、支える人たち

2021年3月から毎週続けてきたラジオネイティブがいよいよ100回をむかえようとしています。これまでに出ていただいたゲストは19人。特徴は、さまざまな地域やフィールドで活躍されていながら、その地域・フィールドの生活者ではなく、かつ、一時的にやってきた訪問者でもない。その間に立って、誰かと誰かをつなぐような、舞台裏で活躍する人たちだったと思います。多くのヒントから何を受け取ることができたのか、今の思いを2回にわたり、フィールドアシスタントの村上祐資と、このシリーズの編集長今井尚で話します。

今井 ラジオネイティブは2021年3月からスタートし、今回で99回目、まもなく100回をむかえます。
これまでに出ていただいた方19人を、下にご紹介します。

吉川舞さん カンボジアで旅行会社ナプラワークスを運営
貝塚乃梨子さん カンボジアと日本でデザインの仕事
山村侑平さん 有人宇宙システム株式会社 宇宙の「管制官」、飛行士の健康管理
河村信さん NHKの報道の最前線で活躍
有川美紀子さん 小笠原諸島をフィールドに取材するライター
木名瀬裕さん 愛媛県今治市 しまなみ野外学校で野外教育活動
桑原孝太さん 震災をきっかけに熊本県益城町の町職員に まちづくりの仕事
大越晴子さん 象の鼻テラスでアートによるまちづくり
辻亮多さん 北海道の天塩川でアウトドアガイド
原薫さん 信州・松本の林業会社、柳沢林業の代表取締役
金子健一さん 信州・松本で6席の小さな食堂「アルプスごはん」店主
安部直也さん 元祖ふりかけで知られる株式会社フタバ(熊本)の代表取締役
佐藤康博さん 段ボールメーカー・日本トーカンパッケージの包装技術開発センター長
一丸欣司さん 日本トーカンパッケージで段ボールパッケージの設計開発
門谷”JUMBO”優さん ネパールでアウトドアバッグ作り/ドキュメンタリーフォトグラファーとして
サティスさん ネパールのガイド会社、ニレカアドベンチャーズ代表
木村悟之さん 映像作家。人口が1人となった石川県加賀市山中温泉大土町での活動
国松希根太さん 北海道白老町で彫刻家として活動
木野哲也さん 北海道白老町で飛生アートコミュニティーを運営

村上 ゲストの方々にお話を伺うときって基本的に、前のゲストの方のお話を聞いてから、終わった瞬間に次はこういう人に話を聞きたいなって思ってお声掛けをしてきたので、僕らとしてもこの番組「暮らしをつなぎ続ける」っていうキーワードを出してますけど、お話を聞いていく中でも少しずつリレーになるようなイメージは持っていたんですよね。
例えばカンボジアの話を最初に吉川さんに聞いたときも、1人の視点からのカンボジアだけではなくて、もう少し田舎の部分と都市部の部分っていうとこでカンボジアのリレーが続くとか、島から海へ行ったり、ジャーナリストとか地域のもの作りとか、少しずつですけど、つながりを持ちながら伺ってきたかなというのを、19人挙げていただいて、その流れが途切れてないなというイメージは勝手に僕の中ではあります。


今井 そうですね。自分たち自身がどうやって今の暮らしをつなぎ続けていったらいいんだろうか探りたくてこの番組を始めたと思ってるんですけども、私はこの19人の方々にお話を伺って、前に出る人ではなく、舞台袖に立ってというんですかね、支える側の人だったのが大きな特徴だったし、僕らもそういう人にお話を聞きたいと思ってお声掛けをしてきたかなと思うんですね。本当に前に立つ人が誰かいて、それを支える人っていうのが大きな特徴でしたね。

村上 そうですね。わかりやすいところで言う、例えば宇宙というテーマでゲストをお呼びする場合、宇宙に行った人をお呼びすると思うんですけど、あえてというか「管制官」という地上で支える側の方であったりとか、フィールドの話を聞くにしても、そのフィールドに冒険者として行っているんじゃなくて、ガイドさんというふうに行っている人だったりとか、最後の方ですけど例えば木村さん。加賀の限界集落の話を聞いたときも、その限界集落に実際住んでいる人ではなくて、それをちょっと別の角度から見てる人だったりとか、少しそういった視点でずっと見てきてたかなというふうには思いますね。
誰でもその場所に出会う時は初めてのことだと思うんですけど、そこに元々いた人はずっとそこでいるわけです。外から入ってきながら、ふっと去っていくんではなくて、そこをスタートに長く暮らしていく。だけど、その地域の人そのものにはどれだけいてもなれないわけですよね。でもそういう中で、そこの人でもない、でも単なる訪問者でもないっていうその間の形をずっと探ってきた方々探ってきたというか、そういうふうになってった方々って、結果論かもしれないしなるべくしてなったのかもしれないですけど、そういう話が聞けたのかなと思ってます。

変えないものを背骨にして、挑戦し続ける

今井 この回では、ネイティブのあり方について少しお話をしていきたいなと思っています。私がこの19人のゲストを振り返って感じるのは、キーワードとして「つなぐ」っていうことなのかなというふうに思っています。
誰かと誰かの間に前に立つのではなく、その人がいたからこそ見えた景色とか、見れた世界に案内する。まさにガイドというキーワードが一番しっくりくるのかなっていうのが、一つ見えてきたことかなと思っています。

村上 そうですよね。そういった意味ではその今井さんのお仕事も普段は記者や編集の仕事もされるかなというふうに思いますけど、そういった意味ではその間に立ってるこれまでの19人の皆さんと同じようなポジションにいらっしゃると思うんですよね。1年半、2年近くこの番組をやっている中で、話を聞いてふと自分の仕事に戻ったときに、あの人のこれがなんとなくあるシーンで思い浮かんで、ちょっと真似してみたいなってことあったりします?

今井 「安定した」というか「変わらない何か」みたいなものの存在が大きいのかなと思いました。例えば昔からそこにあるものであったりとか、いつまでも変わらないものをずっと追い続けていくであるとか。私の仕事に振り返って考えてみると、メディアというのは本当に新しいものをどんどん追い求めていって、どんどん変わっていくことでもあるんですけれども、そこに共通する何か変わらないものを、一つの記事ではなく一連のシリーズの中から見つけていくっていう作業もあるのかなと少し感じました。


村上 今井さんがその変わらないものを感じる一方で、ご自身はすごく変わっているわけです。このゲストの方々もみんなそうだったと思うんですよね。特につい先日出ていただいたゲストの方と僕そのあとで会話すると、もうあのときから次のフェーズのいろんな行動を起こしていました。そういった意味ではやっぱり常に変わり続けてるんだなっていうところですね。もう本当に全然違うプロジェクト。ただ、同じ場所にいて、同じ風景を見て、同じ誰かの横にいてっていう、そういった意味では変わらない部分っていう背骨にあたるようなものはやっぱりつながってるんだなともすごく感じるんですよね。
そういった意味ではやっぱり自分が軽やかに生きていく。その場所に、元々はやっぱり訪問者だったからかもしれないんですけど、訪問者だった頃から当然その訪問する前の自分を変えていくことの繰り返しだったと思うんですよね。
帰っていきながら、ある程度自分の中のこの人この場所、このやり方みたいなものの流儀みたいなものが出てきたときに、今度はそこを取っ掛かりにして、また次のプロジェクト、次の場所へ行く、みたいなところがあるのかなって感じました。

今井 自分の仕事にっていうことではないんですけれども、やはりこのシリーズで扱ってきたことはやはり「暮らし」というキーワードがあったと思うんですけれども、暮らしていくためには軽やかに変わっていく部分と、一方で変えない部分みたいな、両軸があると思っていて、変えない部分があるからこそ安心して挑戦ができるみたいなことがあるのかなって感じました。

村上 これは僕自身に置き換えてなんですけど、
いろんなゲストの話を聞く、あるいはどの人に話を聞きたいと思うのにも影響してるんだと思うんですけど、他者っていうものがすごく見えてきたんですよ。初めの頃は例えばカンボジアの皆さんに話を聞いて、カンボジアの場所や風景を一緒に同じものを見たいなというふうに思っていたのが結構前半にありました。小笠原の島の話も、そういう視点で前半は聞いてきたんですけど、だんだんとその人が次の世代や、全く関係のない町の人とかに話をしていくときの他者に、どう伝えているか、どう伝わっていくかみたいな試行錯誤の方に、すごく目がいく感じがしています。
そういった意味では僕らは40代なわけですけど、だんだん次の世代に伝えるっていうところに、僕なんかすごく苦労してるんですよね。つい言い過ぎたりとかっていうところもあったり。
それはミッション中に隊長をやってたりするときも苦労するんですけど、そういったときに「つなぎ続けていく」、過去に僕が失敗したことや、あるいは僕の前にいた人が失敗したことみたいなものを、ちゃんといい形で、そこから得られたものを次の世代に伝えていくのをどうしたらいいんだろうなって、収録が終わった1週間ぐらい、結構そういうことを考えてることが特にこの1年ぐらいあったなって感じます。

今井 先ほどの安定と挑戦っていうお話の中で言えば、もしかしたらそれは1人の人の中での二つの役割っていうよりも、もしかしたらある部分はどちらが引き受けるけれども、ある部分をやらせる、というような感じで次の世代に挑戦の部分を任せて、フォローとかバックアップの方を先人が担っていくってことも一つあるのかななんて考えました。

村上 ですよね。自分自身がやっぱりなんとなくこの場所のネイティブになったなと感じたとしてもですよ、あくまでそれは自己完結の話であって、やっぱり本当にネイティブになっていくには、次の世代の人たちに伝えるとか、街の人たちと何か一緒にやり始めるみたいなところに、だんだんと次の衣に着替えていくというか、そういうことがやっぱりある種のここにとどまり続けるために何か変わっていくものの一つなのかななんて感じました。

今井 次回でいよいよ100回になります。次回はこの100回を振り返っていきたいと思います。

(文 ネイティブ編集長・今井尚、写真 サティス)

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次回のお知らせ

ラジオネイティブ100回は、暮らしをつなぎ続けるためのヒントとはなんだったのか、今時点で分かってきたこと、得てきたことをまとめます。それを踏まえ、これからどこへ向かっていくのか、これからについてもフィールドアシスタントの村上祐資とネイティブ編集長の今井尚で話します。

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