新型コロナウイルス接種と「両論併記問題」

Twitterのスレッドで書いたことだけど、ここでも書く。

新型コロナウイルスワクチン接種の「両論併記」

新型コロナウイルスワクチン接種の話は「両論併記」などと言って、「ワクチン接種は不安だ」と言う主張と「ワクチンを積極的に接種希望する」の主張とを同列に並べ立てる事は許されないと思う。

しかし、どのようなロジックでそのような結論が導かれるべきことになるのか、についてはなかなか整理できてない。法的に要請されているわけではないし、むしろ法的には表現の自由がベースだから。

ただ、「両論併記してはいけない場合がある」というのは共通認識なので、その考慮要素を新型コロナワクチン接種のシーンを媒介にして考えてみる。

新型コロナワクチン接種に関する状況

①不安を増幅させる情報は拡散され易いという情報の性質
②新コロワクチンが非常に有効かつ安全であり他の一般的なワクチンやそれ以外の物質のリスクより低いことが科学的に示されている段階にある
③社会の多数の者が接種する事で高い政策効果が得られる
④日本の過去のワクチン報道の特殊事情

一応思いついたのがこれらの事項。

もちろんこれだけにとどまらないだろうし、現時点ではほぼ何も文献等を見ていない状況での試論なので、突っ込みどころは沢山あると思う。

放送法4条1項4号の悪用問題

①は放送法4条1項4号「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」(TVの場合だが紙媒体も似たようなもの)を逆手にとり、「不安を増幅させる情報も提示しないといけないではないか」などとメディア側が開き直りをする方便に使われている可能性があるのではないか?

不安を増幅させる情報は拡散され易いという情報の性質はもはや有名だろうから詳しく書かないが、だからこそ基本的に「肯定的な情報」は不利な状況に置かれていると言える。

囲碁で言えば後攻なのに7目半のハンディキャップが先手の相手に課されないようなもの。

これは「両論併記の悪用問題」と言える。

ワクチンそのものの科学的情報」ではなく「ワクチン接種についての個人の見解」をメディアが尋ねているのは、もうそういう意図だろうと思う。

しかし、本来それはワクチン情報を一定程度把握している者同士の話のはずで、素人(医師でも知識ゼロの者が)の見解をベースにしてはいけないはず。

ワクチン接種についての個人見解を尋ねる事を禁止しろとは言わないが、放送法の規定を盾に取るなら、その場合の「意見」とは、素人のまとまりのない・前提を共有しない感想ではなく、主題に対して一定の知識を持った者同士の見解を指すと理解するべき。放送法の趣旨・放送局の使命の観点からはそうなるはず。

両論併記をしてはいけない基準はよくわからない

「両論併記」の問題は、「差別的主張」「ホロコースト否定」「陰謀論」などで議論されているが、どういう場合に両論併記するべきではないのか、その基準はいったい何なのか明示されることが無い。

一応以下の記事がその一端に触れているので置いておく。

この記事を読んでも「じゃあ両論併記してはいけない基準って何?」という点は何一つ書いていないが、参考となる考え方は一定程度示されており、ワクチン接種の話も両論併記してはいけないものだと捉えられている。

科学的根拠が揃っているなかでの根拠なき反対論はアウト

「両論併記論」はかなり深淵なので深入りしないが、②は両論併記すべきかどうかに影響を与える重要な科学的事実だろう。

世の中に存在している他の同種のリスクと他の別種のリスクよりも安全で、しかも季節性インフルワクチンとは違って無料で接種可能なものという事実。

②については、現在は「末期患者」や「妊婦」などに対する接種はどうなのか?という議論がなされており、この点は検証していけば良い。

世界中の民間企業や政府が科学的に安全であるとしており実際に1億人も接種してなお接種と死亡の因果関係が認められたケースは無いのだから、もはや如何にして接種のための情報を届けるかという段階であり、接種対象の限定の無い反対論は科学的な正当性が無い状況。

しかし、日本マスメディアでは一般読者・視聴者に「健康的な若者であってもあまり安全ではない」かのような報道の仕方をしているものが見つかる。

なお、報道がどうなのかは確認していないが、取材段階での偏りがあった事例が以下。

全国民が利害関係者

特定の界隈のトピックという、一部の者だけが利害関係者である話題についてなら、あまり目くじらを立てる必要はないかもしれない。

しかし、ワクチン接種は国民全員が利害関係者

③より多くの人が接種すれば社会生活がガラリと変わる類のもの。

よって、根拠の薄い見解を垂れ流すことについては厳格にコントロールされなければならない、という規範が立てられるのではないか。

日本メディアの前科:禊をやれ

④メディアは既にHPVワクチンや福島原発事故に関する風評被害を発生させ、実害が生じており、未だにその悪影響を払拭できていない。

今回のワクチン忌避もその延長線上にあり、メディアは弊害除去義務がある。

禊をやれよと。

今回、挽回のためのチャンスだったじゃん。

にもかかわらずこの体たらく。

ああ、汚名挽回したんですかね?

主題に関するエビデンス状況以外の考慮要素

これで一応終わりにするけど、よく言われている「両論併記問題」は、主題に関するエビデンス状況以外を考慮していないように感じている。

このスレッドで言えば②の類の話を論じているのではないか?
※この手の論文を読み込んだわけでもないので間違ってるかもしれません。

まぁ、ここではもともと法的義務の話をしてはいないから、①③④の視点もあってよいだろう。④は蛇足的だけど。

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