婚姻制度を国が設けた目的についての私論
同性婚訴訟の札幌地裁の判断が出ましたが、婚姻制度に関する記述は非常に危ういもので、国も主張を強めるべきだと思います。
札幌地裁の婚姻制度の理解
裁判所公式ではないですが、CALL4という団体が判決文を公開しています。
https://www.call4.jp/file/pdf/202103/533e3260db61a96e84711d1f0c02d5d6.pdf
判決文では、明治民法制定時の議論において、婚姻の目的の一つに「男女が種族を永続させること」という案があったが、老齢等で子を設けることができない夫婦を説明できない事や子をなす能力の無い夫婦の存在などから、子を作る能力は婚姻の不可欠な要件ではないとし、婚姻とは必ずしも子を残すことが目的ではないとしたことを挙げています。
たしかにそうですが、これだけで婚姻制度を考えるのは非常に違和感があります。
国民が婚姻する目的と国が婚姻制度を保障する目的の混同
札幌地裁の判示を読むと、どうも「国民が婚姻する目的」と「国が婚姻制度を保障する目的」を混同しているように見えます。
しかも、先述の明治民法時の議論の紹介部分は、「婚姻の成立要件」の話であり、場面が非常に限定されています。
国家として婚姻という身分関係を公証し種々の法的効果を与えるという制度構築に際しては、「典型的な夫婦関係・家庭」というものを措定して費用便益を計算するはずです。
婚姻制度への参加が権利であるとする見解の者からはこのような考えは出てこないのでしょうが、札幌地裁も13条という権利規定から同性婚制度を導くことはできないとしていますから、国家戦略としての婚姻制度という観点が無いとは思えない。
判決文では、「典型的な夫婦関係・家庭」に関する視点が無視されており、子をなすことができない夫婦などの特殊ケースの存在を中心に婚姻というものを分析しているかのようです。
国の主張も弱い
https://www.call4.jp/file/pdf/201910/0795a26f00d8d902bf28eaee79249820.pdf
こちらでは東京訴訟における国の主張が見れますが、学者の著書からの引用が多く、主張を尽くしていたかというと疑問が残ります。
徳永信一弁護士は、「婚姻制度の中核は子孫の養育」であり、その傍証として近親婚の忌避を挙げています。
「愛する二人が結ばれるのを邪魔するな」なら、近親婚もそうなります。
現行民法は他にも、嫡出の推定について「婚姻」を中心に判断されている点があります。
婚姻と子の出生・養育というのは密接に関係しているのです。
札幌地裁で認めるべきとされた「同性婚」=異性婚の法的効果の一定程度を享受することが要請されるにしても、(現行の)婚姻制度の理解だけは表層的なままではいけないだろうと思うのです。
こういった主張を角度を変えて行い、それを補強する根拠を国は真剣に探して主張するべきだと思います。
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