なぜ男系継承が行われてきたのかの考察

皇位継承問題について、「なぜ男系継承が行われてきたのだろうか?」「男系継承の実質的根拠は何だろうか?」という発想を持つものが居る。

その点について私も5年前に考察したことがあるが、2022年の現在の言葉で、あらためて記述していきたいと思います。

物理力の争いに女性を表に立たせる愚

要するに生物学的に男の方が女より支配権能が強い(主に物理的な力が強い)から、女が系統の中心にはなり得なかった、そうしようとしても乗っ取られるから、ということでしょう。

系統の柱が女なら物理力で勝る男に乗っ取り或いは廃絶させられるので、そんなモノは存在してなかったということ。

そのような争いの矢面に女を立たせるのだろうか?

欧州で【王朝の交代】と評されてきた「一代における女系継承」が行われたとしても、それが数代も連続して続くことはなく、基本的には男系継承が行われてきたのは、そういうことでしょう。

だから『継続性の象徴』として、男系継承が為されてきた事実が重視されてきたのは自然だろうと思う。それがつまりは「強さ」であり、権威となった。

でも、こんな事は「立証」のしようが無いし、継続してきた事実とイコールなので、改めて何らかの根拠として言及されにくい。

というか、単なる振り返りの評価に過ぎない。「男は女より力が強いから」と言ってるだけなので。

「女性の権力者の出産」という巨大リスク

近代以前は【出産で死ぬかもしれないリスク】があった。

これは現代では医療の発達でどうにかなってるけど、一昔前なら覚悟しなければならなかったのだということが忘れられている。近代の医療システムを前提に考えてるとこの視点に辿り着けない。

だから10代8方の女性天皇も、『在位中の出産』は無かった。

出産で死ぬかもしれない者」をトップにすること。
一族を統べる、社会を統治する存在が妊娠して死ぬかもしれないリスクに晒されている、というのは、極めて不安定な政情になったでしょう。

近代以前の環境で月のものだ出産だってなったら、基本的に公務は出来ないでしょう。しかも、その間に権力闘争を始められたら終わりでしょ。

だから女が権力社会の上位階層に存在し続ける事が出来るケースなんて特殊中の特殊ケースだということ。必ず周囲の支援・そのような状況の理解と承認が必要になる。

世界中で女王が居たことがある事実についてどう考えるかですが、現代までは正式に即位してなかったり男王との共同統治だったり王族と婚姻後に譲位してたりと、まぁそういうことです。

現代においては問題は解消したのだろうか?

では、現代においてはこの問題は解消したのでしょうか?

現代では物理力がどうのという話には基本的にはならないですが、(家を代々男系で継がせるという意識のある家庭も少なくなったからだけど)、生物学的勾配は依然として健在。

人的物的な支配権能=意欲は、やはり生物学的に男の方が優位であることに変わりはない。テストステロンと支配欲についていろいろと言われているように科学的根拠のある話。

皇室・王室の内部だけではなく、外部からの干渉を考えなければならないので、やはり無視できない。

では、イギリスのエリザベス女王やデンマーク女王マルグレーテについてはどう考えるべきでしょうか?

現代の医療システムや様々な配慮によって女王の存在が許容されてるという以前に、欧州全体がローマ帝国以来の王族らによって婚姻してきたという前提がある。海外に王位継承権者が居るとか、皇位継承権者が数千人居るだとか、そうなってるのは側室がない中で(公妾は居たが王位継承権無し)系統を継続させるためだろう。

「男系継承よりも王族として継続する事実を優先してきた」というよりは、出産によるリスクが高く・乳幼児死亡率が高い時代に側室制度が無いことによる選択の結果だった、と理解する方が自然。

そんな中でエリザベス女王が在位中に2子を出産してるのは奇跡と言える。

エリザベス女王の配偶者であるエディンバラ公爵フィリップ王配について。
彼はギリシャ・デンマーク・ノルウェーの王家であるグリュックスブルク家出身で、ギリシャ王子アンドレアスとアリキ妃の第五子として出生しています。

他方で、デンマーク王配のヘンリックはモンペザ伯家というフランスの貴族出身です。王位継承権法を改正してまでマルグレーテ2世に王位継承させた経緯があります。

エリザベス女王の子女が王位継承をすれば王朝の交代になりますが、王族内で婚姻をするという欧州のルールの範囲内ということになります。

もっとも、いずれにしても【男系継承が基本的なルールとして考えられていることには変わりない】と言えます。

日本の皇室の皇位継承問題について、女系継承を認める者の中にも、状況次第で消極的に容認する者と積極的に推進する者が居ますが、後者であっても複数代連続して女系継承が行われても良い、と考える者はどれほどいるだろうか?

カマキリやクモにおいて交尾後にメスがオスを食べるといったように、物理力でメスがオスを上回る、といったことが無い限りは、この傾向は続くんだろうと思います。

人類というか、生物の摂理でしょう。

「もはや理由などどうでも良い」の意味

旧皇族の竹田恒泰氏が男系継承について「もはや理由などどうでも良い」と言ったことに対して批判をする者が居ますが…

ここで述べたことを考えれば、「そうなるよね」としか言えないでしょう。

最初の項で言ったように、「男系継承は男が女より強かったからだ」などということは「立証」のしようが無い。

それは男系継承の基本ルールが継続してきた事実とイコールでしかなく、単なる振り返りの評価に過ぎない。

もっとも、「だから男系継承には根拠が無いのだ」という事にはならない。

私が何度も書いているように「積極的根拠」なるものは、数多の人間の営為によって醸成された歴史的な堆積物において現れることはほとんど無い。単に【継続してきた事実】があるだけ。

だから、それを覆す側にこそ積極的根拠が求められるということ。

法的議論における主張立証責任の分配も、原則的に現状変更を試みる者が追う(土地の権利関係を巡る争いにおいて分かりやすい)。

それは法が安定性を求めるからですが、そこには継続=安定性がある=基本的に良い事である、と評されるという根源的な理解があるからです。

しかし、結局は「このままだと皇位継承権者が居なくなる」という消極的根拠が出発点になっていますよね?

それ自体はおかしくない。

後はタイミングの問題。時宜にかなった主張か否かという問題。

悠仁親王殿下が居られる時分に、なんとか継続されてきた男系継承を維持しようと努力するのか、それとも「さっさと女系継承を認めれば良い」と継続性への尊重なく主張するのかどうか。

皇位継承権者に「他の皇位継承権者が居ない」「相談相手が居ない」という孤独を味わわせたいのかどうか。

政治側の都合でこの問題を放置してはならない。

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