レベルに達していないメディアで働く女性ネットワーク(WiMN)「拘留」⇒「勾留」⇒「身体拘束」への「訂正」

上の記事で内容面の問題については書き尽くしていますが、形式面についても夥しいミスというか、不見識と不誠実さが滲み出ている文章でした。

2021.06.28 旭川医大で取材中の女性記者逮捕・勾留に関する抗議声明 
【訂正とお詫び】
上記声明文を発表した際、「身柄拘束」とあるべき箇所を「拘留」あるいは「勾留」と書いた箇所が複数ありました。正確性を期すため、ここに訂正してお詫びいたします。

『「拘留」あるいは「勾留」と書いた箇所が』

とありますが、「勾留」と「勾留」が同時期に同じ文章内で存在したことはありません。

元々「拘留」と書いていたものを「勾留」と「訂正」していたのです。

2021.06.28 旭川医大で取材中の女性記者逮捕・勾留に関する抗議声明 (6月29日9:14:06 UTC時点)魚拓
【訂正とお詫び】
上記声明文を発表した際、「勾留」とあるべき箇所を「拘留」と書いた箇所が複数ありました。
ここに訂正してお詫びいたします。

まず、この訂正の経緯を誤魔化している時点で、不誠実極まりありません。

タイトルの変遷は以下です。

①旭川医大取材中の女性記者逮捕・拘留に関する抗議声明

②旭川医大取材中の女性記者逮捕・勾留に関する抗議声明

③旭川医大取材中の女性記者逮捕・身柄拘束に関する抗議声明

「勾留」の事実など無いので、最初の訂正後も悪質な文章です。

で、まさか現在の状態で問題ないとでも思っているのでしょうか?

逮捕は身柄拘束(身体拘束)を伴う手続です。
※腕を縛っているとかそういう意味での拘束を必ずしも意味しない。

二重表記になっているのです。

刑事訴訟法
第四条 司法警察員は、附則第一条第三号に掲げる規定の施行の際現に逮捕されている被疑者(第三号施行日前に検察官に送致する手続をした者を除く。)に対し、速やかに、第一条による改正後の法第二百三条第三項に規定する事項を教示しなければならない。
第二百三条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。

刑事訴訟法上、逮捕は身体拘束の場面の一つであり、逮捕と身体拘束を並列関係で論じるような意味ではありません。

国語の意味としても、逮捕は身体拘束の一態様です。

修正前の元々の文章も、「逮捕」と、それとは別の手続である「勾留」を並べていたのですから、単に「勾留」と「身柄拘束」の語を入れ替えただけでは両者を別の手続として記述していることになり、「表記が違うだけ」と言うのは苦しいでしょう。

「逮捕」と並べて書くのであれば「留置」です。

また、WiMNは以下書いています。

当該の女性記者は、警察に対して記者であることと取材目的を明らかにしており、逃亡や身元不明の恐れがないのは明らかです。

逮捕したのは大学側であり、私人による現行犯逮捕です。

そこから現行犯人が警察に引き渡されたのです。

この事実は道新記者が逮捕された6月22日には判明していたものです。

この文章では、警察に対する発言から「逃亡や身元不明のおそれ」が無いとしているのですが、既にこの段階では「逮捕」はされているのですから、「逮捕」の要件充足性についての事だと理解すると意味が通らないため、これは「勾留」の要件充足性について語っていることになります。
※現行犯逮捕にも「逮捕の理由」に加えて「逮捕の必要」は求められるが、現行犯は逮捕の必要が一般に推認できるため、例外を除き、個々の事案で具体的に必要を判断することは求められないと解され、また、運用されている。

したがって、この部分は「勾留」を「身柄拘束」に修正した時点で意味をなさなくなっているのですが(そもそも最初から事実誤認に基づいていたのだが)、なぜ現在も残っているのか。

同時に、このことが「身柄拘束」を「逮捕」とは異なる意味として理解される並列表記であると言うことになる根拠です。
(それが無ければ「逮捕・身柄拘束」とあれば、拘束開始時点とその後、釈放までの事を指しているのだなと理解でき、ほぼ問題は無いだろう)

単に用語の使い方をミスっている・不用意である、というだけなら、ここまで批判しません。

それは誰にでも起こり得ることだから。

しかし、今回のWiMNの表記は、明らかな事実誤認を前提にしているからこそ、ここまで書いているわけです。

この団体がまともな事実確認もせずにいいかげんな文章を書いているということだけが伝わった「訂正」でした。

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