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僕の尊敬している人

大学に入ってすぐの頃、「大学院生が新入生に実験レポートの書き方教えます」的なイベントに参加したことがあった。

院生の先輩方がレポートの書き方をざっくり説明した後質問コーナーになり、そこで無知で無鉄砲だった僕は生意気にも院生にこう質問した。

「なんで実験結果って失敗した時もちゃんと書かないといけないんですか?失敗した時の様子って別に誰も知りたがらないと思うんですけど」

失敗は成功と同じくらいの価値があり、現に失敗から生まれた理論や発明もたくさんある。

今の僕ならそれが分かるし、もちろん院生の先輩方も分かっていただろう。

しかし僕の質問に答えた院生の先輩は、そんな無知な僕を馬鹿にするでもなく、しかし親切に理由を説明してくれたわけでもなかった。

「面白いね!なんでそう思うの?」

あまりに意外な返答だったため僕はテンパってしまい「えーっとまあ、なんとなく...」みたいなつまらないことしか言えなかった。

すると院生の先輩は失敗には価値があるという話を丁寧に僕にしてくれて、最後に「困らせちゃってごめんね!僕の周りには君みたいな考えの人はいなかったから、純粋に面白いなって思って」と言った。

彼は、僕みたいな頭の悪いガキにも分け隔てなく接する謙虚さと、研究者としての純粋な好奇心を持っていた。

名前も知らないし顔ももうよく覚えていないけど、僕は彼を今でも尊敬している。



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