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傲慢というやつ

私が好きだったジャズ喫茶は繁華街にほど近い古いビルの地下にあった。

当時私は若かったので、とても可愛がられた。当時のジャズ喫茶は「男の世界」だったと思う。珍しく来た若い女性を店も客も全員が祝福し歓迎した。

就活中だった私はよくスーツで現れては煙草をふかしていた。その頃私はパンツスーツで活動していた。パンツスーツの女は就活に不利、なんてことがまだまことしやかに言われていた時代だ。今思えばだいぶイキってたと思う。だがそんなところもおもしろがられていた。

あの頃私は、彼らは若い女であるところの私を無碍にはしないだろう、と気づいていた。それに私は彼らにとって魅力的だから。無意識にそう思っていた。絵に描いたような傲慢、だと思う。無意識の傲慢。最強だ。

ある程度大人になって(少し遅かったけど)、あの頃の傲慢を恥じるようになった。だけど、傲慢を捨てた私は自信も一緒に捨ててしまい、まだ何も代わりのものを拾っていないんだよなぁ。謙虚と間違って卑下を拾わないようにしないと。何も拾わずに丸腰で生きていく術、落ちてないかなぁ。

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