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名文today_65/『「読まなくてもいい本」の読書案内』

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マンデルブロが見つけた「世界の根本法則」とはなんだろう? それは、ラフネス(複雑さ)にも秩序があるということだ。このラフネスを、彼は「ぎざぎざしたもの」という。
一見なんの秩序もない海岸線のぎざぎざは、じつは不思議な特性を持っている。海岸線の一部を拡大すると、同じような海岸線が現れる。それを拡大すると、また同じような海岸線が現れる。全体と部分はどこまでいっても相似形なのだ。
フラクタル幾何学を象徴するマンデルブロ集合は、足し算と掛け算のたった二つの規則からできているが、それをひたすら繰り返すとコンピュータは奇怪な図形を描く。よく見ると、どの部分を切り取っても全体と同じかたちをしているのがわかるだろう。このとてつもなく複雑な図形がものすごく単純な規則から生まれることを視覚化してみせたことで、マンデルブロは世界を驚かせたのだ。
自分を自分に取り込むことをフィードバックという。単純な規則から複雑な組織が生まれるのはフィードバックを繰り返すからだ。

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『「読まなくてもいい本」の読書案内』/橘玲/ちくま文庫/2019

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