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名文today_3/『あいまいな日本の私』

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新しい才能を持った若い芸術家が現れてくると、小説家、詩人であれ、音楽家、画家であれ、私たちが知らなかった新しい世界を見せてくれるのを感じます。それはかならずしもかれがすっかり新しい世界から来たというのではない。かれも私たちと同じ世界に生きているのですけれども、かれは新しい秩序のあたえ方を知っているのです。もっとわかりやすくいえば、かれは、新しい表現のかたちを持っているのです。私たちはかれにあたえられたかたちを見て、自分の生きている世界はこういうものかと、あらためて理解するということがあるのです。

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『あいまいな日本の私』/ 大江健三郎 / 1995 / 岩波新書

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