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軽症の憩室炎に対する保存治療の可能性について

憩室炎に対する治療は抗菌薬投与が一般的であるが、もしかしたら抗菌薬を用いなくてもよくなるかもしれない…を見た論文です。

Antibiotics Do Not Reduce Length of Hospital Stay for Uncomplicated Diverticulitis in a Pragmatic Double-Blind Randomized Trial
Clin Gastroenterol Hepatol . 2020 Mar 30;S1542-3565(20)30426-2.
doi: 10.1016/j.cgh.2020.03.049.

【概要】軽症の非複雑性憩室炎の治療は抗菌薬投与が標準治療であったが、この慣習は非プラセボ対照で、低レベルの2つの臨床試験に基づくものであった。本研究はプラセボVS抗菌薬投与の非劣性試験を行ったものである。主要アウトカムは入院期間で2次アウトカムは再入院や治療介入などである。抗菌薬群85人、プラセボ群95人に割り当てられた。抗菌薬群の治療レジメンは外科医が決定しており、IV+POの場合はcefuroxime 750 q6+MNZ 400mg 3times a day)、PO単独の場合はAMPC/CVA 625mg 3times a dayです。
軽症の定義はHinchey ClassificationのstageⅠaです。(これは罹患部周囲の脂肪組織の濃度上昇に留まる段階のものです。膿瘍形成したらⅠb以上です。下記にリンクあり)
https://doctorguidelines.com/2017/02/22/hinchey-classification-for-acute-diverticulitis/
他にもグーグルさんで『modified Hinchey Classification』と検索するとトップに表示されます。

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【結果】
入院期間は抗菌薬群で40時間、プラセボ群で45時間、有害事象はそれぞれ12%、1週間以内の再入院率は抗菌薬群で1%、プラセボ群で6%、1か月以内の再入院率は抗菌薬群で12%、プラセボ群で6%でいずれも有意な差は認めなかった。以上より、軽症の単純性憩室炎には抗菌薬を用いないという選択肢があることを示した。

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【個人的感想】
本研究はプラセボ対照ランダム化試験とは言え、小規模の研究であり、この試験だけで今後のプラクティスが大きく変わるものではなさそうです。しかし、全身状態が良い場合には対症療法も選択肢に入れてよさそうです。

NEJMのjoural watchでは、2015年に米国で出されたAmerican Gastroenterological Association Institute Guidelineon the Management of Acute Diverticulitisに触れ、以前にも上記のような提案はあったが、未だに憩室炎にはルーチンで抗菌薬が投与されている印象があると述べております。(あくまで軽症例の話で、膿瘍・穿孔、瘻孔形成例では抗菌薬や外科治療が必要です。)

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