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2型糖尿病に対する減量手術は薬物療法に勝る可能性がある

 糖尿病に対する減量手術は、糖尿病の寛解や糖尿病関連合併症を減らすことと関連があった。

Metabolic surgery versus conventional medical therapy in patients with type 2 diabetes: 10-year follow-up of an open-label, single-centre, randomised controlled trial.
Lancet 2021 Jan 23; 397:293.
(https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)32649-0)

 過去の観察研究で、減量手術は2型糖尿病の長期の寛解導入することができることが示唆されています。長期予後は不透明でこれまでの研究では5年を超えるデータを発表した論文はないと言われています。
 本研究は2型糖尿病に対して外科治療の長期予後を調べた単施設、オープンラベルランダム化試験です。

【研究概要】

Patients 対象者
下記を全て満たす人
30-60歳
BMI>35
2型糖尿病に罹患して5年を超えている
HbA1c>7.0%

下記Table1が対象者のプロフィールです。
平均年齢は43歳と、なんだかんだ言って比較的若い人が対象でした。
HbA1cは8.5~9.0%とこちらはよく見る値ですが、
BMIが44‼ と大型な人が人が多いです。日本人ではほぼ見ないレベルの肥満です。インスリンは約半数で使用しています。

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Intervention 介入
減量手術
Roux-en-Yバイパス術(RYGB手術) 20名
Biliopancreatic diversion 胆膵短絡術(BPD手術) 20名

減量手術の概要は下の図のようになっています。

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(上記は Harris et al., 2019, Cell Metabolism 30, 855–864.November 5, 2019 より引用)

Comparison 対象者
薬物療法 20名

Outcome 評価項目
① 2年時点の糖尿病寛解状態(HbA1c<6.5%、かつ空腹時血糖<100mg/dl、かつ1年以上糖尿病の薬物療法を受けていない)を評価した。
② 10年時点における糖尿病寛解維持期間

Result 結果
減量手術を受けた40人中15人(37.5%)で寛解を維持していた。
Intention to treat(ITT)解析の10年時点の寛解率は、内科治療群で5.5%、RYGB手術で50%、BPD手術で25%と手術群で良い結果でした。

下記Table2は、体重、HbA1c、腹囲、コレステロール値、血圧、インスリン使用の有無などの変化を表記していますが、殆どすべての項目で減量手術で良い結果を示しました。

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 またRYGBまたはBPD手術群いずれにおいても糖尿病に関連する合併症が、薬物治療群よりも少なかった。(下記Figure 3参照。この差は顕著です。)

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合併症はBPD手術群で多く、特に下痢が目立ちました。BPD手術群ではほかに栄養面の合併症が比較的多く鉄欠乏、低アルブミン、骨粗鬆症、夜盲もやや多かった。
(下記Table3は、SF-36というOQLの指標や合併症の多い・少ないを示しています。減量手術群、特にBPD手術では下痢の合併症が多いのですが、それでもQOLは明らかに外科治療群で優れた結果です。下の棒グラフは糖尿病関連合併症の比率を示していますが、こちらも減量手術群で顕著に少ない結果です。)

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【個人的感想】
 本研究は単施設の少数の研究ですが、ここまで減量手術群で良い成績が出ていることからは、比較的若い人の高度な肥満+2型糖尿病では減量手術も十分選択肢に挙げてよい印象がありました。




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