見出し画像

近山恵子が那須を終の棲家に選んだ理由。

都会暮らしがいつしか、しんどくなって。

個人的には田舎暮らしをしたかった。それが大きな理由になっています。私は新潟の田舎町で生まれたのですが、大学進学と就職を経て東京や大阪といった都会暮らしが続きました。

那須の高齢者住宅の庭先。ここにも好きな物だけを置く。

それがしんどいなあと思うようになったのは、三十を少し超えた頃です。なんというか、都会暮らしというのはエネルギーが強い。田舎の空気、都会にはない癒しがあることを知っていたので、それが当たり前とは思わなかったのですね。 子どもの頃は、そんなことは感じなくて、生きていくには都会だと思っていたんですが、体はまた違ってちゃんと記憶していたんだと思います。で、思い出した。田舎がいい、空の広いところがいい、と。

6月の庭先は大きな白いあじさいが咲き乱れます。


とはいえ、やはり、まだ当時は仕事があるし、いまのようなネット環境など夢のまた夢の世界でしたから。だって、私が30歳の頃なんて、携帯もドローンも鉄腕アトムの世界……いまは、ドラえもんの世界というのか??
「ああ、しんどいなあ。田舎、いいなあ」と思いながら、30年近く経って仕事もそろそろ終盤だなあという時に、「那須町」が仕事の候補地の一つに上がったのです。

全国2000戸以上の「高齢者住宅」をプランニング

私の仕事は? と問われたとき、ひと言で言えば「高齢者住宅のプランニング」とお答えしています。たしかに、高齢者住宅は2000戸以上手がけています。候補地を含めれば、日本全国歩いています。視察に伺い、ピンとくれば数ヶ月その土地に住み着き調査をしたりしていました。
 
家というのは、もちろん内側のこと、建物の素材や間取りといったことも大事なんですが、私たちが特に慎重に図るのは外側、その土地の町のことなんですね。堅牢で快適な家を建てても、暮らしは成立しません。堅牢といえば、刑務所や病院、学校なんかがそれに当たりますが、そこをいかに快適にしたところで、幸福とは言いがたい。
 
社会と地続きに生きることがなければ、それは収容所です。刑務所と学校を一緒に語ってはいけませんが、それでも一度入ったら自由に出入りできない窮屈さは、私には似ているように感じます。


相棒・pちゃんこと佐々木さんの家で、お仕事、お仕事、お仕事。


子どもたちも学校に閉じ込められているし、高齢者も「老人ホーム」に入れば散歩もままならない現実があります。

あ、「老人ホーム」というのは、最近注目しているTikTok で、ホリエモンさんが「高齢者住宅」のことをそう言っていたのです。「なんで、みんな老人ホームに入りたがるのかわからない。呆けるだけだ」と。う〜ん。いろいろあるんだけどね……。ホリエモンさんを「那須まちづくり広場」にご招待したい、と思いました。

でも、これまでの高齢者の住まいは、ホリエモンさんが言われる実態がありましたし、本質は今でも変わらないところも多い。それでは嫌だ、そういう不自由な暮らしはしたくないと私も思ったのね。高齢期を「老後」とも言うけれど、またの名を「人生の完成期」とも言います。

その完成期こそ、笑っていたいじゃないですか。いったいどうしたらいいのかをずっと考えてきたんです。

それが仕事でもあり、私自身にもやがて確実に訪れる高齢期に暮らしたい居場所でもあったから……なあんて言っているうちに、正真正銘の高齢期なんですけれどね(笑)信じられな〜い、って思います。
 

旧事務所で。相棒・櫛引順子と。やっぱ「三婆」だな。近山はこのとき、桃のことしか頭にない。

それで、なぜ、那須だったのか。 


那須町はそれまで視察してきた地域に比べても、とても特徴がありました。まず、町の人口の半分くらいが移住者でした。それは最近のことではなくて、戦後の農地改革の影響もありますが、60年代から始まる高度経済成長の「別荘ブーム」というのも関係しています。関東圏内で、とくに都内北部の方たちの行楽、保養、観光の地として適度の距離。

「那須の御用邸」は、ある年齢層以上には著名。
落ち着いた町並みと北海道のような牧草地も点々と見えます。肉や乳製品が美味い。海がないのに、魚も安くて美味い。野菜はもちろん、美味い。暮らしてみるとわかりますが、観光地にありがちなごみごみしたところがない。そのせいか、町の方たちは概ね穏やかで親切。県民性というのでしょうか。

それなので、「よそ者」も暮らしやすいです。まあ、道を歩いていても、人に会いませんが(笑)でも、それは結構大事なことですよ、嫌なことがあっても、自然に癒される。

ですから、都心から集まってくる移住者もみなさん比較的大らか。よいオーラは人を呼びますね。

且つ、みなさん社会的な経験を都心で積んで来られている。引退は社会が年齢で区切ったことで、実際はみなさん現役かそれ以上の知恵や技術をお持ちです。企業で培った力、円熟した芸術力、そこに人間力も加わって、人的資産が豊富です。これは隠れた社会資産です。

都内に出ようと思えば、新幹線で1時間ちょっと。これは! とピンと近山の頭に響くものがありました……。

こちらは佐々木邸。サンダル履きで行ったり来たりが超便利。

この続きは、おいおいに。

いやん、もっと早くいろいろ知りたい!と言う方は私たちが編んだ『Oil(老いる)』を読んでください。大好評のシリーズ1,2が完売したら3を作ります。よろしく!
那須まちづくり株式会社・代表 近山恵子
(20220911−2)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?