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#BPLS3 IIDX レギュラーステージ振り返り

BEMANI PRO LEAGUE -SEASON3- レギュラーステージの全試合が終了した。
本記事では、主に戦略の観点から各チームの戦いを振り返っていきたい。
とはいえ、結果を見て言える事は結果論でしかない。後からなら何とでも言えるということは忘れず、「今回の結果から何が言えるか、その要因はどこにあったのか」という観点で述べていきたいと思う。

昨年の振り返りはこちら↓


はじめに - 全体を振り返って


各チームの振り返りの前に、リーグ全体のことを振り返ってみたい。
今期はS2と比べてさまざまなルール変更があったが、その中でも最も影響が強かったのは「コストの余裕のなさ」であったと思う。
6試合でコストが40しか余らないという厳しい制約により、各チームのコストのやりくりや、そもそものメンバー構成でも陣営ごとに様々に工夫が見られた。そしてその結果、ドラフト上位選手同士の「大怪獣バトル」は減ってしまったが、逆に元々の実力に差がある対戦が今までよりも多く生まれることになった。その中で予想を覆す大逆転のドラマも数多く生まれ、それらがシーズンを彩っていた。
賛否はもちろんあると思うが、個人的には今回のコストの厳しい戦いは、良い方向(見ていて面白い方向)に働いていたと思う。

また、このルール変更により、各選手に求められる役割、特にドラフト下位選手に求められる力が昨季までとは少し変わっていたように見えた。
昨季までは、ドラフト下位の選手は下位選手同士かつ先鋒・中堅でぶつかることが多かったため、そのような選手に求められていたのは「低難易度楽曲で、近い巡目の選手に対して2タテを取れるかどうか」であった。もちろん上位選手と当たることもあったが、その場合は「負けるのは仕方ない」と考えて他選手がカバーする、という戦い方が多かった。
しかし、今シーズンでは前述のように、ドラフト上位vs下位の戦いが多く生まれることになった。そのため昨シーズンまでとは異なり、「難易度を問わず、上位選手に通せる自選曲があるかどうか」が非常に重要だったように思う。
実際、今シーズンでは、「格上相手に自選を通す力」の強い下位巡目の選手(KIDO.・46・NAGACHなど)が活躍し、逆に「全体的にそこそこ上手い」タイプの下位巡目選手(FRIP・I6VV・ RAITO.など)は厳しい戦いを強いられた。また逆にドラフト上位選手は、「格下」の選手をねじ伏せて確実に2タテを取れるかどうか、というのが活躍のキーだったように思う。
さらに言えば、満遍なく戦えるタイプの選手が多いレジャーランド・GiGOが苦しい戦いを強いられた事や、先鋒・中堅で勝てなくても大将で2タテを取り切って勝利していたAPINAやROUND1のようなチームが上位に来ていた、といった事も、こういったルールによる影響が少なからずあったと考えられる。

各チームの実力自体にはほとんど差がない今シーズンにおいて、「ルールにうまく対応できたかどうか」というのはかなり大きい。そのような観点から、各チームの結果を振り返っていきたいと思う。


Bリーグ

APINA VRAMeS

4勝0分2敗 42pt 1位

リーグ内の他チームが後半戦に比重を置いたオーダーを組む中で、前半のうちにいち早く勝ちを積み重ね、そのままリーグ首位でレギュラーステージを終えることができた。

このチームの戦略はシンプルで、「UCCHIE選手・WELLOW選手が2タテする」というものだ。とはいえ、「2タテを取れる選手」が2名いなければこの戦略は成立しない。リーグ全体のレベルも向上している中で、大将で2タテするのは、先鋒・中堅で2タテするより圧倒的に難しいだろう。
そういった状況下で、APINAのように「薄く広いオーダー」は必然リスクも伴う。それでもしっかりと作戦通りに試合を進め、結果として4勝という大きな成果を出すことができたのは、素晴らしいの一言に尽きる。

ただ一方で、SF以降はエース同士で戦う可能性が高い。前半での2タテが期待しづらい以上、同じようにUCCHIE・WELLOWの2名が2タテする必要があるわけだが、その難易度はレギュラーステージよりもさらに高くなるだろう。引き続き「作戦通り」に試合を進められるか、注目したい。


SUPERNOVA Tohoku

3勝1分2敗 38pt 2位

今シーズン台風の目となったのはまさにこのチームだろう。シーズン当初にあった「厳しいのでは」という下馬評を覆す、大きな活躍を見せた。

全選手が活躍していたが、特に注目したいのは46選手だ。大将戦3戦を含む4試合で2勝2分と、「自選を通す」という4巡目に期待される役目以上の仕事をこなしてみせた。
S3ではコストに余裕がほぼないため、コストを30支払う大将戦において、ドラフト下位選手が格上に対しても自選を通すことが見込めるのであれば、チームとしては非常に作戦が立てやすくなる。その分のコストを圧縮して、ドラ1ドラ2の選手を多く配置することができるからだ。その点で、46選手は今期のSUPERNOVAにおいて非常に重要な役目を果たしたと言える。

これは完全に想像だが……もしかするとSUPERNOVAはドラフトの時点で、

  • 「他陣営は1巡2巡で高難易度に定評がある選手を取ってくる」と予想し

  • その結果「46選手(あるいは似たタイプの選手)が後の方まで余る」と考えられるので

  • 低~中難度に定評のあるTATSU選手およびNIKE.選手を先に指名して他チームを出し抜き、余った46選手を後で取る

という作戦を、最初から考えていたのだろうか?
さらに言えば、この作戦ならば他に取られないように3巡目のうちに46選手を取るべきだと思われるが、実際にはそこをスルーしてTAKWAN選手を取り、46選手は4巡目で取っている。もしこれが本当に全て作戦通りだったのだとしたら、あまりに作戦が上手すぎて震えてくるが……実際のところはどうなのだろうか。

他にも、大将に強い選手が出てくるところは勝負を避け、逆に投入戦力の薄いところに強い戦力をぶつけるといった、試合のオーダー選びもかなり上手くいっていた。その分の割をTAKWAN選手が食らうことになってしまうわけだが、それで節約したTATSU選手・NIKE.選手のコストを他の試合に回せていたわけで、ここもやはりSUPERNOVAの作戦がとても上手くハマったと言えるだろう。
他チームを出し抜く作戦と、それを想定通り(想定以上)に完遂できた各選手の活躍。全てが上手く噛み合うことで、下馬評を覆す大きな結果を残すことができた。筆者としては完全に予想外で、「お見それしました」と言うほかない。QF以降の活躍も大いに期待である。


TAITO STATION Tradz

2勝2分2敗 36pt 3位

KKM*選手がLv12の大将3試合でチームを引っ張るという王道のオーダーでシーズンを戦った。大エースの破壊力を最大限に活かした、順当な戦略だろう。
ただ、結果論ではあるがSOF-LANを避けて前半戦で出る選択肢もあったのでは、とは思ってしまう。実際、KKM*選手がCORIVE選手にFAXXで敗れたことで勝ちを1つ奪われ、さらにKKM*選手不在の前半戦の試合は1分2敗と、(同様のオーダーを組んだ)ROUND1とは対照的に、かなり悪い方の結果だったと言わざるを得ない。それでもレギュラーステージ敗退という最悪の結果を避けられたので、「ギリギリで耐えた」といったところか。

KKM*選手以外で2タテを取ったのは、RIOO選手が先鋒戦で取った1回のみと、KKM*選手以外の3名がなかなか苦しい状況であった。とはいえ2引分からも分かるように自選キープ率は高く、QF以降でもKKM*選手の破壊力を活かせる状況ではある。昨季のROUND1のように、各メンバーがしっかり自分の仕事を果たすことができれば優勝も見えてくるが、そのためには現状では全員に少し課題が残る、といったところか。
KKM*選手といえども、UTAKA選手やUCCHIE選手といったスター選手らに対し「2タテを絶対に取れる」と言えるほどの圧倒的な力があるわけではない。現状のチーム状況では、そういった大エース同士の戦いをもねじ伏せることが求められるわけだが、そのためにはもう1段階ギアを上げる必要がありそうだ。


GiGO

0勝3分3敗 28pt 4位

今シーズンはチームで誰も2タテを取れず、1勝も取ることができなかった。ただ、2タテを取られた回数で言えば3回と、実は8チーム中でSUPERNOVAと並んで最も少ない。3引分けという数字にもそれは表れており、チーム全体の力では必ずしも他チームに劣っていたわけではないと感じる。
そうなると敗因はどこにあったのか?「2タテを取れなかったから負けた」というのはもちろんそうなのだが、筆者の考えとしては、オーダーがかみ合わなかったのも一つの要因かなと思う。
今回GiGOが取ったオーダー構成は薄く広くの形を取っており、APINAに近い作戦であった。しかしそれで勝つためには、CORIVE選手・NUCHIO選手が単独で2タテすることが絶対に必要になってくる。GiGOのような「満遍なく強い」タイプのチームでは、この作戦とは相性が悪かったのではないかと思う。また、自分が2タテを決めなければいけないというのは大きなプレッシャーもかかることだろう。そのプレッシャーに負けて、力を出し切れなかったということもあるかと思う。GAMEPANICのようにどこかの試合に戦力を集中させて、勝つ確率を高める選択肢を取った方が良かったのかなと、自分は振り返ってみて感じた。
勿論、実際のオーダーにあたっては曲ジャンルや対戦相手の傾向など考えることが他にも色々あるわけだから、これだけをもって「作戦が悪かった」と言うつもりはない。あくまで結果からみればそのように言える、というだけだ。実際、他チームの「捨て試合」にあまり当たらなかったという面もあり、全体的には運の悪さの側面もかなりあるだろうと思う。
今シーズンの結果はかなり悔しいものになってしまったが、いい意味で深く捉えずに、来シーズン以降も頑張って欲しいと思う。


Wリーグ

ROUND1

4勝0分2敗 37pt 1位

予定通りU*TAKA選手大将での3勝に加え、それ以外でも1勝して、レギュラーステージは上々の結果と言える。U*TAKA選手はLv11で2回出場していたが、ジャンルがSCRATCH・TRENDだということ(他メンバーがあまり得意としていない)や、レジャーランドを狙うという意図などがあってのものだろう。実際それらでもしっかり結果を残しているのだから、流石は王者と言うほかはない。
そして、今期はKUREI選手、NAGACH選手も強敵相手に2タテを取る活躍を見せた。I6VV選手も戦績だけ見れば厳しい戦いであったが、エース格相手の試合が多く、内容は必ずしも悪いものではなかった。昨季はU*TAKAのワンマンチームと囁かれていたが、今期は全員が戦えるチームになってきている。
(そもそも昨季でもKUREI選手は勝率5割は取れていたし、BPLにおいてドラ1の出ない試合はある種「負けて当たり前」なのだから、昨季の時点でも「ワンマンチーム」という批判はやや的外れではある。レジャーランドが全員勝率5割以上だったのと比較すれば見劣りするのは事実ではあったが……)
チーム全体の実力で見たときに、最も穴がないのはこのチームではないかと思う。BPL初の「連覇」に向けて、SF以降も突き進んでいくことだろう。


SILKHAT

3勝1分2敗 36pt 2位

結果だけでみればほぼイーブンの成績となったが、KIDO.選手のMIKAMO選手・U*TAKA選手に対する針に糸を通すような勝利があったり、一方でLICHIT選手・SEIRYU選手が2タテを食らって大敗した試合があったりなど、まさに波乱万丈といったようなレギュラーステージであった。最終試合まで1~3位まで可能性がある等、最後まで何が起きるか分からない、中々ハラハラドキドキしたシーズンだったが、それもある意味ではSILKHATの「イリュージョン」だったのかもしれない。
とはいえ、全体を通してみれば、各メンバーが求められる役割をしっかり遂行できたシーズンだった。2位という結果にもそれは表れている。昨季までは自分たちの思い通りに戦うことすら出来なかったのと比較すれば、とても良いレギュラーステージだったのではないかと思う。
3年目にして初めての決勝トーナメントで、どのような戦いを見せてくれるのか、注目したい。


GAME PANIC

3勝0分3敗 44pt 3位

前半にMIKAMO・PEACE両名を全力で配置し、後半の大将をTAKA.S選手に任せる形でシーズンを戦った。TAKA.S選手も大将戦は五分の成績で終えることができ、セカンドステージで1勝を取れたので、おおむねGAMEPANICの作戦通りに戦えたと言えるだろう。ただ一つSILKHAT戦の敗戦だけは想定外であったが……
そして、MIKAMO・PEACEの2人がポイントゲッターとなり、獲得ポイントはWリーグ1位であった。この結果だけを見ると「2人をバラけさせればもっと勝てたのでは」という考えも出てくると思うが、堅く通過を狙うという点では、今回のような形で戦うのがベストな選択であっただろうと思う。
またFRIP選手に関しても、今期は格上との試合が多くあまり活躍できなかったが、QF以降は近い巡目の選手と戦うことになるため、きっちり仕事をこなす勝負師としての活躍を見せてくれるであろう。


レジャーランド

1勝1分4敗 27pt 4位

今シーズンは中々勝ちが取れず、その間に他チームから狙われるなど、全体的に厳しいシーズンとなった。Wリーグ唯一の負け越しチームとなってしまったわけだが、実力が他3チームと比較して明確に劣っていたかというと、そんなことはないと思う。だがあえて敗因を挙げるとするならば、それは初戦のSILKHAT戦で敗北したことだろう。
ROUND1の振り返り配信によると、レジャーランドとの2連戦でU*TAKA選手を2回出すのは当初から予定していたわけではなく、序盤の結果を踏まえて変更していたとのこと。PEACE選手が大将で出てくるGAMEPANIC戦も勝つのは厳しかったことを考えると、「ROUND1に狙われるシナリオ」を回避するには、初戦を勝利するしか方法がなかったのである。また、もしROUND1に狙われていたとしても、初戦を勝っていれば勝ち点はSILKHATに並んでいたわけで、やはりこのターニングポイント(と言うには序盤すぎるが)での失敗が最後まで尾を引いたのだろう。
「勝つべき試合を落としたのだから敗退は当然」という考え方ももちろんあると思うが、自分の感想としては「勝負って難しいな」というのが率直な思いだ。こういう一つの戦いの後先で全体の結果が大きく変わってしまうのが勝負の世界なんだな、と改めて感じた。
レジャーランドが弱かったのではなく、今回はレジャーランドが負ける側だったんだな、という風に自分は捉えたいと思う。

おわりに

BPLS3 IIDXも気が付けば決勝トーナメントを残すのみとなった。
今シーズンも本配信だけではなく、メンバー限定動画などの新たな試みや、各チームの配信を見たり、カードを刷ったりクレープを食べたりなど、いろいろと楽しませてもらった。

こうやって分析のような記事を毎度書いているが、一方で試合自体は毎回とても楽しませてもらっている。時間にすればたった5分くらいのわずかな瞬間のために幾重にも努力を積み重ねてきた、選手たちの熱いぶつかり合いは、見ていてこちらも熱い気持ちにさせてくれる。
試合が終われば勝ちと負けは生まれてしまうものだが、その試合にかける選手達の情熱は、結果と関係なく等しく素晴らしいものだ。

残り少ない試合も、全力で楽しみたいと思う。

特に何もできませんがめっちゃ喜びます