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ビジネス・プロデューサー ~MBAとMOT

最近、海外での日本アニメブームが気になっていたのですが、どうやら本物のようですね。地域に関係なくコスプレなど、ジェネレーションX,Y(今の20代世代)あたりに人気のようです。そんなに凄い人気であれば、アニメや漫画の海外ビジネスは利益も凄いだろうと思うわけですが、そうでもないというのが、板越 ジョージ著の「結局、日本のアニメ、マンガは儲かっているのか」という本での説明です。

日本は、アニメや漫画の専門家は多いけど、海外ビジネスでは、以下4点が問題だそうです。
① ネットでの海賊版による被害;これはあらゆるコンテンツビジネスでの悩みですね。
② 知財マネジメントの貧弱さ;①にも関係しますが、日本は海外でこの分野に特に弱い。
③マーケティングの弱さ;日本のコンテンツの所有権が複雑で、権利を一括管理して柔軟なマー
ケティングができないし、この産業にその手のエキスパートが少ない。
③ 総合的にビジネスにする「ビジネス・プロデユーサー」が少ない。

今、日本企業全体で、優秀な技術者はたくさんいて、アイデアは結構出るけど、それをビジネス化する人材が少ない。イノベーションをビジネスにするためにビジネス・プロデユーサー的な人材が必要であると言われています。

それでは、エンジニアで一番多い「商品を世に出したい」人たちに、どんどん画期的な商品を出してもらわないといけません。しかし、数名で商品を作れたアナログ時代と異なり、今のデジタル時代は、ソフトも関わるので、たくさんの人がある一つの商品の製品化に関わります。


これが、簡単にアイデアを商品にすることが難しくなっている現状です。そこで、そういうを総合プロデユースする人材が必要となります。明治大学大学院グローバルビジネス研究科教授の野田稔教授は、企業に、プロジェティスタが必要だと説きます。

設計からマーケティングまで全てをプロデユースする人のことをイタリアで「Projetista プロジェティスタ」と言います。

イタリアでは、実際に職業としてあるようです。意味としては「プロジェクトマネージャー」や「デザイナー」 のような存在で、仕事(プロジェクト)全体を管理し、クリエイティブなモノを創りだす職業です。デザイナーの代わりにプロジェティスタという肩書きの方も多いようです。


これは、イタリアの企業風土というか、独特の背景が関係しているようです。イタリアの中小企業率はなんと全体の90%とされ、ほとんどが10人以下です。また、その中小企業の輸出率は約60%つまり半数以上になっているわけです。つまりプロダクトを生み出す時には設計、プロジェクトマネジメント、そして輸出までをも考え、仕事とクリエイティブそのものを結びつける。そういった必要性から、デザイナーという肩書きではなくプロジェティスタと名乗るわけです。


スティーブ・ジョブズもウォズニアックなどにMacを作らせ、彼は総合プロデユースをしていたように思います。P&Gなどのブランド・マネージャーもこういう役割をやっているのだろうなと思います。


ただ、エンジニアの世界は先述したように、エンジニアの世界の中でもいろんな役割があり、それを誰かがプロデユースしないと形にもならない現実があります。 ということで、「テクニカル・プロジェティスタ」という技術プロデユーサーが今、企業には必要であると言えるのでないでしょうか。

これは、もう政府も認めている事でありまして、そのための教育をしようとしています。それがが、MOTです。MOTとは、技術経営(Management of Technology )のことで、技術を効果的に活用して経営を行うことです。


企業・組織においては技術の最先端に関する追究だけではなく、技術の役割を理解し活用するためのマネジメント力が不可欠となっているのであり、MOT教育はこのようなマネジメント力の習得を目指して行うものとして位置付けられます。高度な専門的職業人の養成に特化した大学院である専門職大学院について、MOT分野における社会的要請の高まりを受けて平成15年度を皮切りに10大学院設置されました。技術者用MBAとでいいましょうか。


技術者の人は、どちらかと言うと技術志向が強くて、ビジネスや経営となると途端に弱くなる傾向があるように思っていました。じゃあ、MBAとどう違うのと言うと。
 

MBA(Master of Business Administration)は、どちらかというと既存の製品やサービスパラダイムの下で、最大の利潤を上げるための経営資源の配分を考えることが中心となります。その教育の根幹は、そのために考え出された欧米の進んだ経営管理のコンセプトと方法論を、経営者に身につけさせるというところがポイントとなります。

それに対して、MOTは、今はない新しい価値を世の中にもたらす、すなわちイノベーションによって、企業を発展させていく方法を考える。社会・マーケットの潜在的ニーズと、十分に活用されていない資源、特に技術資源を結び付けるにはどうすれば良いかを考えることが主眼となります。不確実性や創造性の管理といった方法論の確定しない分野が中心となります。

富の経営がMBAで、富の創造がMOTという人もいます。

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