見出し画像

Amazonの決断から学ぶ:日本の生産性を高めるためのハイブリッドな働き方の未来像

1. Amazonのリモートワーク廃止の決断

世界最大のオンライン小売業者、Amazonが9月16日、2025年1月から原則として週5日オフィスに出社する制度に戻すと発表したことが、大きな注目を集めています。この決定は、新型コロナウイルスのパンデミック中に広く導入されたリモートワークから一歩後退する動きであり、多くの企業がリモートワークの是非を再評価している中、Amazonが先陣を切って「出社」を再び強調した形です。

Amazonの動きは、リモートワークが一部の従業員にとっては生産性の向上に寄与する一方で、全体としては企業の目指す一体感やイノベーションの促進にはつながりにくいとの判断に基づいています。特に、従業員同士の直接の対話やコラボレーションが欠如することで、チームのパフォーマンスが低下する懸念が示されています。

実際、コロナ禍でリモートワークが大々的に始まり、「リモートでも仕事ができる」ということは確認できましたが、「生産性が上がった」という話は聞きませんでした。

Amazonのリモートワーク廃止は、エンジニア等には例外措置が取られることが予想され、リモートやハイブリッドワークを選択する権利が与えられる可能性があります。これにより、企業全体の効率性を保ちつつ、自己管理が得意な人材が柔軟に働ける環境を提供するという戦略が見え隠れします。この戦略は、日本の企業にも参考になる部分があるのではないでしょうか。

2. 日本の生産性向上に向けた働き方改革の必要性

日本の生産性は、特に他の先進国と比較すると長年にわたり低迷しています。経済協力開発機構(OECD)によると、日本は労働時間が長い一方で、労働生産性が低いという特徴があります。これは、日本独特の働き方文化や、効率よりも長時間労働を重視する風潮が一因とされています。

近年、リモートワークの普及が生産性向上の一助になると期待されていましたが、すべての社員が同様に恩恵を受けるわけではないという現実が浮かび上がってきました。リモートワークによって成果を出すことができるのは、主に自己管理能力の高い一部の社員に限られるため、全社員に適用することが必ずしも生産性向上に結びつかないのです。

学生の時も、勉強するのに家では怠けてしまい、図書館で勉強した思い出がありますよね。

ここで参考になるのが、Amazonのように原則出社を復活させつつ、優秀な人材には柔軟な働き方を許容するというアプローチです。日本の企業が生産性を向上させるためには、全社員に対して一律にリモートワークを許可するのではなく、社員の能力や業務内容に応じて柔軟な制度を導入することが重要だと考えます。

3. 「2:6:2の法則」を基にした生産性向上戦略

企業の生産性向上を考える際によく引用されるのが「2:6:2の法則」です。これは、社員を3つのグループに分ける考え方で、上位の2割が高い成果を出し、中間の6割が平均的な成果を出し、下位の2割が低い成果を出すというものです。この法則に基づくと、生産性向上の鍵は、上位2割の社員に対してリモートワークやハイブリッドワークといった柔軟な働き方を認める一方で、中間層や下位層の社員には出社を求め、組織として一体感を保ちながら成果を最大化することにあります。

自己管理能力の高い社員は、リモートワークやハイブリッドワークを通じてさらに成果を上げることができる一方、自己管理が苦手な社員は、出社して上司や同僚と直接コミュニケーションを取り、進捗を管理される環境が必要です。特に日本のような対面重視の文化では、全員がリモートワークに適応するのは難しく、原則出社を基盤とする制度が企業の生産性向上に寄与すると考えられます。自己管理能力が低い社員はコミュニケーション能力も低い場合が多いというのも事実です。

4. ハイブリッドな働き方の理想的な設計

Amazonの施策から学び、日本の企業が生産性向上を目指すには、原則出社とハイブリッドワークの適切な組み合わせを設計することが求められます。具体的には、以下のような制度設計が考えられます。

  • 原則出社: すべての社員を基本的にはオフィスに出社させ、業務の進捗や生産性を直接監督します。特に自己管理が難しい社員には、上司やチームメンバーとの対面でのやり取りを通じて、モチベーションや生産性を維持することが重要です。

  • ハイブリッドワークの権利付与: 技術部門や優秀な社員には、ハイブリッドワークの権利を与え、自己管理能力を活かして自由に働ける環境を提供します。これにより、彼らの創造性やイノベーションを最大限に引き出すことができます。また、管理職は残業代がつかず年棒制になるというのも時間を自由裁量で使えるということでリモートワークと親和性があると思いますので、管理職に権利付与というのもありだと思います。

  • 評価基準の透明化: ハイブリッドワークを認める基準を明確にし、どの社員がその権利を持つかを公正かつ透明にすることが重要です。これにより、不公平感を最小限に抑え、全社員が納得できる形で制度を運用することが可能です。

  • 段階的な適用: 初期段階では、技術部門や特定のプロジェクトに関与する優秀な人材に対してのみハイブリッドワークを許容し、徐々に他の部門や社員にも広げていくことが現実的です。これにより、制度の効果を確認しながら柔軟に対応することができます。

5. ハイブリッドワークと出社のバランスがもたらす未来

日本の企業文化は、これまで長時間労働や出社を前提とした働き方が主流でしたが、時代の変化とともにその価値観も変わりつつあります。Amazonのような大企業が出社を原則に戻す決定を下した一方で、ハイブリッドワークが有効な場合もあることを示唆しています。これに学びつつ、日本企業も生産性向上を目指すために、画一的な働き方ではなく、社員の特性に応じた柔軟な働き方の導入を検討すべき時期に来ています。

グーグルのエリック・シュミット元CEOは、古巣を批判し「グーグルはワーク・ライフ・バランスや早めの帰宅、在宅勤務を(ビジネスで)勝利することよりも重要だと判断している」と述べているそうです。

リモートワークの利点を最大限に活かしつつ、出社による一体感や監督の必要性も見逃さないハイブリッドな制度設計は、今後の日本の企業にとって生産性を飛躍的に向上させる鍵となるでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?