見出し画像

メタバースのclusterで始める「ワールド運営」入門ガイド

この記事ではタイトルに登場する単語「メタバース(バーチャルSNS)」「cluster」「ワールド」の意味が分かる人に向けて、ワールド運営の方法や面白さ・メリットを解説します。

僕自身は2020年8月からclusterにて雑談とカジノで遊ぶバー「幸甚亭」を運営しています。営業日には新規の人、常連の人の訪問がそれなりにあり、たいへん楽しくclusterライフを過ごしています。

今回はその面白さを少しでもお裾分けできればと思い、この入門ガイドを書いております。「大人数が来るわけではないけどclusterを楽しむには充分な人数が来てくれる」ようなワールドを運営する人がこの半年で100人くらいに増えればいいな、と夢想しつつ。

▼即分かり4コマ

画像1
画像2
画像3
画像4

ワールド運営とは何で、なぜ必要か

しかし、clusterではまだワールド運営の考え方が普及しておらず、なんのこっちゃと思う人も多いかもしれません。

端的には「作り手が自分のワールドに来訪したユーザーと交流をする、もしくは自分のワールド内のコンテンツをアップデートすることで、同一のワールドにおいて継続的に体験を提供していくこと、およびそれらの活動を宣伝・発信していくこと」と言えます。

なぜそんなことをする必要があるのでしょうか。目的は? これにはcluster社の視点と、一般ユーザーの視点から答えることができます。

cluster社からすれば、サービスのさらなる成長にはユーザーの定着が不可欠です。定着とは言いかえれば「clusterの利用頻度・滞在時間・可処分意識を増やすこと」です。アクティブなユーザーが増えるとそれだけビジネスチャンスが増え、cluster社はよりたくさんお金を稼げて、サービス開発にもっと投資できるようになります。僕らもハッピー。

現状では人気作品やVTuberのイベントなどを通して初めてclusterを利用したようなユーザーの定着はそこまでうまくいっているように見えませんが、だからこそユーザーの定着を促す戦略や施策が今後より重要になります。

ユーザーが定着している状態は主に以下の5つに定義できます。

1. いろんなイベントに何度も参加する 
2. いろんなゲームワールドや観光ワールドを渡り歩く
3. 何度も遊べるコンテンツのあるワールドに行く
4. フレンドなど誰かがいればワールドに入る
5. cluster向けのデジタルコンテンツを継続的に作っている

このうち1と2と5は、cluster社が2020年度に注力してきた部分です。そして「これから大事になる」と僕が考えている3と4を促進するための案の1つが、ユーザーによるワールド運営です。

3と4に関しては公式側にも直接的にやれることがありますが(ログイン回数や滞在時間、訪問者数に応じた報酬など)、ユーザーがおのずからいろいろとやっていかない限りは成長と発展がないのがSNSです。むしろ公式側はそれをサポートし、ブーストするのが主な仕事ですね。

作り手にとってワールド運営が持つ意義

では、ユーザー、特に作り手にとってワールド運営とはどういう意義を持つのでしょうか。

ワールドを作ったクリエイターからすれば何度も訪れてほしいものですが、ワールドの性質・構造がそうなっていない場合が多いのでなかなか難しいのが実情です。

ゲームワールドであれば、1回遊び終わったら新規性や面白そう感がなくなり、2回目を遊ぶには強い動機が必要になります(クリアの概念があるならなおさら)。観光ワールドも同様に、再訪(リピート)には「どういうワールドだろう?」「写真を撮ってみたい」という最初の好奇心に匹敵する動機を見出してもらわなければなりません。

もちろん、初見ユーザーのためだけに最初に味わえる面白さに特化したゲームワールドや、最初に感じられる驚きと興奮に特化した観光ワールドを作っていきたいという作り手もいるでしょう。特にcluster初心者のために、そういう作り手の存在はclusterに不可欠です。

が、「最初の体験」を偏重したワールドばかりになると、「次の体験」が重要になるユーザー定着に目をやった途端、作り手はどんどん新しいワールドを作っていかなければならないことになります。cluster社からすれば無数のクリエイターがいればいいですが、いまはちょっと現実的ではないですよね。クリエイターからしても、初心者ユーザーを得続けるのは簡単ではありません。

ゆえに、同じユーザーが同じワールドに何度も再訪することに大きな価値が生じます。

再訪してもらうには、先ほど挙げた定着状態「3. 何度も遊べるコンテンツのあるワールドに行く」か「4. フレンドなど誰かがいればワールドに入る」のいずれかを満たす必要があります。そして、いずれかを満たした状態こそがワールド運営が行なわれている状態です。

ワールド運営をすることのメリットは4つくらいあります。

1. ワールドへの訪問者が初見・リピートともに増える
2. より多くの人とコミュニケーションでき、友達ができやすくなる
3. 繰り返し楽しんでもらうための知見・技術が増える
4. 自分やワールドがブランドになり、好きなことをやりやすくなる

要するに、楽しいし面白い。友達もできる。影響力を持つこともできるかもしれない。それでいてclusterというサービスにも大きく貢献できる。

ワールド運営最強か? 最強なんだな、これが。

在中型とアップデート型のワールド運営

次にワールド運営を分類しましょう。

ワールド運営には2通りあります(ほかにもあるかも)。1つはワールドを作ったクリエイター(以降オーナー)や関係者が在中するタイプと、誰も在中はしないけれど頻繁にワールド内のコンテンや体験をアップデートするタイプがあります。

イメージとしては、在中型は飲食店や接待業で人が主役、アップデート型は遊技場やテーマパークでコンテンツが主役です。どちらが好きかは好みが分かれるところですが、よりハードルが低いのは在中型です。なぜなら、人は人が大好きですし、コミュニケーションからは勝手に無限のコンテンツが生まれてくるからです。

僕の幸甚亭も在中型なので、この記事では主にこちらについて解説しようと思っています。なので、先にアップデート型について説明します。

※イベントだけを定期的に開催しているユーザーもいますが、これはワールド運営ではなくイベント開催として独立させておきましょう。イベントを企画して開催し続けるのはワールド運営の10倍難しいです。

アップデート型は発想力と実装力が鍵

誰も在中しないワールドに再訪してもらうためには、そのワールドに新規性を提供し続けなければなりません。つまり、コンスタントに要素やコンテンツをアップデートする必要があります。そのため、こちらのワールド運営をアップデート型と名付けました。

初見ユーザーだけでなくリピーターにも楽しんでもらうには、とにかくコンテンツを生み出す発想力とそれをワールドに落とし込む実装力が鍵となります。

難しいように思えますし、とりわけゲームワールドだと実際に難しいでしょう。

とすると、ゲームワールドは運営できないのかと言えばそうではありません。例えば、みんなで遊ぶ形式や対戦形式のゲームワールドだと、人が集まりさえすればいくらでも遊べます。オーナーが在中して来てくれた人と一緒に遊ぶのもよさそうです(在中型にしてしまう)。

あるいはクリア形式のゲームなら、クリアタイムや何らかのスコアを競う大会を開催するといいですね(もちろん対戦形式でも)。大会をやるとなれば宣伝しやすく、注目も集めやすいでしょう。clusterはイベント機能がいい感じですし、外部の大会運営サービスを使うのもありです(大会は在中型に近い)。

一方で、観光ワールドなら頻繁なアップデートが可能かもしれません。オーナーが何日の何時からガイドをしている、月に2回イベントを立てて一緒に観光をする、といった在中型の運営も考えられます。

フォトスポットを宣伝したり、撮影会を開催したりするのもいいですね。ソーシャルSNSは写真や動画を撮るのが楽しいですし、ユーザーにとってはTwitterやInstagramに投稿するいいネタにもなります。

ちなみに、ここで大事なのはイベントの大目的をワールドの宣伝にすることです(小目的は参加者に楽しんでもらうことでいいでしょう)。clusterでユーザーに広く宣伝する方法は限られているので、イベントを通してワールドを知ってもらうのはよい手です。

在中型はコミュニケーションが鍵

続いて、在中型のワールド運営について説明します。

在中型はワールドにオーナーや関係者が滞在し、訪れたユーザーと交流することをメインとしています。仮に雑談をするのであれば、ワールドがあってオーナーがいれば成立します。

大事なことは、特定の日時に誰かがいるようにし、ユーザーにもそう認識されることです。幸甚亭では月水金の21時~24時であれば基本的には僕か誰かがいますし、何度も訪問してくれている人も営業日時を知ってくれています。

バーチャルSNSではワールドに「誰かがいること」はめちゃくちゃ重要です。誰かがいることはそのワールドを訪れる強烈な動機となります。たとえワールド自体には用がなくても、あるいはコンテンツがなくても、そこにいる人たちと交流したい・遊びたいという気持ちが生じえます。たいていの場合、誰もいないワールドより誰かがいるワールドに行きたいですよね。

特に、clusterの最近のアップデートでどのワールドにどれくらい人がいるかが分かるようになりましたので(4月時点でスマホのみの機能)、ワールドに誰かがいるだけで人を呼び込む効果が生まれるわけです。

在中型の強みはまさにこれです。人が人を呼ぶ。コミュニケーションの欲求は人類共通です。そして、人が集まれば遊びが始まり、コンテンツが生まれる。また遊びに行こうかなと思う。ユーザーが定着する。強い。

ワールドについては、カフェやバーのようなオフラインでも人が集まるモチーフがいいかもしれません。ですが、在中型はどんなワールドでも成立しますので、ここは工夫のしどころです。

ちなみに、幸甚亭はサイバーパンクをテーマにした地下バーをモチーフにしており、プレイ可能なカジノ(いわば対戦ゲーム)も併設しています。雑談とゲームというハイブリッドな構造になっているわけです。

ワールド運営を阻むいくつかの壁

さて、ここでいくつかの壁にぶち当たります。特に在中型において目立つ、2つの壁を解消していきます。

1. 誰も来てくれないかもしれない

せっかく気合いを入れてワールド運営を始めたのに、誰も来てくれないかもしれない。それはしょうがないし当然です。最初は誰も知りませんからね。いっぱい宣伝しましょう。

僕も初めは1日数人~十数人くらいから始まりました。いまはかつてよりユーザーが増えていますので、Twitterなどで繰り返しきちんと宣伝すれば知ってもらえる可能性は高まるはずです。

「きちんと宣伝する」とは、誰がいつワールドにいるのかをしっかり告知することです。ワールドの概要欄やSNSの投稿文には在中日や時間を記載し、その時間は必ずワールドにいるようにします。地道に長くやることが肝要です。

しばらくすればきっとヘビーユーザーが見つけてくれて、そのうち常連になってくれるでしょう。人が来るまではワールド内で佇み続けるだけです。あいさつ大事。

2. 運営されているワールド同士でユーザーを取り合ってしまう

もう1つ、運営されているワールド同士でユーザーを取り合ってしまうという懸念がありえます。これは現状でもイベント同士で発生しているかもしれませんが、僕は正直どうでもいい悩みだと思っています。誰しも自分の好きなときに好きなところへ行けばいいんですよ。

これを壁に感じてしまうのは、いまのところclusterのヘビーユーザーが少ない(みんな知り合い状態である)ことがそもそもの課題だからです。解決策としては、そういうヘビーユーザーが自分のワールドに優先的に来てくれるようにするか、新規・初見の人が気に入ってくれるように工夫すること。また、clusterの外から人を連れてくることもお忘れなく。

当然ながら、「あの人、あっちのワールドに行っちゃった……!」と勝手に裏切られた気になったり、そのワールドのオーナーを妬んだりするのはお門違いです。自分やワールドに独自の魅力を持たせることが第一です。

ワールドの宣伝手段

ワールドを宣伝する手段については、もちろんSNSを活用するのがメインです。Twitterなどでは「#cluster」をつけ忘れないように。常連の人にシェアや宣伝をお願いするのもいいですね(幸甚亭の場合は……おっとやめておこう)。

REALITYで配信するのもおすすめ。clusterとアバター連携ができるため、自分のアバターで動くことの楽しさを伝えてみることで、ワールドに来てもらえるかもしれません。

ただ、これだけだと既存のclusterユーザーには届きにくいので、そんなときに利用したいのがイベントです。

イベントはclusterの公式サイトに一覧で載りますし、ヘビーユーザーほどチェックしています。新規ユーザーもイベントを見つける可能性が高そうです。

運営しているワールドがあるなら、イベントはまたとない宣伝チャンス! ワールドを知ってもらいたいときは、そのワールドを舞台にしたイベントを開催してみてください。何をやればいいかは自分で考えてね。

さらに、ワールドに人が来ると公式サイト(cluster内ならメニュー)の上部にレコメンドされるようになるので、そこからも流入が考えられます。

ただし、このレコメンド機能は大勢が訪れる人気ワールドがひたすらユーザーを奪い続ける仕組みになっているので、僕は早急に見直したほうがいいと思っています(たとえ幸甚亭が掲載されるとしてもです)。

もう1つの宣伝手段として、オーナーがいろんなワールドやイベントに顔を出して交友関係を広げることが挙げられます(VRChatなど含む)。知り合いになって「今度よかったら来てね」なんて言えるような間柄になれればこのうえないですね。知ってる人のワールドには行きやすいですし。

僕はあんまりほかのワールドに行きませんしイベントにも参加しませんが、これは狙ってそういうキャラにしようと考えてやってきました。最近は引きこもりをやめて少しずつ外出するようになっているものの、いまからワールド運営をするなら多くの人と顔見知りになったほうがいいのは間違いありません(メリットしかないです)。僕のこの方法は真似しないように。

ワールド運営、いまから始めてみませんか

さて、ここまでワールド運営に関して必要性、メリット、分類、特徴、課題、宣伝方法について簡単に解説してきました。

おおよそのことは記載しましたが、もっと踏み込んだ「ワールドに再訪してもらうための仕掛け」もあります。それは中級ガイドとしていつかまた別の機会に。

そうだ、1つ忘れていたことがあります。メリットのパートで挙げた「4. 自分やワールドがブランドになり、好きなことをやりやすくなる」について説明しておきます。

自分のワールドにいろんな人が来てくれるようになると、そのワールドや自分に信頼が蓄積されてブランドとなり、その名前を自由に使って好きなイベントや企画をやりやすくなるんです。

これって最高に楽しいんですよね。僕は近いうちにVRでプレイするTRPGを作りたいと思っていますが、幸甚亭を使えばいろんな可能性がありえます。オーナーの取り組み加減によっては実店舗の出店やグッズ販売までありえるでしょう(僕はやらないと思いますが)。

clusterで自分の居場所や友達を作ったりするのにも、ワールド運営はとてもいい手段です。もし何か疑問や不安があれば僕に相談していただいても構いません。

別に何十人、何百人に注目されたり集客したりする必要はまったくないわけです。毎回数人でも会いに来てくれるようになれば、それはもうたいへんに尊くすばらしいことです。

ということで皆さん、いまからワールド運営を始めてみませんか?

最後の最後に、おそらく皆さんの前に立ちはだかる大きな問題について取り上げた記事を紹介しておきます。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます! もしよかったらスキやフォローをよろしくお願いします。