後遺症が残った過失10の交通事故に遭った話① 事故と加害者と私

さて、それでは。
多分誰かの役に立つと信じたい、
交通事故の被害者になった話と、その怪我の後遺症、そして加害者保険会社への訴訟をほぼこちらの勝訴で終えた、
5年くらいにわたる長ーい話を始めたいと思います。


事故当時の私は、
初めて就職した会社が、会社が悪いってわけじゃないけど不運にも死亡事故を出して書類送検され、
継続も危ぶまれすっごく暗い雰囲気になってきたので辞めて、
特殊な専門学校に通い、国家資格を取ろうとしていました。

前期の学費だけは払ったけど、後期の学費が払えていないのでアルバイトを3つ掛け持ちし、
学校から帰ったら0時近くまでバイト、朝起きて学校、そしてバイト、
という勤労学生すぎる日々を送っていました。

その後、1学期の終わりかけ(6月末)、
『それでも後期の学費が払えない!』あわわ、と戦慄し、
学校の先生に相談したら紹介してくれた、夏休み中全部使ってのバイトに通い始めました。

事故に遭ったのは、
夏休み、もといバイトが終わるまであと3日の、
自転車で家から40分のバイトへの通勤途中の朝7時、
バイト先まであと横断歩道を渡るだけ、もう10mくらい、
な時でした。

その日は天気が悪いので車で通勤している人が多く、私の住む地域の交通ルール守らないレベルがすごいこともあって、
その私が横断しようとしていた横断歩道の(信号はない)上にみっちり、15mくらい先のでっかい交差点からの信号待ちの車が並んでいました。

わかりにくいし、交通事故被害者の人が訴訟やらの参考に見るかもなので、
図を載せておきますね。車の数は適当です。

事故直前

『しかたない、この車の隙間をぬって渡るか』
と、一旦停止のところで停まって考えていた私は、
自転車にまたがったまま足でちょこちょこ地面を蹴りつつ、
車と車の隙間50cmくらいの横断歩道際をそろっと通り抜けていたわけです。

で、多分、読者の方で
「いや、横断歩道渡ろうとしてるんだから、右手側の車は渡り終えるのを待ってくれるでしょ」
と思った方もいると思います。
しかし!
この地域では横断歩道を渡ろうと止まっている人がいようと関係ない、地元民の認識は車優先です。
「でかくて固い方勝ち」なオラオラ精神が蔓延しているために、ベルファイアとアルトならアルトが絶対に譲らねばならないわけです、理由は安くて小さいから。
歩行者も弱くて小さいから、でかくて固い車が優先というわけです。
危ないから警察が捕まえろよ、といつも思ってました。
ちなみに、私はアルト乗りだったこともあるのでアルトは好きです、念のため。

なのでこの状況では、歩行者信号がある交差点まで遠征するか、車が居ないか停止している隙にこの横断歩道をわたりきるしかないのです。

参考のためにお話しすると、訴訟の時に問題になる点がすでに↑の文章で2つでてます。
私も上記の説明を弁護士さんにしたうえで、そのあと弁護士さんから「間違いないですね?」と念押しされて知った部分になります。
 ① 事故時、 自転車に乗っていたか or 自転車を押して歩いていたか
 ② 一旦停止で停まったか
の2つですね。

①で自転車を押していた=歩行者扱いになるので、
よっぽどのことがない限り歩行者の過失は0、全面的に車が悪くなります。
自転車扱いになると、車が悪くなる場合が多いものの、そのほかの様々な条件を加味して過失が決まります。

②で一旦停止していなかったら、
歩行者の場合はちょっと過失あるかなーどうかなーくらいなのですが、
自転車の場合は結構な過失(下手したら50%以上自転車が悪い)になります。

私は運よく、というか状況的にもルール的にも止まらざるを得ない感じだったわけなので一旦停止はしたものの、
横断歩道を自転車にまたがって横断していたので、ほぼ自転車扱いとなって自身にも過失が生じる可能性があります。


で、訴訟系の話に脱線しましたが、
私は一応、車の間を抜けそうなあたりで向こうの大通り交差点を確認しました。
大通りから車がビューンときたらはねられちゃいますからね。

安全を確認して車の間から抜けきったその瞬間、
左目の視界奥、大通り交差点からこちらの道に入ってきた車が見えました。
もう後には引けない、車の隙間を自転車にまたがった状態でバックで戻るなんて曲芸は私にはできません。
前に進むしかないのですが、なぜか私は、
『いや、さすがにこんなに見えてるし、ここ横断歩道だし、止まってくれるんじゃないの?』
と思いました。
そして、その逡巡のせいで一瞬横断歩道の上で両足を接地した状態で停止しました。

この時、こんなこと思わずに、「やば!」と横断歩道を駆け抜けていればよかったわけです。
多分渡り切れました。自転車の後ろの方は当たったかもしれないけど。


事故時(すみません、「自分」の文字が浮いてますね。自分は黄色い丸です)

とんでもない、「飛ぶ」に等しい速度で車が近づいてきました。
『うわ、ブレーキも踏まないのか。猛スピードだよ。前見てないんだろうな、死んだな。』
と思いながら、自転車に乗っていて車高もあるので、運よく、固いバンパーには足だけ、腰はボンネットに打ち付け、
加害車の窓ガラスに頭を打ち付けました。

あとから考えてみると、車が大通りから入ってくるのが見えてから跳ねられるまで2秒くらい。長くて3秒。
状況的に黄色信号くらいで慌てて大通りを駆け抜けて、そのままのスピードで来ただろう車の時速は50キロ近くはあったと思います。
後々の調書の時に、
警察の人も、「30キロが制限速度だけど、この辺は45キロ以上出す車も多いよね。若い子が逃げ切れないなら結構スピードが出てたでしょうね。事故多いんだよなぁ。」と言っていました。
『なら捕まえろ・・・いや、忙しいんだろうけども頑張ってよ。』と思いました。

窓ガラス、車のルーフ、大空、近くの会社のロゴ、アスファルトの地面。
視界を目まぐるしく駆け巡る景色に、
『空を飛んだな!人生で最後に空を飛んだぞ!』
と奇怪な脳内になっていました。

そして気づけば、アスファルトの地面に土下座する形で、
正座して両手を下にして頭を打ち付けていました。

顔を少し上げると見える、バイト先の向かいの会社。
生きてるみたいだけど。正座の状態から足も動かせないし、両腕も動きません。つまり、ここから動けません。
『自分が居るのは景色を見る限り道路上だから、後続車にはねられて死ぬかも。
2度目に私をひくことになる後続車の人、巻き込まれ事故で可哀そう、すまん。』
とか思っていました。

左目の視界もありません。まっくら。
右目で周りを見渡しても、誰も近くにいないし、助けてくれなさそう。
あんなに、信号待ちで並んでいた車のドライバーは?関わりたくなかったんでしょうね。「通勤前だし、しーらね!信号青になったし気にせず会社行こ!」ってとこでしょう。

そんな折、
急に後ろから車が私を避けつつも抜き去っていきました。
『誰も後続車がこないのを考えると、これは加害車だな。あー、逃げたな。』
と思いました。

私にも助けが来ないし、周囲の車もみんな蜘蛛の子を散らしたようにいなくなったので、今逃げられたら目撃者も見つかりにくいでしょう。
死亡事故なら警察も頑張りそうだけど、私はどうやら生きてそうだし。

絶望していたその時、私が大空を舞ったときに見たロゴ、バイト先の向かいの会社から、男性2人が
「おい!!大丈夫か!」
と声をかけながらこちらに走ってきました。

私はこの時、『本当に、世の中捨てたもんじゃない』と思いました。
『助けてくれる人って、いるんだな』、と。
涙が出ました。
目が片方つぶれてたし血まみれで多分水分不足だったので、実際は出なかったんですが。

「立てません・・・」と私は声を出しました。
男性2人は今までの私を取り巻く静寂がなんだったかと思うくらい、いたわりの声をかけながら私を丁寧に介抱し、飛んで行った自転車を回収し、
あわただしく助けてくれました。

そして、ちょっと時が戻りますが、
男性2人が大声を上げつつ私に走り寄っているさなか、『逃げたな』と思った車が遠くで停車しました。
(入りきらなかったので図では結構近いですが。。もっと遠くでした。)
50代くらいの女性が運転席から、こちらにふらふらとやってきます。

事故後

私は思いました。
『逃げようと思ったけど、助けられようとしている私を見て良心が疼いたのか、かけよる声を聴いて目撃者が居そうだから逃げ切れないと思ったのか知らないが、
この人は全面的にいい人じゃなさそうだぞ。』
と。だって、事故後これまで、(多分)車から一度もおりていませんでした。

救急車はその男性2人のどちらかがすぐさま呼んでくれていました。

加害者の人は私には何もしてくれなかった。
けど、
「何か、あぁ。どうしましょう。あそこの遠くに車を停めたのは、あの、交通の邪魔だと思ったからです。」
と、何も尋ねていない私に言い訳(多分)をしていました。

私はふと、
『バイト、今日、というか最後まで行けないな。連絡しないとな。』
と思いました。
ついでだし、「何か、」とか言ってたし、と、加害女性に
「あの、左の胸ポケットに携帯があるので、出して連絡先一覧から〇〇って会社に電話してもらえませんか。電話がつながったら私の耳に当ててもらえれば話すんで。手が動かないんですよ。」
と淡々と言いました。
他は動かないけど、口が動くのはいいことです。

女性は血まみれの服をあさり、すんなり電話をかけてくれて、
私は無事にすぐそばの会社にいるバイト先の担当者に、
「車にはねられて動けないので行けないです。急にすみません。ご迷惑おかけします。」
を伝えられて、ほっと一安心しました。


と、
ほっと一安心したあたりで今回は終わろうと思います。
次は病院たらいまわし事案~絶望編~になります。

見ていても助けてくれない人9割5分、助けてくれる人5分(1割もいないですね)、の世の中だなと色々経験して思います。
みんな自分に様々な言い訳をしながら見過ごすわけです。
そんななか、助けてくれる人に出会えるのは幸運でした。
この時助けてくれた人が幸せに過ごしてくれているといいのですが。

かくいう私は、助けてくれた人にお礼に行けていません。
事故現場が怖くて近くに行けないんですね。
私の当時のバイト先の人が、私の話を聞いて、助けてくれたお礼をと隣の会社を訪問してくれたそうなのですが、誰も名乗り出なかったと言っていました。訪問してくれた人は「だから、気にしなくていいのよ」と私に言ってくれました。
もうそれならいいかなと。えぇ、まさに私も言い訳をしながら逃げております。

あとは、別の話ですが、
『自分って不運だなぁ』と思う人が、
『同じくらいの不運仲間がいそう』と思えて、少しでも気が楽になってくれるといいなと思っています。
私の不運の合間に登場した心優しい人たちのお陰で今も生きていられているわけで、彼ら彼女らのこともしっかり書いていきたいところです。

長文を読んでいただきありがとうございます。
それでは、良い夜をお過ごしください。