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上村元のひとりごと その416:痣

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 僕の身体は、一つだ。

 時と場合によって、いろんな僕がいるように見えるのは、頭の中だけのこと。

 いつでも、どこでも、身体は、一つ。

 そこが、出発点にして、到着点。

 この世に存在している意味、そのもの。

 なんだかんだ、振り回されてきたし、これからも、振り回されるだろうけど。

 頭よ、ちょっと、休みなさい。

 何がしたいとか、何が欲しいとか、そういうこと以前に。

 身体は、ただ、ここにある。

 似合う服も、ふさわしい仕事も、全て、身体を基準に、考えたらどう?

 せっかく、考える力を、授かったんだからさ。

 ふんなおー。

 はいはい、ただ今。

 ベッドの上、こっちへ来いと、呼びつける声に、立ち上がり、急いで駆けつけたところ。

 まーわ。

 かゆいので、搔きなさい。

 かしこまりました。

 うやうやしく拝命し、隣へ腰掛けさせていただいて、青緑色の毛皮を、指の腹でマッサージです。

 ウェブマガジンの契約コラムと、noteの無料のひとりごとと、心の持ちようが、あまりにも違うので、どうしたものかと悩んでいて、ふと、どちらも、僕が書いているんだよな。

 正確に言えば、僕の身体が、MacBookを使って、文章を作っているんだよな。

 題材が何であれ、やっていることは、同じ。

 画面に向かって、キーボードを叩いているだけ。

 なんだ。

 有料か、無料か、囚われる必要なんて、ないじゃないか。

 文字数とか、テーマとか、内容の方に、すなわち、頭の中のことに、ずいぶん、比重を置きすぎていた。

 身体は、いつだって、書いていたのに。

 これからも、命ある限り、書いていくだろうに。

 読者の反応を気にするのは、あくまでも、頭であって、身体にとっては、そんなこと、どうでもいい。

 書ければいい。

 炬燵にあぐらで、毎日、とつとつと。

 それが、物書き。

 忘れていた。

 僕が、書いてるんじゃない。

 身体が、書かされているのだ。

 誰に?

 言葉に。

 ぬふーん。

 ぐふーん。

 気持ちよく喉を鳴らして、僕の膝に登ってきて、ぽんぽこお腹をむき出しにする愛猫に、くく、可愛い。

 めろめろになりつつ、せっせと搔いて差し上げます。

 勤務先を解雇になったことが、僕にとっては、生涯最大のショックだった。

 ちょうど一年経った今、思い起こしても、衝撃は、色褪せない。

 刺された、のではない。

 それだったら、死んでいる。

 死んでいれば、いっそ、楽だった。

 殴られたのだ。

 後ろから、不意に。

 傷跡が、大きなあざとなって、いつまでも、痛み続ける。

 しかも、そのあざは、自分では見えない。

 どれほどのダメージだったのか、未だに、測りきれていない。

 時折、鏡に映して、のぞこうとはするものの、うまく全身が映る鏡を、持っていなくて、部分ずつしか、うかがえない。

 比喩ではない。

 頭の中まで、透かし見られる機械があれば、間違いなく、僕の背中には、巨大なあざが映るはず。

 頭と、身体は、別ではない。

 あまりにも、ひどいショックを受けると、身体も、実際に、深傷を負う。

 物理的な傷と同様、完治までには、相応の手間と、時間がかかる。

 いつまた、後ろから、殴られてもおかしくはない。

 伊勢さんとお仲間が、決して、王侯貴族のごとき経済状態にあるとは思えないので、ウェブマガジンの経営がうまくいかなくなってきたら、まず真っ先に切り捨てられるのは、おそらく、部外者である、僕。

 決して、失態を見せないよう、気合を入れて、原稿を上げないと。

 身構えながら、コラムを書けば、それは、消耗するに決まっている。

 消耗すればするほど、傷の治りが遅くなる。

 遅くなればなるほど、ますます、身構える。

 負の連鎖。

 にふーん。

 るふーん。

 ぽさぽさの毛皮を、撫でて整えつつ、小さくため息をつきます。

 多分、僕は、本当の意味で、フリーランスになった方がいい。

 具体的には、自分で自分に給料を支払う、経営者に。

 自分の食いぶちは、自分で稼ぐ。

 そうすれば、もはや、突然解雇される恐れはない。

 発作的に、自殺を試みる可能性はあるけれど、それは、この可愛すぎる愛猫が、なんとしてでも、止めてくれるはず。

 起業、するか。

 物書きとして。

 まずは、noteライターであることから、始めよう。

 ひとりごとの連載が、物書きとしての、僕の身体。

 もともと、器用に、あちこちに顔を売れるタイプではないので、とにかく、ひとりごとに、全集中。

 無料は、変えない。

 毎日書くのも、やめない。

 とすると、僕がお金を得るには、…どうすればいい?

 それを、書いて、考える。

 起業の過程を、ひとりごとに書けば、自分の記録にもなるし、どなたかの参考にもなる。

 頑張ろう。

 あざを背負って。

 ぶふーん。

 なふーん。

 いつもの午後に、わずか、未来が混じりました。それでは、また。

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