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上村元のひとりごと その478:普通

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 どうしても、自分を特別だと思いたい。

 そういう時は、たいてい、目の前のストレスフルな状況から、目を逸らしたい時です。

 この頃は、ありがたいことに、仕事がわびしめなので、そこまで追い詰められることはなくなりましたが、会社員時代は、若かったせいもあって、結構、ひどかった。

 僕の思い描く、特別な自分は、パターン化していて(この時点で、もう、特別ではありませんね)、多くは、隠れた才能が開花する、『みにくいアヒルの子』タイプをとっていた。

 しかも、その才能というのも、例えば、ペットボトルの蓋を外す天才、とかではなく、大勢の人に注目され、名誉と大金が与えられ、引きも切らない執筆依頼で嬉しい悲鳴、といった、仕事での成功に、ほぼ限られていて。

 我ながら、見上げた勤労意欲で、そこだけは、褒めてもいいかな。

 宝くじで高額当選して、しばらくの間、左うちわで暮らす自分、なんて、妄想にも思わなかったもの。

 いずれにせよ、特別とは、他との比較で成り立っていて、決して、自己完結できない。

 自分で自分をすごいな、と言っているだけでは、特別ではない。

 外部からの賞賛が、欲しいのです。

 ぬふー。

 よじよじ。

 ばらばらばら。

 むふー。

 よしよし、よく出たね。

 床に置かれた、ホーローのボウルによじ登り、大きなおしりをはめ込んで、気持ち良く、こんぺいとうをばらまいて。

 すごいでしょう、と胸を張る、トイレトレーニングばっちりな愛猫の、まん丸い頭を撫でてやり、ピンク色の粒を一つつまんで、こりこり。

 うん、美味しい。

 ぶふー。

 そうでしょう、とうなずいて、とてとてとてとて。ちりんちりん。

 なわばりの見回りに出かける後ろ姿を見送って、残りの砂糖菓子を、揃いのホーローのタッパーに回収です。

 ミントみたいに、素直に、よくやったから撫でてくれ、と言えればいいけれど。

 あいにく、僕の他に、この部屋に、人間はいない。

 ぬいぐるみの猫に、賞賛を要求しても、ぷいっ。

 あっけなく目を逸らされ、愛しのピカチュウのもとへ去られてしまうのは、経験済み。

 ため息をついて、炬燵に座り直し。

 正面の壁、ドーベルマンの肖像を見つめて、エゴと社会性のせめぎ合いについて、考えます。

 何でも自分の思い通りになるとは、さすがに、信じていない。

 しかし、無私の奉仕を主とする境地に、残りの人生をかけて、到達できるとも思えない。

 となると、自分の我がままは保持しつつ、社会から爪はじきにされない程度に、妥協して、暮らしていくしかない。

 それって、ものすごく、普通じゃない?

 十把一からげ、有象無象の烏合の衆の、仲間入りがしたいの?

 とんがっていた若さの名残りが、今なお、耳の奥に響きます。

 うん、そうみたい。

 僕ね、やっぱり、普通がいいんだ。

 誰かと比べて、ってことじゃないよ。

 自分の内側に、あんまり軋轢がなくて、今日もまあ、頑張ったよな。

 至らないところも多いけど、それなりに、やるべきことはやってるし。

 貧乏だけど、収入ゼロでもないし。

 普通に過ごせたと、言っていいんじゃないかな。

 ありがたいことです。

 明日もまた、ほどよく頑張ろう。

 寝る前に、ミントに顔面を制覇されながら、そう思えたら、上出来。

 この頃は、そういうふうに、考えている。

 たまには、誰かに褒めて欲しいなと、思わなくもないから、そういう時は、noteの、ダッシュボードを眺めるようにしています。

 読んで下さる方、スキを送って下さる方、心より、感謝申し上げます。

 これからも、あなた方の存在を励みに、日々、普通に、書き続けて参ります。

 皆様に、たくさんの幸せが訪れますように。それでは、また。

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