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上村元のひとりごと その483:ツボ

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 僕が持っているものって、何だろう。

 失ったものなら、すらすらと答えられるのに。

 肝心の、今ある長所、いいところ。

 そういうものに、全く、目を向けてこなかった。

 自分で自分を正確に見定めるのは、とても難しい。

 近しい他人に訊くのが、一番なんだけれど、ねえ、ミント。

 あーお。

 僕の持ち味って、何かな?

 しーん。

 ぷいっ。

 とてとてとてとて。ちりんちりん。

 …ですよね。

 すみませんでした。

 ため息をついて、お散歩に出かける大きなおしりを見送って。

 猫の手も借りたいほど、今、忙しいわけではない。

 ならば、ここは一つ、じっくりと、僕の人格を構成している、重要ポイントについて、自力で突き止めてみてはどうだろう。

 物書きとして、僕が持っているものは、何なのか。

 とりたてて、専門的な知識はない。

 論旨を組み立てる技術もない。

 …ないものしか、出てこないな。

 あるものは、何?

 とてとてとてとて。ちりんちりん。

 むふっ。

 ぶっきゃー。

 床に転がっている、愛しのピカチュウを発見し、一目散に飛びついて、ぶったり蹴ったり、愛情の行き過ぎた乱暴を働く、やんちゃな愛猫を、ぼんやり眺め。

 これ、かな。

 気がつくと、ぼんやりしていること。

 いいものかどうかはさておき、確実に、僕の特徴の一つではある。

 明確な意志を持って、書き始めても、途中でぼんやりするものだから、文章の結末が、思わぬところへすっ飛んでいく。

 それをまた、きれいにまとめることが、できないんだよな…って、いかん。

 できないことは、言わない。

 まとめられない、というのを、言い換えれば、常に、オープンエンド。

 次へ次へと、繫がっていく。

 そこでまた、ぼんやりして、ますます、わけのわからない方向に行ってしまって。

 書くことが、終わらない。

 いつまでも、続けていられる。

 むっふー。

 るっふー。

 あぐあぐ。

 かじかじ。

 ぶきゃきゃきゃ。

 ピカチュウのしっぽをかじって、ご機嫌なミントも、ほぼ毎日、はたから見ると、同じようなことをしているけれど、実に、楽しそう。

 楽しいのが、いいよね。

 といっても、僕は、あんまり、感情を表に出すのが得意では…ってことは、ええと。

 誰をも巻き込まず、一人で楽しむことが、できるんだ。

 これも、大事な素質の一つ。

 あぐあぐ。

 ぎぬぎぬ。

 ぐいー。

 びっつん。

 ごっ。

 …。

 ぬんぐわもがぎじゃまがー。

 しっぽを引っ張りすぎて、口から外れ、勢い余って、のけぞって、ベッドの縁に、後頭部を強打して。

 痛みと驚きにぶち切れる、おまぬけな愛猫に吹き出して、立ち上がり。

 ぶんぶん逆立つ青緑色の毛皮を、抱き取って、撫でてあやします。

 ミントに甘いのも、ツボかな。

 いくら有能でも、冷たい男には、なりたくないんだ。

 ぼんやりで、孤独で、猫好きで。

 愛猫と同じく、いや、さらに間抜けな物書きとして、どうにか、やっていきたいと思います。それでは、また。

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