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上村元のひとりごと その458:カウンセリング

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 怖いのです。

 突然、失うことが。

 父も、ネット機器たちも、急に、いなくなってしまって。

 以前から、入院していたり、接続が悪くなったり、してはいたけれど、こんなにあっさり、会えなくなるとは、思わなかった。

 いや、どこかでは、思っていたのかもしれないな。

 ずっと、恐れ続けて、いざ、現実に、そうなって、本当に、怖かった。

 今、一ヶ月経って、ようやく、少し落ち着いてきたかな、という頃。

 久しぶりに、ものすごいパニックを起こしました。

 とにかく、暑い。

 胸から上が、暑くてたまらず、息が上がり、脈が速くなる。

 加えて、怒濤のような、巨大な不安感が押し寄せて、もう、駄目だ。

 とても寝ていられず、明け方、がばっと飛び起きます。

 ふんむにゃーも。

 僕の顔面にしがみついて、熟睡している愛猫ミントは、さすがの落ち着き。

 目覚めこそしないものの、寝言を立てて、ますます、ぎゅうとしがみついてくる。

 …もしかして、暑いの、このせい?

 いやいや、ミントが来る前から、時折、この発作は起きていた。

 とりあえず、エアコンのスイッチを入れ、乱れる動悸をなだめます。

 ホットパニック、と、個人的には呼んでいますが、正式に、病名の付く症状なのかどうか、よくわからない。

 少し収まって、そろそろと、横になり。

 なるべく、力を抜いて、自分に語りかけます。

 カウンセリング、しようか。

 うん、と、返事のようなもの。

 目をつむり、ぴーぷす、ぴーぷす。

 愛猫の、元気な寝息に呼吸を合わせ、できるだけ、穏やかに始めます。

 先月は、大変だったね。

 父さんのことは、かなり痛いから、もう少し、そっとしておくとして、ネットの不具合問題だけ、見ていこう。

 Wi-Fiが故障したことで、これまで、がんがんに使っていた、iPadと、MacBookが、あてにできないことが判明し。

 あまり使っていなかった、iPhoneに、いきなり、全面依存しなければならなくなって、動揺した。

 また、iPhoneまで、壊れたら。

 あるいは、料金プランをオーバーするような、使用量になってしまったら。

 怖くて怖くて、いてもたってもいられず、新モデルに機種変更すれば安心だと思って、空き時間全てを、検索に費やして。

 折からの熱波と相まって、頭だけに、血が集まった状態になり、身体が、悲鳴を上げて、結果、飛び起きる羽目になった。

 言ってごらん。

 なんで、そんなに、怖いの?

 問題は、多分、iPhoneそのものにはない。

 パニックになるほど、急いで機種変更したかった、真の理由は、何?

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 しばし、黙って、答えを待ちます。

 辛抱が、肝心。

 自分のことであっても、簡単に、わかった気になってはいけない。

 聞くのです。

 確かな本音を、はっきりと。

 …父の死を告げる電話を、このiPhoneで、受けたから。

 どっと、涙があふれます。

 いけない、ミントが、濡れてしまう。

 わかっているのに、止まらない。

 もう二度と、思い出したくない。

 あのね、死んだから。

 帰って来なくていいよ。

 自由にね。

 確かに、母は、そう言った。

 母は、知っていた。

 ずっとずっと、小さい頃から、父と僕が、あまりうまくいっていなかったことを。

 忘れなさいと、暗に言う、スーパークールなその声が、iPhoneを見るたび、繰り返し、よみがえって、それで…。

 わかったよ。

 機種変更、しよう。

 つらかったね。

 自分で自分を慰める、秋も間近の早朝です。それでは、また。

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