見出し画像

上村元のひとりごと その452:迷わず

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 はたと、気づきました。

 僕が、自分の我がままで、パソコンを使わないと決めたことは、果たして、仕事相手であるウェブマガジンの編集部に、迷惑になったりしないだろうか。

 スマホで書いた原稿では、受け取れないと断られたりしないか。

 そもそも、パソコンなしで、インターネットライターを名乗っていいのか。

 次々に、不安が押し寄せて、たまらず。

 ウェブマガジンの経営陣の一員である、知人のカメラマン、伊勢さんに、相談LINEを送ります。

 このところ、iOSでの執筆を試みているのだけれど、編集の際、不都合はないでしょうか、と。

 どふふーん。

 ぐふふーん。

 炬燵にあぐらの、膝の上、愛猫ミントが、お気に入りの、西武ライオンズのバスタオルにじゃれついて、ご機嫌に、喉を鳴らします。

 待つこと、十数分。

 丁寧な返信が届きました。

 貴殿がいかなるファイル形式を使用されようとも、当方、確実に受理するシステムを備えているとの自負があるゆえ、ご心配には及ばない。

 そのうえで、不躾を承知で申し上げるのだが、貴殿、そも、MacBookは、いまひとつ、手に合わない。

 でき得るならば、iPhoneで執筆したい旨、以前より、折に触れて、こぼしておられたと記憶している。

 手に合わぬ道具を使い続けるのは、生活者としても、表現者としても、誠に勿体のない話。

 どうか、望みのまま、お志、貫徹していただきたい。

 差し出がましい知った口が、貴殿のご一助になれば、幸甚の極みである。

 …言ったっけ?

 そうだったの?

 愕然と、正面の、ドーベルマンの肖像を見つめます。

 覚えていない。

 いつだろう。

 まだ疫病が流行する前、伊勢さんと、会社帰り、飲みに行った時、かな…。

 にふふーん。

 むふふーん。

 ごろごろと、気持ち良く寝そべる愛猫の、ぽんぽこお腹に、手のひらを当てて。

 天板に置いたiPhoneを、まじまじと、眺めます。

 そうだったのか。

 そんな昔から、僕は、スマホで書きたいと言っていたとは。

 夢、叶ってるし。

 原稿、iPhoneで、打ってるし。

 なんだ。

 それで、いいんじゃないか。

 物書きとは、すべからく、パソコンに向かうべし、なんて、ありもしない縛りを拵えて、がんじがらめになって、苦しんでいたなんて。

 ごめんよ、僕。

 伊勢さん、かたじけない。

 このご恩、一生、忘れません。

 『3月のライオン』の名場面、ひなたさんに、永遠の忠誠を誓う桐山くんの気分で、背筋を正し、真剣に、礼文をしたためます。

 貴重なお話、本当に、ありがとうございます。

 おかげ様で、決心がつきました。

 僕は、これから、iPhoneライターを名乗ります。

 スマホを開けば、いつも、そこにある。

 いつ、どこで、どんな順番で、読んでもOK。

 水や、空気や、太陽の光。

 そんな文章を、僕は、書きたい。

 迷わずに、進んでいきます。

 重ね重ね、御礼申し上げます。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 気持ち良さが高じて、熟睡してしまった愛猫を、バスタオルで、くるみ直し。

 何度も読み返して、送信、完了。

 これで、もう、後戻りはできません。

 noteライター、兼、インターネットライター、かつ、iPhoneライターとして、上村元は、書くのです。それでは、また。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?