上村元のひとりごと　その448：ありきたり

　こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

　本当は、スマホは、入り口なのです。

　いろいろな機能が、さしあたり、そこそこ使えて、さて。

　その中から、どれが好きで、どこを極めていきたいか。

　選ぶことに、使い手の個性が表れる。

　ある人は、写真にこだわり、ある人は、音楽にのめり込み、ある人は、動画に熱くなる。

　自然と、同じ機種でも、使用されるアプリの種類が変わってきます。

　誰のでもいいスマホが、自分のものになっていく。

　素敵なプロセスです。

　んふーん。

　くふーん。

　ベッドの上、ぼんやり座る膝に、愛猫ミントが、ご機嫌で、丸まっています。

　残念ながら、僕と一緒にいて、嬉しくて、喉を鳴らしているのではない。

　大好きなバンドの曲に、うっとりしているだけ。

　いつもの光景の、しかし、いつもと違うところは。

　再生機が、iPadではないこと。

　良かれと思って、MacBookに、CDアルバムを読み込んで、iPadのMusicアプリと同期させたら、既にiTunes Storeで購入済みの曲が、再ダウンロードされてしまい。

　ライブラリ、ぐちゃぐちゃ。

　同じ曲が、三曲ある。

　これはもう、ミントはもちろん、胸の奥、深海の底に棲む、謎の生物、カイにも不評で。

　このところ、二人とも、あまりiPadに寄りつかなくなった。

　仕方なく、僕がつききりで、一曲ずつ、選んで再生していたのだけれど、やはり、どうにも、面倒。

　修復を試みるも、一度ダウンロードした音源は、リセットでもしない限り、ライブラリから消去できそうもない。

　…やるか。

　ため息をついて、覚悟を決め。

　炬燵の上、積まれている電子機器を、一掃することにしました。

　iPad、MacBook、Windowsのノートパソコンをまとめて、接続ケーブル、有線ヘッドホン等の付属品とともに、パソコンデスクの引き出しにしまいます。

　クリーナーをかけた天板に、原稿用紙、下敷き、シャープペンシル、消しゴム、手帳を並べ。

　最寄りのイトーヨーカドーに入っている電器店で、安くもなく、高くもない、ロングバッテリーの、ワイヤレスヘッドセットを買ってきて、iPhoneと同期させ。

　そう、全ては、スマホに集約された。

　執筆も、打ち合わせも、家族とのくつろぎも。

　何もかも、スマホ一台で、事足りる。

　僕にとって、iPhoneは、入り口ではない。

　着地点でした。

　ぬふーん。

　むふーん。

　画面が小さくなったことによって、かえって、拡大サイズでミュージックビデオが観られるようになり、ミントは、ご満悦。

　ぽわ。ぽわ。

　ライブラリを同期させなかったのが幸いして、元のまま、デジタル音源のみを楽しめるようになり、カイも、沈静化。

　持ち運びも楽になって、四六時中、炬燵に張りついている必要がなくなった。

　スマホオンリーライフに、あっという間に、完全移行。

　…昔の僕なら、こんなありきたりな電子機器、それだけなんて、男がすたる。

　パソコンも、タブレットも、スマートウォッチも、音楽プレイヤーも、全部所有して、用途に応じて使い分けることが、ステータスだと思い込んでいた。

　そんなことはなかった。

　ありきたりが、実は、何より強い。

　各種電子機器の手入れに振り回され、便利のつもりが、依存の泥沼一直線になるくらいなら。

　真っ当に、正面きって、ありきたりで生きたい。

　誹る人も、もはや、誰もいないのだから。

　すふーん。

　るふーん。

　iPhoneに乗り上げて、すりすりと、ほっぺたを寄せる愛猫の、ぽさぽさの、青緑色の毛皮を、微笑んで撫でます。

　遅ればせながら、僕も、スタートラインに立てたみたいです。それでは、また。