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上村元のひとりごと その447:サイズ

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 書き手が楽をすると、書く物の質が下がる。

 そう信じて、これまで、あえて自分に苦行を課していた部分も、なくはなかった。

 でも、そうではない。

 そもそもの、楽をする、というくだりに、早とちりがあった。

 例えば、今、僕は、インターネットの不具合をきっかけに、原稿用紙に手書きした文章を、iPhoneに打ち込むことで、このひとりごとを公開しています。

 ものすごく、楽になったのです。

 背中に羽が生えたよう、という表現が、まさに、ふさわしく。

 文章を作ることと、文字を入力することを、分けたことによって、隙間が開いた。

 息ができる。

 パソコンの画面に向かって、電力を消費しているな、と後ろめたくなりながら、焦って、手を急かさなくてもいい。

 大変、楽です。

 ふんまおー。

 膝の上、くつろぐミントも、ますます、ご機嫌。

 さて、これは、楽をしていると言えるでしょうか?

 …どうかな。

 作業量としては、結構、増えた気がする。

 原稿用紙もたくさん使うし、何より、スマホって、大量の文字入力に、向いていない。

 タップにせよ、フリックにせよ、一時間も打ち続けると、指、へとへと。

 しばらく、休憩が必要なくらい。

 書き手として、身体は、楽をしていない。

 しかし、とても、気が楽。

 さらには、書く物も、特段良くなりはしないものの、急激に悪くなった、ということもない。

 つまりは、とんとん。

 パソコンで書こうが、スマホに打ち込もうが、書き手の実力に、変化はない。

 ならば、気が楽な方が、いいんじゃない?

 楽になる、と、楽をする、は、別。

 スマホへの打ち込みは、正直、きついので、楽をした、すなわち、手抜きの文章だと、打つ気にならない。

 こんなつまらない文章を公開するために、大事な手を、へとへとになんかしたくない、と思ってしまう。

 ふんまやなー。

 だから、手書きの際は、本気です。

 愛猫にじゃれつかれ、どいていただこうとするも、むくれられ、かえって、しがみつかれ。

 仕方なく、青緑色の、大きなおしりの下に、シャープペンシルを突っ込む勢いで、手を動かすしかない。

 しかも、なるべく、リズミカルに、愛猫の注意を引きつけておくように書かないと、原稿用紙にどか乗りされた挙句、気持ち良く、熟睡される。

 というわけで、あまり、長い物は書けない。

 おおよそ、40分くらいで仕上げると、ミントも、にこにこ、僕も、安心。

 面白いことに、この分量は、パソコンで書いていた時と、ほぼ変わらない。

 手で書くことによって、ひとりごとが、短くなりすぎたり、逆に、いくらでも書けてしまったりしないだろうか。

 案じていたのですが、杞憂だった。

 むふーん。

 ぐわっ。

 …あっぶな。

 出し抜けに、大口を開けて、シャーペンごと、指をかじろうとした愛猫を、すんでのところでかわして、冷や汗をぬぐいます。

 適正なサイズは、そう変わらないようです。

 ずらすものがあるとしたら、それは、欲。

 打ち込みがしんどいから、文字数を減らそうとか、ミントを寝かしつけてから、じっくり書こうとか、余分な思惑が入ると、途端に、崩れる。

 太ったり、痩せたりしてしまう。

 もしかして、ダイエットにも、当てはまるかも。

 ふんわしゃー。

 ぎぬぎぬ。

 はいはい、もうちょっとだからね。

 一緒にベッドで遊んで欲しくて、Tシャツの袖をくわえて引っ張る愛猫をなだめつつ、必死で、ゴールを目指します。

 とにかく、書くこと。

 物書きとして、自分にふさわしい、ベストなサイズをつかむためには、物理的に、手を動かさなければ。

 書いて、書いて、書き抜いた果てに、ぽっかりと、楽になるのです。それでは、また。

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