上村元のひとりごと その420:トレードマーク
こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。
穴の空いたエコバッグと、カビの生えた通勤ショルダーに、別れを告げて。
ミント専用、黄色いエコバッグだけが、残されました。
手持ちのカバン、なし。
…買い物、どうしよう。
ぬふーふ。
ぽたぽた。
にこにこ。
マイバッグをくわえて、ずるずると引っ張ってきて、散歩に出かけなさい。
もしかして、前世は犬なのでは、と疑うくらい、お出かけ大好きな愛猫に、ため息をついて、バッグにお詰めして、いざ。
鍵と、財布と、iPhoneを、ポケットに入れて、コンビニへ。
ついつい、エコバッグ、とうたうポップに、目を引かれて、買おうかな。
心揺れるものの、いや、駄目だ。
ここで、適当なものを選んでは、また、穴が空く。
これだ、というものが見つかるまで、多少の不自由は、我慢。
スープと、おにぎりを、手で持って、ふんつちゃ、ふんつちゃ。
せっせと回転を繰り返す愛猫を脇に、スーパーへ。
温泉卵と、海苔の佃煮と、味海苔と、するめと、玉ねぎと、米。
…無理でしょ。
どうするの、元?
なんとかなる。
なんとか、する。
悲壮な決意で、会計を済ませ、ごめん、ミント。
ちょっと、入れさせて。
ぬんちゃー!
ハイテンションで、鷹揚な愛猫に、頭を下げて、割れ物を預かっていただき、米袋の上に、その他を乗せて、落とすな、落とすな。
呪文のように唱えながら、汗だくで、帰宅。
これほど、カバンのありがたみが身に沁みる機会も、そうはないもの。
昼ご飯もそこそこに、MacBookで、検索をかけようとして。
…いや、待てよ。
んふーん。
みににに。
てぃるるる。
膝の上、満腹で、気持ちよく喉を鳴らす愛猫の、ぽさぽさした、青緑色の毛皮を撫でながら、長考です。
ネットショップも、実店舗と同じ。
むやみに歩き回っても、目当てのものは手に入らない。
それどころか、情報の渦に飲み込まれ、消耗し、どうでもよくなり、手近な安物を購入して、選んだつもりになってしまう可能性が高い。
たかがエコバッグと、侮るなかれ。
書く姿勢にすら、最終的には、繫がってくる。
物書きとして、独立するつもりで、このところ、ずっと方法を模索し続けている、その話と、これは、無関係ではない。
本当に、何かを選んだら、他の選択肢は、自動的に、消えてなくなる。
そもそも、選択肢があったという記憶すら、抹消される。
ある意味では、恐ろしい行為なのだ。
買い物にせよ、独立にせよ、トレードマークを掲げることは、生半可な覚悟ではできない、エネルギーの要る作業。
全身全霊を尽くして、どうにか、形になる、それくらい、大変。
どんどん、貧しくなっていくのだから。
今、目の前にある、無数の選択肢が、最終的には、一、あるいは、ゼロになってしまうのだから。
そう、それだけ力を注いでも、決まらない、ということもあり得る。
カバンが手に入りませんでした。
お金を稼げませんでした。
…そうなっては、文字通り、死。
ぴーぷす、ぴーぷす。
元気に寝落ちしたミントのためにも、なんとしてでも、トレードマーク、見つけなくては。
と、なると。
どこで買えばいいか、そこから、選択は始まっている。
残念ながら、初めから、完全にオリジナルのみで、持ち物を構成できる人はいない。
どんな文章も、先人たちによって、使い尽くされ、磨き抜かれた、共用品。
これは僕の独創です、なんて、若造が、自信満々でこと挙げて、ひとりよがりに陥って、結果、売れないのは、当たり前。
ならば、たくさんある文章の中から、品物の間から、自分にも、使えそうだ。
これから、長い時間をかけて、使っていきたい。
思えるようなものを、選んで、代価を払って、拝借し、大事に、使い込んでいくより他にない。
Amazonで、買うの?
…書籍や、CDといった、コンテンツが重要な商品はともかく、カバンは、物体そのものが、命。
さすがに、大手ネット物販店で、一生ものを探すのは、違う気がする。
かといって、聞いたこともないメーカーや、経済観念を根底からひっくり返さなければならないハイブランドに、すり寄っていくのも、なんだか、変。
知っているはず。
僕の知識の中に、すでに、答えはあるはず。
よく知っているものでなければ、使うことはできない。
どんな文章が書きたいか?
キャンバスのような。
丈夫で、高価すぎず、長く保って、汚れても、すり減っても、へっちゃら。
パーティーから、泥仕事まで、なんでも対応できます。
それだ。
探そう。
上質な、布のカバンを。
ぴーぷす、ぴーぷす。
知っている限りの、キャンバスバッグメーカーのサイトに、アクセスし。
製品を、こつこつと、比較検討します。
ふさわしいものは、必ず、あるのです。それでは、また。
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