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1分_夕方ショートショート_4『沼に立てば』

少年は沼にハマっている少女を見つけた。
助けなければとジャンプして飛び込んだ。
少女は、バカ、なんで助けを呼びに行かないの、と言った。
少年もそう思ったが、もう遅かった。
2人は徐々に沈んでいく。
このままでは2人とも死んでしまう。
少年は少女を肩車することにした。
少女は躊躇したが、少年の強い眼差しに、同意し、肩車してもらった。
少女が乗ったことで沈むスピードは一気に加速した。
このままではまずいと、肩車ではなく肩に立ってもらうことにした。
少女は肩に立った。
少年は首まで埋まってしまい、顔を上に向けた。
少女はスカートだった。
だがこれは不可抗力だと自分に言い聞かせた。
少女は怒った。
少年は目をつぶった。
自分はこの子のための杭なのだ。
これで死んでも悔いなしと思った。
顔が埋まりそうになったその時…少年は固い地面に足が着いた。

その後2人は他の人に見つけられ、無事に助かった。

後日、見つけた人は新聞記者にインタビューされ、
「人が沼に立っていて、最初は沼の女神かと思いました。」と言った。
少年は確かにと思った。

(終わり)






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