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全身麻酔で親知らずを抜いた話

経験済の方も多いでしょうか。そう、コロナは治っても体調は暫く戻りません(個人差はありますが)。私の場合は休火山と高を括っていた親知らず(左奥の埋伏タイプ)の活動が始まってしまい、どうにも生活に支障をきたすことから、もっと先だと思っていた抜歯を決意しました。

抜歯手術は、歯根が下あごの神経に近接しており後遺症が残る可能性もあったことから、これをなるべく抑える目的で全身麻酔で行っています。
一見大袈裟とも思える全身麻酔での親しらず抜歯。局部麻酔での抜歯に比べ費用も時間もかかるため本当に必要かと当初は判断に迷いましたが、判断の助けになる情報は少ないものです。
そこで、今回は全身麻酔での親知らず抜歯のリアルを共有します。同様の迷いの中にある方、今後そうなりそうな方などの参考になれば幸いです。


全身麻酔による抜歯を選択した経緯

抜歯した親知らず(智歯)は、写真の赤丸とおり真横に生える埋伏タイプでした。以下では埋伏智歯と呼びます。
手前の奥歯が押されて(コロナ罹患後に)痛みが出ていました。近所の掛かり付け歯科で痛み止めの注射を打ってもらい凌ぎます。

抜歯前の左下埋伏智歯の状態画像
抜歯前の左下埋伏智歯の状態

掛かり付け歯科からの紹介を受けて総合病院の口腔外科を受診すると、埋伏智歯の歯根が下あごの神経に(CTスキャンの結果)接触しており、神経を傷つけて後遺症が残る可能性を下げるために部分麻酔ではなく全身麻酔での抜歯を薦められました。

部分麻酔なら1時間程度で5000円程度、全身麻酔だと入院(1日)が必要で、費用も10万円弱と高額でした。下埋伏智歯の抜歯における部分麻酔は効きづらいケースがあり、その場合は痛みで患者が動く中での抜歯となるため神経を傷つけ易いという歯科医の説明に納得し、極力後遺症を避けるために全身麻酔での抜歯手術を受けることにしました。(過去に上智歯を局部麻酔で抜歯したことがあり、その際に麻酔が効き辛かった経験あり)

受診した総合病院は毎週のように智歯の抜歯手術が行われており、順番待ちと仕事のスケジュールから手術は2か月後と定めました。

なお、折角全身麻酔までやるのだからこの際に他の親知らずも抜いてしまおうと考え、現状特に痛みはないが今後その可能性が否定できない右上埋伏智歯(写真赤マル)も同時に抜歯することにしました。術後はむしろこちらで悩むことになるとも知らず・・・。

抜歯前の右上埋伏智歯の状態画像
抜歯前の右上埋伏智歯の状態

抜歯手術とその後の経過

手術の体験談

手術1か月前には、全身麻酔に先立ちマウスピースづくりと全身状態把握のための術前検査を受診しました。全身麻酔時は呼吸ができないため気管に人工呼吸のための管を挿入しますが、その際に上の歯の損傷を防ぐ目的でマウスピースを作ります。また、術前検査は胸部レントゲン、心電図、血液検査などです。入院前にはコロナの検査もありました。全身麻酔での抜歯ではこのような前準備の時間と費用が掛かってきます。

手術当日は朝から入院し手術に備えます。
手術は11時からと告げられ、その30分前には手術着を着て手首に点滴や麻酔のための針を刺すといよいよという感じになりました。少し遅れた正午ごろに呼ばれ、歩いて手術室に入り手術台に乗ります。

手術台は支えがないと両手がだらりと投げ出されてしまうほどの狭さ。手術担当医が患者の近くまで寄れるように作られているようです。心拍センサなどが取り付けられ、心拍音が手術室全体に響き渡ります。

次いで麻酔注入の合図と共に酸素マスクが口と鼻にあてがわれました(気管への管挿入は未だ)。その後、麻酔の効果で意識が失われていきます。
まさに入眠して夢をみるという状態になりました。

その後、手術室看護師の方から名前を呼ばれて覚醒します。人工呼吸から自然呼吸に移るこのタイミングは一瞬ですが、窒息寸前の苦しさがありました。もし事前に何らかの対策ができるならと思った次第。

その後は手術台としてのストレッチャーで入院病室に運ばれてベッドに乗せ換えられ、麻酔の影響もあり1時間程度は睡眠状態(自然呼吸)にありました。2時間後には水飲み、トイレが問題なくできるようになっています。麻酔が切れてからは痛みが出る場合もあると聞いていたものの、点滴に痛み止めが含まれていたからか、大きな痛みは出ませんでした。

手術当日の晩はお粥と副菜のみの質素な病院食をいただきました。やたらと鼻水が出てきたので、(強いのはダメと分かっていたため)抑えめに鼻をかむと鼻と歯の上の空間(上顎洞)にも鼻水が回りこんでいるようなちょっとした違和感を感じていました。

翌日は朝一番に主治医に経過良好を確認いただき、翌週の抜歯の日程を予約して退院となりました。実は初めての入院だったのですが、病院とはこんなに至れり尽くせりかと感謝を念を抱きつつ帰宅したことを覚えています。

抜歯後の経過(ポイント)

親知らずは抜歯後が大変。
ネット検索でもこの部分は動画も含め情報は多いですので、ここではポイントだけ箇条書きで共有します。

  • 術後は痛みと細菌感染を薬で抑えつつ抜歯部(穴)が塞がるのを待つ

  • 抜歯部の血餅が失われるドライソケットにならないように注意する

  • 術後2~4日は顔が腫れて痛みも出るが、1週間も経てば治まる

  • 術後1週間での抜糸後は抜歯部の穴に食べカスが詰まるようになるので、デンタルシリンジなどで毎食後に食べカスを取り除く(これがかなり面倒だった)

  • 抜歯部の穴は2~3か月で塞がる。食べカスの取り除きから解放されるまで3か月程度を要した。

上顎洞炎の発症と対応

ところで、上述のとおり今回は左下埋伏智歯、右上埋伏智歯を抜歯し、左下の方は抜歯後良好な経過を辿りましたが、右上の方は、抜歯部が一部が上顎洞と交通していたようで、抜歯後に細菌感染により上顎洞に膿みが溜まる上顎洞炎を発症していました(確認までに1か月程度要した)。この膿により、上顎洞の部分が痛い、臭みのある鼻汁が出て困るといった症状が出ていたのです。

写真はCTスキャン画像ですが、右側の上顎洞(赤マル部分)には膿が溜まっていることが確認できます。

上顎洞炎の発症(CTスキャン画像)
上顎洞炎の発症(CTスキャン画像)

対応として、一度強い抗生剤を服用してこの膿を(周囲に吸収させるように)無くし、更に長期で弱い抗生剤を飲むことで細菌感染を防ぐよう努めました。抜歯後、上顎洞炎が判明してから実に半年ほどこの症状と向き合っていくことを余儀なくされました。

強い抗生剤で症状が治まっても、また再発するということもありました。食べ物を食べたときに上奥歯に痛みが走ることもあり、虫歯と勘違いすることもありましたが、やはり原因は上顎洞炎と分かり改めて別の強い抗生剤に切り替えたこともありました。

上顎洞炎が慢性化すると厄介だと心配していましたが、有難いことにこれら抗生剤の継続服用により最終的には症状が治まっています。

まとめと諸費用他

まとめ

親知らず抜歯で全身麻酔とは大袈裟と考えていましたが、後遺症の可能性が残るような難しい抜歯を生活の質も確保しながら確実に行っていくという視点では何ら大袈裟ではなく、むしろこの方法が合理的で妥当であると今では確信するようになっています。今では主治医の先生をはじめ関係いただいたすべての方に感謝している次第。
同様の状況でお悩みの方に少しでも参考になれば幸いです。

諸費用他について

  • 当初受診、検査~手術、術後ケア(薬代等)含めトータルで約10万円

  • 医療保険は入院費用のみ給付を受けた
    抜歯目的の手術は残念ながら対象外であった(アフラック)

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