諧謔日記その40:2023年11月19日(日)のきろく

横濱J&Bオーケストラ第28回定期コンサートにピアノで賛助出演したよ。
J&Bは横浜で30年ほど前から活動している社会人ビッグバンドだ。30年ほど前に横浜市旭区周辺に暮らしている音楽愛好家のシニア世代を集めてビッグバンドをやるという行政絡みのイベントがあったらしく、そこで集まって本番を終えた参加者たちが「この1回きりで終わっちゃうのはもったいない」と言って発足したバンドだそうで、バンド名にあるJ&Bは「ジャズ&ブルース」であると同時に「じいさん&ばあさん」でもあるんだとか。
ぼくはこのビッグバンドに大学3年生になるころから7年半ほどピアニストとして所属して大活躍していた。それはもう、ジブンで大活躍とか言えちゃうくらいには活躍していた。

J&Bの独自性のひとつに「専属のアレンジャーがいる」ということがある。バンドが発足するころからずっとトレーナーとして関わっている篠崎秀樹というプロのミュージシャンがその正体だ。彼は演奏家であり作編曲家でもあるのだが、音楽学校で音楽理論や作編曲を教えていたり、自身が主宰するラージアンサンブルで同年代のみならず若手を起用していたりする様は、伝道師のようでもある。J&Bに所属することは、彼の元で習うことに等しいとぼくはおもっていたし、実際、ぼくはここに所属することでプレイヤーあるいはパフォーマーとして、そしてコンポーザーまたはアレンジャーとして多くのことを吸収して育ったわけだ。ぼくにとってJ&Bは修行の場だったし、いまでは故郷のような存在なのだ。
そんなわけで、退団後も力になれる機会があれば進んで手を貸してきた。とりわけコロナ禍突入後はメンバーが減ってしまい継続が困難な状況にあったので、練習用トラック制作や演奏会当日の裏方など、積極的に関わってきた。そして今回、定期コンサートでのピアノを担当することになった。プロのピアニストとして呼んでくれるありがたさ、元気な若手ではなくプロとして立ち振る舞わなければならないプレッシャー、団員にピアニストがいないことへの不安、稽古場に通うことへの面倒臭さ、いろんなことを感じながら引き受けた。

やっと本題です。横濱J&Bオーケストラ第28回定期コンサートで演奏した曲をセットリストに沿ってプレイヤー目線で感じたことなどを記録しておく。ジブンのためにね。

1.Catch Phrase(Steve Brown)
毎年1曲目はBPM200ちょっとくらいの軽快なスウィングをやってます。わくわくしていいよね。そういう嘗てビッグバンドにあこがれていたころのジブンにあった「わくわく感」は忘れられないですね。楽しいことが始まりそう、という気持ちにさせる音楽。そこにピアニストとしてどう関与するのか。そんなことを考えて演奏します。
古典的なビッグバンドのピアノは基本的には何弾いても聞こえません。ほかの楽器の音にかき消されてしまうので。となると、いかにフレーズの合間に音を入れていくかということを重点的に考えることになります。もちろん譜面を見ながら隙間になるところに印をつけるとかしてもいいんですけど、反射神経でやるほうが面白い演奏ができると個人的にはおもっているので、譜面はぜんぜん見てません。コード進行だけ覚えて臨んでいます。そういえば今回は譜面に頼る場面がめちゃくちゃ少なかったきがする。コード進行くらいなら数回合わせれば覚えられるし、過去にやった曲ならちゃんと覚えてるしな。

2.The Queen Bee(Sammy Nestico)
ベイシー楽団のお馴染みのナンバー。日本中の学生ビッグバンドが演奏してるようなバイブルみてぇなネスティコの作編曲で、ぼくも所属期間中に演奏した経験があります。
ベイシーのピアノは「いかに弾かないか」が求められます。さっきもちょっと書いた「隙間に音を入れること」を突き詰めてるひとの原点にして頂点みたいな存在なので、それを演奏するなら同じようにするしかないんですよね。これはいわゆるジャズピアノとはまた違う技術が求められるものだとおもいます。どんなフレーズを弾くかよりもどのタイミングで音を鳴らすかみたいな、まるでサンプラーを叩いてるような、そんなかんじ。
これは個人的にはおもうことがあって、正直弾いていて全く楽しめない時期があったりしました。いまは向き合い方や考え方、立場や人生が変わっているので素直に楽しめます。なんといってもアレンジがほんとうに美しいので、高揚感とか多幸感のなかで合奏に参加しているかんじがします。

3.The Nearness Of You(Hoagy Carmichael)
大好きなスタンダードナンバー。「スターダスト」とか「スカイラーク」と同じカーマイケルの作曲です。それのグレンミラー楽団のカバーでした。さすがグレンミラー、ピアノはマジでぜんっぜんやることありません。ピアノ弾いたことないひとでも参加できるよ。けどめっちゃ好きな曲なので「ジブンならこう弾く」を追求して伴奏してます。
古典ビッグバンドはここが難しいことだとおもう。ベイシーに対する「おもうこと」と同じ話なんだけど、やっぱり古くて偉大な曲ほど単なるコピーを目指すことになってしまいがちだし、そんなことしたってオリジナルに敵うわけがないので良くて劣化コピーなわけです。愛好家ならそれで良いのかもしれないけどぼくは音楽家でありたいので、どこかで作家性を出すことをしなければやる意味がないとおもうのだ。

4.In a Mellow Tone(Duke Ellington)
バディリッチ楽団のカバーでした。アレンジはオリバーネルソンだったかな。オリジナルより先に知ったせいもあるとおもうけどオリジナルより好きなカバーです。そういえばぼくがJ&Bに入ったころってエリントンもベイシーも知らないような奴だったんですよ。でもバディリッチは知ってた。なんでぇ?
この曲も「管の合間にテキトウに弾いてね」みたいな譜面。かなりゴキゲンなナンバーなので、足を組んで口笛吹きながらテキトウに弾いてました。この手のものは聴きに来てくれるお客様よりも先に、演奏している団員を笑わせてやるぞ、みたいな気持ちで弾いています。そして二度と同じフレーズを弾かないことをルールにしています。たまにジブンでも笑っちゃうようなことが弾けたりして。そういうときはだいたい団員も誰から笑ってくれてるので「してやったり」という気になります。

5.Skyliner(Charlie Baunet)
今回のコンサートで唯一の全く知らねぇ曲でした。ゴキゲンそうな顔してコード進行が狂ってるところがちょいちょいあってこわかった。作曲はチャーリーバーネットで、彼の楽団の演奏がオリジナル。どうやら「チェロキー」を世に広めたのがこの楽団らしい。それを取り上げて爆速BPMで演奏して流行らせたのがパーカーってわけだ。勉強になった。
話は逸れるが、ぼくはチェロキーのメロディーとコード進行が好きだ。いまスタンダードとして演奏されるチェロキーは大概がパーカーの影響のもとにありアホみたいな速さで演奏される。速ければ速いほどイカスみたいな世界観。まことにアホらしいとおもう。そうおもってチェロキーをスーパーマリオ64のエンディング曲みてぇなのほほんしたかんじでアレンジしたことがあった。アレンジ書くだけ書いて満足して全く演奏してなかったんだが、今回この曲を通じて知ったバーネット楽団のチェロキーを聴いて「私のやったこと何も間違ってなかったじゃん」という気になれた。なんか救われた気がした。演奏してみたくなってきた。きっとアンケートに「チェロキーが遅い」とか書かれるんだよ。ほんとにそういうこと言ってくるリスナーってどこにでもいるからな。まぁそういうひとに届けば価値だし勝ちだとおもってるので、そういう批判がもらえると「やったぜ」という気になるんですけど。
めっちゃ脱線しちゃった。ほぼ曲の話してねぇ。

6.Danny Boy
グレンミラー楽団のカバーでした。キーがAだったんだけどほんとなのかなぁ、半音高いか低いかだったんじゃないの?という思いが一生あった。これもピアノはポン出しみてぇなのが数回あるだけなので、キレダナーって聴いてるだけで誰でも参加できるのでおすすめ。
やっぱインザムードとか茶色の小瓶ってジャズとか知らんでも絶対どっかで聞いてるじゃん。おれもそういう「なんとなく知ってる」でビッグバンド入ったんだけどグレンミラーは譜面見てびっくりしたのよ、あまりにもやることがなんにもないから。それで改めて聞いて納得するんだよな、なるほど吹奏楽の発展なんだなって。

7.Time Stream(Sammy Nestico)
これもベイシーのナンバーだ。あんまり学バンやアマチュアが演奏してるの聞いたことない気がするんだけど気のせいかな。ミディアムテンポの有名曲群と比べるとかなり難しいから取り上げられづらかったりとかしてるのかしら。
ぼくはJ&Bに入団した年にこの曲をやりました。耳コピして弾いてた合いの手のフレーズもキャッチーでかわいらしくて簡単で、合奏に参加していてすごく楽しかった。ビッグバンドでピアノを弾くことの難しさを感じる場面があまりにも多すぎた新人時代に「演奏する楽しさ」をいち早く実感させてくれた思い出深い曲。っていうのももう13年前の話なんスわ。すごい。最近はなんか「速い曲は難しい」みたいな意識がぜんぜんないので(縦を揃える意識ではなくリズムに乗る意識を持てるようになってきているので)なんの困難もなくただただ楽しく弾けるだけのしあわせな曲でした。

~20分間の休憩~
そういえば今回急遽影ナレをやりました。(賛助なのに!)影ナレっていうのはあれね、開演前とかに「来てくれてサンキュー、携帯切って」とかいうやつね。ぼくは大学時代に舞台の裏方の勉強をしていたので、J&Bでも演奏会当日の裏方まわりを監督することがあり、影ナレも担当の一部にしていました。ナレーションの原稿はいまでも頭の中にあるので、いつでも取り出すことができます。ちょっとした特技ですね。
今回は開演前は生真面目に、休憩時はくだけたかんじで同じ内容を喋りました。くだけVer.は客席からも舞台袖からも笑いが聞こえてきて手応えありました。団員も長くいるひとしかぼくが影ナレやれることはしらないので、宴会のネタになったりしてね。こういうところでも役に立てるとうれしい。

8.Blue Memories In Yokohama(Arr.篠崎秀樹)
いしだあゆみのブルーライト・ヨコハマ、ペドロ&カプリシャスのヨコハマ・レイニー・ブルー、日野美歌の横浜フォール・イン・ラブの3曲のメドレーです。篠崎秀樹によるJ&Bのための書き下ろしアレンジで、3年くらいに1回くらいの頻度で演奏されてるのかな?ぼくも在籍中に2回は演奏してます。原曲の3曲を入団当時の白石は全く知らなかったので慌てて勉強したものでした。(ブルーライトヨコハマしか知られてないじゃん!と気付いたのはずいぶん後になってからでした。)
篠崎先生はアレンジを書くのに参考にした(あるいはパクった)曲を白状するタイプのアレンジャーです。「こんなイントロどうして思い付いたんだ?!」なんて尋ねると、当たり前のように「これのパクリだよ」っていうのを教えてくれるんです。もちろんパクり方に工夫があるので単なる切り抜きではないのですが。これはぼくが篠崎先生から影響を大きく受けているところです。「これでいいんだ」というのを教えてくれました。
それで曲の内容なんですけど、3曲ともぜんぜんストレートアヘッドなジャズじゃなくて、ビッグバンドを使って演奏するファンクとかバラードとか16ビートみたいな趣で、ピアノもガンガン弾くことがあるのでめちゃくちゃ楽しいんですよ。ついつい熱くなっちゃうから、譜面にでっかく「おちついて」ってメモしてあります。けど暗譜してるから見落としちゃうんだ。熱くなっちゃうんだ。

9.Ballad For A Rough Year(Frank Mantooth)
アシュリーアレキサンダーというトロンボーン奏者の楽団のアルトサックスをフィーチャーしたナンバー。作曲はバンドのアレンジャーであるフランクマントゥース。40年くらい前の曲なんだけど、15年くらい前に日本のプロミュージシャンどもがコピバンを結成してCDを出したのがビッグバンドファンや学バンに大ウケして流行った曲です。業界の大手のひとたちが埋もれた名曲を掘り出して現代に伝えてくれるのはありがてぇ話です。けどこれのコピバンみてぇのがいっぱい出てくるのはちょっと面白くねぇんだよなぁ。オリジナルが収録されてるアシュリーアレキサンダービッグバンドのアルバム(パワースライドっていうアルバムです)を聴いてみようって当たり前におもえるひとが増えるにはどうしたらええんじゃろう、とかいうことを考えてしまいます、ぼくは。「音楽好き」なように見えて実際は「演奏するのが好きなだけ」というひとがたくさんいるのがさみしい。
J&Bの話に戻しますけど、毎年バンマスをフィーチャーした曲を演奏してて、今年はそれがこれでした。(ちなみに去年は「BETWEEN TRANSPARENCY AND SEDECIM(作曲/白石なる 編曲/篠崎秀樹)」だったんですよ!この話も追々書きたい。)バンマスはぼくが入団する数年前からいままでずっと同じお兄さんで、ぼくの憧れのサックス奏者のひとりです。めちゃくちゃ吹けるくせに作曲系の専攻の出らしく、理論的に解析したり解説するのが得意なようで、入団当初ジャズのこととかなんも知らねぇ白石にも色々レクチャーしてくれいました。が当時の白石は言ってることの半分も理解できてなかったし、彼のアドリブにも全く付いていけてなかった。それがいまでは何を吹いているのかがわかるようになっているので、伴奏も付けやすいし、成長を実感できるしで、ちょっとは近付けたかななんておもいながら伴奏してました。

10.Disney Medley 2015(Arr.篠崎秀樹)
篠崎先生は映画音楽が好きでディズニーも例外ではないそう。J&Bにはずいぶん前からディズニーメドレーを書き下ろしていて、全部で4つあるのかな?これはその4つめで、タイトルの通り2015年に書き下ろしてくれたものです。先生はJ&B用にアレンジを書く際は団員ひとりひとりの顔を思い浮かべながら作業しているそうだ。その時々で所属しているひとは違うし、得意なことも違うし、楽器の持ち替えができるひともできないひともいるので(ビッグバンドのサックス奏者は当たり前みてぇにフルートやクラリネットを吹けるひとがちょいちょい存在する)、後年に再演しようとするとそのあたりでちょいちょい面倒が起きるそう。たとえばこのメドレーを演奏したとき、ぼくのほかにもうひとりピアニストが所属していた。だからこの曲にはピアノのパートとキーボードのパートが用意されていて、ピアノパートは彼女が弾く想定でクラシカルな型の伴奏が多く要求されており、ぼくが弾く想定で書かれたキーボードパートは左右の手で別の音色を演奏させられたり瞬時に音色を切り替えたりととにかく音色の指定が多く忙しい。それを今回ピアニストひとりで演奏するために、キーボードパートの譜面からフレーズを引っ張ってきて音を補う必要が出てきたりと、面倒だった。が、篠崎先生の人間愛音楽愛を改めて感じられる出来事だったようにおもう。
で曲の中身なんですけど、なんだっけ、ジョニーデップのプロモーションビデオみてぇな映画、海賊のやつ、のテーマ曲。とライオンキングのシンバ君と幼馴染ちゃんが「生きてたのね」ってなるとこの歌と、アナ雪とかいう寒い映画のコールドプレイみたいな壮大な曲のメドレーです。もしかして比較的最近のディズニー映画でアランメンケン作曲じゃない曲のメドレーっていうコンセプトでしたか???

11.I See The Light(Arr.篠崎秀樹)
「塔の上のラプンツェル」の主題歌です。アランメンケンの作曲。2015年にディズニーメドレーと併せて書き下ろされたアルトサックスフィーチャー曲でした。原曲よりぐぐっとテンポを落とした16ビートのアレンジで、これがなんかもうクインシージョーンズやバカラックみたいに最高にグッとくるんです。弾いてて泣きそうになってました。

12.The Melodies Of Disney World(Arr.篠崎秀樹)
これが篠崎ディズニーアレンジ譜の第1弾です。昨日の本番中のMCで「私が初めてJ&Bに書き下ろした曲だったとおもいます」みたいなことを言っててびっくりしました。そういえばJ&Bだけが所有している篠崎オリジナルアレンジ譜はたぶん30曲はよゆうであるはずなので、それだけで全然ライブ1本くらいできちゃうんですよね。毎年やってる定期コンサートも次々回で30回目になるので記念的にそういう企画になったりするんじゃないか~?どうでしょ。
これは不思議の国のアリス、くまのプーさん、シンデレラ、アラジン、メリーポピンズ、わんわん物語(スパゲッティの端と端を食べてチューするのが羨ましいとのこと。)、白雪姫、ピノキオといった古典的な作品群のメドレーになっている。大ボリュームでした。

13.いい日旅立ち ~ Tenderly(Arr.篠崎秀樹)
篠崎先生ソロのコーナー。まずは谷村新司トリビュートで「いい日旅立ち」が奏でられる。これは本番当日にぼくやベーシストに譜面が配られていて、曲の途中から伴奏が付く仕掛けが用意されていた。ワンコーラスでさらりと終えるとそのままスタンダードのTenderlyへ。こちらはビッグバンド全体の伴奏になる。
先生ソロのコーナーで演奏されるバラードの伴奏は、ぼくにとって毎年挑戦だった。先生のバックに限った話では全くないが、ソリストの伴奏をするときはやはり「どこかでびっくりさせたい」みたいな気持ちが強い。その日その場所でしか生まれない掛け合いが何よりも面白いとおもっているからだ。昔は先生を相手にそれをやるのは心理的な面で困難だったが(困難なりにおそるおそる挑んではいた)、もうそこそこの付き合いになるし、近年ではJ&Bと関係のないところで仕事をもらったりという関わりもあるので、いままでは感じられなかったような「よゆう」を携えて臨むことができたようにおもう。もっとできただろうともおもう。こういうのは大抵後日録音を聴くと良くてびっくりする。

14.Chim Chim Cher-ee(Arr.篠崎秀樹)
メリーポピンズのあれだ。ぼくがJ&Bに入団した年に書き下ろされたアレンジだった。とにかくテンポが速く派手で、ワンコードのアドリブの伴奏があったりと当時はかなり苦労したが、いまでは速さに惑わされることはあまりないし、ワンコードの伴奏はむしろ得意なので、終始テキトウながらキレのいいかんじで演奏できたとおもう。けどこういうのって正直ドラムベース次第なとこあるんだよなぁ。そこさえしっかりしてればほんとに乗っかるだけの意識でぜんぶうまくいくんだけど、そうじゃないと弾けないのは甘えのようにおもうところもあるし、そうじゃないときに多少でも指導できるようになりたいともおもうし、悩めるところです。うん、ドラムとベースのコントロールってプレイヤーとしても作編曲家としても大事なことだよな。

en1.東京ブギウギ(Arr.篠崎秀樹)
朝ドラ乗っかり選曲。ずいぶん昔に篠崎先生がアレンジしたものを演奏したんだが、今回演奏した曲の中でもトップレベルの「譜面に書いてある情報の少なさ」でした。情報がないくせに16ビートでガツガツ伴奏しろという理不尽っちゃ理不尽な支持の譜面。どんなパターンを演奏するかで曲の印象が大きく変わるとおもうし、つまりピアニストが変われば別のアレンジになるということでもあるとおもう。今回は初合わせですこし悩みつつも「チックコリアのナイトスプライトみたいにしよ~っと」っつってテキトウにやったら楽しかった。ミクソリディア一発のアドリブの伴奏はミシェロカミロになったつもりでたくさん弾いてソリストたちを煽った。いまは反省している。

en2.港が見える丘(Arr.篠崎秀樹)
平野愛子の75年くらいまえのナンバーだ!30年前からバンドのテーマ曲として演奏されている。原曲のメロディそのままに、メロウでブルージーなコード付けがされています。このアレンジもぼくにとっては教科書のようになっています。エンディングの盛り上がりも「終わりよければすべてよし」みたいなかんじで良い。みんなこれを聴いて満足して帰っていくのだな、というのがわかる。30年ずっと続けてるんだからすごいよな。

終演後はメンバーみんなでロビーに出てお客様のお見送りをする。毎年しらないひとたちが沢山声をかけてくれた。回を重ねるごとに見覚えのあるひとが増えていき、そのうちいっしょに写真を撮りたいというひとやお手紙を渡したいというようなひとが列を作るようになっていった。
ぼくはJ&Bに在籍している間に「お客様のために」とおもって活動しているつもりは一切なかった。ただ演奏することが楽しかったり、ピアノを弾いて仲間たちを驚かせるのが面白かったり、舞台でMCなどお客様に向けたパフォーマンスをすることもあったがそれは単に「こんなことやったら面白い舞台になるよな」とおもってやっていただけのつもりだ。だからファンがつくことにはかなり驚いていたが、純粋にジブンにとっての面白さを追求した結果がこうやって目に見えるところに出てくるのだという成功体験になり、演奏家やパフォーマーとしてのジブンが育ったのだとおもう。
きのうも沢山のひとが話しかけにきてくれた。ほんとうに毎年見に来てくださってるひとはすごく嬉しそうにしてくれていた。手紙を書いてくれたひともいたし、封筒にチップを入れて渡してくれたひともいた。ぼくは「初心忘るべからず」とかいう言葉にありがたみを感じないタイプの人間だ。それはこういう、忘れようのない初心に立ち返る機会がちょいちょいあるからだとおもう。

会場片付けて撤収したら打ち上げへ。ここでひとりひとりと乾杯をする時間も好きだった。みんなぼくの演奏に関して何かしらコメントしてくれるし、ぼくもひとりひとりをソロを睨みながら伴奏しているので逆にコメントすることができる。めんどくせ~オッサンや無理矢理酒を飲ませてくる盛り上げ担当もいねぇ、純粋にライブの反省や好きな音楽の話をして盛り上がるのはサークルの打ち上げならではだとおもう。同じものを食べてお互いの健闘を労い合うかんじがとても心地いい。二次会にも行って終電まで飲み食いして帰りの電車で死んだように寝て家に着いて死んだように寝た。
今朝起きたらめっちゃ喉痛いし鼻水出るしで風邪なのか強めの花粉症なのかわからないかんじになってた。大事な舞台が終わってからでよかったとおもった。今回はここまで。


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