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校長室通信HAPPINESS        ~「やさしい指導」vs「厳しい指導」

やさしさか?厳しさか?

 教室を廻ると、様々なタイプの指導を見ることができます(とても勉強になりますよ)。 大きく分けるとタイプは2つ。ひとつは「ほめて」伸ばすやさしいタイプ。「すごい!上手に書けたね。」という先生のホメ言葉に子どもたちはノセられて、いきいきと活動しています。もうひとつはビシビシと厳しく指導するタイプ。教室にはピンと張りつめた空気が漂い、子どもたちの顔は真剣そのものです。やさしい指導と厳しい指導…子どもたちを成長させるには、どちらが効果的なのでしょうか?もちろんバランスよく指導していくのがいいに決まっていますが、じゃあどんな時は「やさしさ」で、どんな時は「厳しさ」なんでしょう。「やさしくするとつけあがる、厳しくすると委縮する…」そんなことにいつも悩んでいる先生、コーチ、保護者の方はここからが必見です。

「やさしさ」と「厳しさ」を求めるニーズとは?

 アメリカニューヨーク州にあるコロンビア大学のステイシー・フィンケルスタイン教授は、教師の「やさしさ」と「厳しさ」について調査をしました。
 フランス語を学んでいる初級クラスと上級クラスの学生を対象に、「ホメてくれる先生とビシビシ指導してくれる先生に7点満点で満足度を採点」するように指示。すると下のような結果になりました。
★ホメてくれる先生とビシビシ指導してくれる先生の満足度の比較(7点に近いほど満足度が高い)
             初級クラスの学生     上級クラスの学生
ホメてくれる先生        4,96点         4,25点
厳しく指導してくれる先生    4,92点         5,45点

 表からも分かるように、初級クラスの学生は「ホメてくれる先生」に高い評価をつけていますが、上級クラスの学生は「ビシビシ指導してくれる先生」のほうを高く評価しています。上級クラスの人たちは「褒めなくてもいいから、もっと上達するスキルを教えてほしい」という欲求が強いようです。
 こんな例もあります。元ジェフユナイテッド育成コーチだった池上正氏の子どもたちへのサッカー指導は、「いいね!」「ナイス!」「OK!」と短いほめ言葉を、シャワーのようにどんどん浴びせることが中心です。しかし、上級者(県のトレセンや選抜チームに選ばれるような選手)が手を抜いたり、レベルの低いプレーで満足しているのを見ると、「そのプレーでいいの?それくらいの選手でいいの?」と刺激的な言葉をかけたり、目標のレベルを上げたりして、さらなる子どもたちの成長を促します
 これは、自身の経験から考えるとわかりやすいかもしれません。例えばスキーを始めたばかりなのに、「ダメダメ、もっと前傾姿勢で!」なんて厳しく言われたらイヤになりませんか?それより「初めてにしてはうまい!上達していますよ!」とホメてくれた方が断然やる気になる。逆に、もうそこそこ滑れるようになったのに「うまいですね。すごい!」ばかりだと、「このコーチは、俺を上達させる気がないな」と、ちょっと不信感を持ちますよね。それより「こぶを滑る時は、もっと膝で衝撃を吸収して!」というようなレベルの高い指導をしてくれたほうが、モチベーションは上がります(これ、実体験です)。

大切なのは「子ども」のニーズを見極める観察力だ!

 ここまでをまとめてしまうと、「初級者にはやさしく、上級者には厳しく指導」となりますが、そう簡単なことではありません。大人が初級者と上級者を勝手に線引きしてしまう、これはかなり危険なのです。「この子はレベルが高いから、厳しく教えよう!」と勝手に上級者枠に入れられて厳しく指導された子が、最後には追い込まれて挫折…なんてことが、日本中で起きているんです。「この子のことは俺がいちばん分かっている」という大人の思い上がりが子どもを潰してしまうことがよくあります。
 大切なのは、「この子のことを何もわかっていない」と自覚すること。そしてその子のことを理解するためによく観察しようとすること。そして、「やさしさか、厳しさか」という二者選択ではなく、「この子がもっと成長するためには、どんな言葉や指導がぴったりかな…?」と常に自問自答することだと思っています(自戒の念を込めて…)。

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