第五回笹井宏之賞応募作『カーソルの点滅が正しい』(50首)

カーソルの点滅が正しい


ギリギリに傷つけられて生きているあたしに口笛を吹いてくれ

出会うなよ着弾の音が横から聞こえる最中こっちを見てよ

あたしから名前を取れば見失い前の廊下に捨てられるはず

空気を読むよりも心を読むことはやめなさい爪弾きにされる

知り尽くしあたしを満たす言動をあたしのために身を委ねてよ

質問を重ねていけば散り散りに存在証明は愚かなり

細長い悲鳴に指を絡めゆきなめらかな淵を重ねなぞる

簡単に止めてしまえば手の中で握り続けてしまうしかない

安っぽい愛の囁きを聴きたくて歴史を紐解いてくださいよ

ほんの少しの優しさは要らないの全霊かけた愛情頂戴

薄墨の濃淡見れば死期悟る指紋の中で大鎌を薙ぐ

健常に苦しいほどに狂います皮を剥ぐから安心してね

みえないものに媚を売り身を削る撞くこともできず汚い笑顔

あたしだけ主観で生きているらしい他者の心を解剖させて

適合できずレッテルを貼られてるそのうちTake freeになるよ

特別なチカラを持てばあたしと動植物だけが残るだろう

気持ちとか心を見せるその前にあなたの透明さを教えて

スカートの丈を短くしただけ で お前に見せてるわけでは無い

肌出せば「ちやほやされたい?」くだらないもっと社会に役立つことを言え

みぎひだり戦うための歩き方 あたしのための指先の銃

羽ばたけぬ汚れた翼は傷だらけ治すことなく あたしがあたし

外見もあなた好みにするために切り落とした髪にさよならを

遠くからあなたが見えて手を振ったこの身が爆ぜて耳鳴りがした

触れられて申し訳なさが真っ先に出てきた昨日は雨でした

少しだけ上を向いたら顔が見え微笑みかけた眩しい光

笑いあっても愛しあっても忘れない九年前のあなたの仕打ち

あなたはすぐに求めるけれど ネモフィラ もっともっともっと死なない愛

冗長に話すあなたに背を向けてノイズを除けば愛すらなく

声高に叫べよ叫べ叫んだら汚いあなたが無くなるから

そんな目をしなければすぐ解るから ピアスをあけたところが騒ぐ

好きな人が出来たからと聞かされて融けるほどの陽炎をみえた

強いとか弱いとかそんなんじゃなくただただあたしをみてよ

生花は朽ちるからいいロボットは感情がない あたしにはあたしには

受け入れることができないと背を向け隣にいることも忘れられ

愚問です刺激なんかは要らなくて一緒にいればそれで良いのに

なめらかな息遣いから外されてコマ送りみたいな世界にいる

気付いたらあたしはおらず回ってて木馬だけが泣いてくれてた

大丈夫 そう言い聞かせて生きている無間地獄へ出ていくために

諦めてあなたを待って丸まった後ろ姿は見たくなかった

柔らかに拒絶するのは最低で罵りながらあたしは出てく

前髪を直すフリして虚空見て嫌いな言葉を無効化する

目で笑いマスクの中で呪詛を吐くそんな大人になるしかなくて

突然の風が運んでくる香り 前は良かったと言いたくなくて

やめたくて 言われて気付くその癖はあたしに残された罪と罰

ケータイの充電がまだ足りている一緒に暴飲暴食しよ

風が鳴る あなたに会えて良かったと思いたくない息絶えるまで

ぽっかりと“いつも”がなくて穴あいた満月みたいに綺麗じゃない

粛々とダークモードの刻となる カーソルの点滅が正しい

ディスられて突き放されて見放され瞳を開き闇夜を睨む

今までのファム・ファタールたちのようにあなた次第であたしは消える

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