句評

皆さん、こんにちは。俳人の成瀬源三です。
以前「いかちゃん」さんという俳人の方にTwitter上で拙句を取り上げ、句評を書いてくださりました。俳句というものを考える上で非常に有益な分析だと思ったので、今日はいかちゃんさんの書いてくださった文章を紹介しようと思います(いかちゃんさんから許可はいただいております)。
以下、いかちゃんさんの連続ツイートの抜粋(私の句と関係のある箇所)となります。

【2020年を振り返る ‪#一日一句紹介‬】

慈しむやうに少年院の蝉/成瀬源三

技術的なことを言うのであれば、「慈しむやう」というのは感想であり描写になっていない点、蝉の姿を描くには「少年院」は広すぎて、これという映像を結べない点、は確かに難かもしれません。
ですが、俳句は技術コンペではありません。僕はこのままの形でこの句を味わいたいです。蝉の姿を描写し、読者に「慈しむやう」を感じさせるのも良いでしょうが、作者が「慈しむやう」と感じたことそのものが詩であり、読者はその先を味わうという、そういう句だと思います。
「少年院」の出身者と話をしたことがあります。ほぼ学校、という印象でした。刑務所ではありません。もちろん色んな人が入る施設で、蝉の声を「苛まされるもの」と感じる人もいるでしょう。でも僕は、少なくとも蝉の側は、「慈しむやうに」鳴いているに違いないと、そう願いたいです。

以上がいかちゃんさんの連続ツイートです。
「慈しむやうに」を情景描写で言い換えようともしたのですが、この句に関してはストレートにテーマを言い切った方がいいと判断しました。句作過程の悩みも読み取っていただいたように感じます。
私は刑事司法を学んでいたことがあり、少年院にも何度も足を運んでいます。少年院出身の方と話したことのあるいかちゃんさんに何かしらの響くものがあったのなら、言葉にできないほど嬉しく感じます。
素晴らしい評を書いてくださったいかちゃんさんに、深い感謝を捧げたいと思います。
令和三年三月七日
成瀬源三

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