【小説】妖怪たちの苦悩 その3
「ぴーーーーっ」
合図に従って、わたしたちは机の下にもぐる。
「ぴーーーーっ」
次の合図だ。
クラス全員が整列し、ワイワイいいながらも走らず押さず校庭に向かう。
わたしは、陶子(とうこ)。
妖怪ろくろっくびの高校二年生。
特技は待つこと。
人間の皆さんにはわからないでしょうが、妖怪も何かと苦悩しているのです。皆さんにはそんな苦悩を紹介していこうと思います。
今日は避難訓練。
校庭に避難してきたのだが、どうもざわざわしている。
何かあったのだろうか。
私は首を伸ばして様子を伺う。
どうも行方不明の生徒がいるようだ。
右のクラスを見た。
「先生!はなこさんがいません!」
「先生!はなこさんは、お手洗いに行っています。」
「・・・。」
左のクラスを見た。
「1枚足りない。1枚足りない。」
大岩先生がおろおろしている。
「大岩先生、どうしたのですか?」
「あら、陶子ちゃん。1枚足りないの。」
「何が足りないのですか。」
「一反木綿の綿貫君がいないのよ。悪いけど首を伸ばして探してくれない?」
「わかりました。」
わたしは、首を伸ばして綿貫君を探す。
「あ~~。屋上の避雷針に巻き付いています。」
首を伸ばして綿貫君のところにいく。
「ちょっと綿貫君なにしてるの?」
「避難してたんだよ。」
「??」
「避難訓練なんだから、飛んで逃げてきたんだよ。」
その後、綿貫君は大岩先生にこっぴどく怒られていた。
「ちゃんと歩いて逃げないといけないじゃないの!」