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【小説】妖怪たちの苦悩 その4

わたしは、陶子(とうこ)。
妖怪ろくろっくびの高校二年生。
特技は待つこと。

人間の皆さんにはわからないでしょうが、妖怪も何かと苦悩しているのです。皆さんにはそんな苦悩を紹介していこうと思います。

今日は臨海合宿。
「陶子。どんな水着にしたの?」
隣に座る、ねこ娘の幸子が声をかけてくる。
「紺色で、胸元にピンクのリボンが付いた、ワンピースだよ。」
「え~~。また子供みたいなのを着て。私はピンクのビキニだよ。」
と、そんな他愛もない話をしていたのだが・・・。

バスの出発時間になったのだが、出発する気配がない。
どうもざわざわしている。
何かあったのだろうか。
「なんかあったのかなぁ。見てきてよ。」
と、今日も首を伸ばして隣のバスの様子を伺う。
どうも行方不明の生徒がいるようだ。

右のバスを見た。
「先生!はなこさんがいません!」
「はなこさんは、お手洗いに行っています。もうちょっと待ってね。」
「・・・。」

左のバスを見た。
バスには百目くん。
「ねぇねぇ。百目くん。」
「お、陶子じゃんか。ちょっと聞いてくれよ。口裂け女のさきこ と一緒に水着を買いにに行ったんだけどさ。きれいだよって言わないと怒るんだよ。」
私は愛想笑いをしながら、話を流し、聞く。
「全然バスが出発しないんだけど何かあったの?」
「あぁ、そうなんだ。先生に職員室に連れて行かれたやつがいるんだ。」
「え??何かあったの」
「から傘お化けの小笠、ってやついるだろ。今日は海に行くからって張り切って水着できやがったんだ。」
「??何が問題なの?」
「それがさぁ。あいついつも茶色っぽい、えんじ色っぽいワンピースを着てるだろ。」
「うん。うん。」
「今日はな、ビニールで来たんだ。」

二人で深いため息をついた。