見出し画像

【小説】妖怪たちの苦悩 その6

「は~なこさんっ。あそびましょっ。」
にゅっっと出てきた手が、わたしの腕を掴む。

わたしは、陶子(とうこ)。
妖怪ろくろっくびの高校二年生。
特技は待つこと。

人間の皆さんにはわからないでしょうが、妖怪も何かと苦悩しているのです。皆さんにはそんな苦悩を紹介していこうと思います。


「ねぇ。ここであってるよね。」
「あってるよぉ。」
女子トイレの前にいるのは、わたしとねこ娘の幸子だ。
個室が三つ。
一番奥の個室。
そこに彼女がいる。
んだっけ?
奥から二番目の個室も閉まっているので、念のために声をかけた。
「は~なこさんっ。あそびましょっ。」
すると中からは何の返事もない。

奥の個室に向かって、
「は~なこさんっ。あそびましょっ。」
個室のドアが開き、にゅっっっと出た手が、わたしの腕を掴む。

わたしは首を伸ばして、幸子に絡まるも、
結局、強い力で引っ張られ、ふたりとも個室へと誘われたのだった・・・。



そして、花子さん、わたし、幸子の三人で、
今日も井戸端会議が始まる。

前回の話題は、花子さんの家にある日本人形の髪が、
後退してしまったことについてだった。ような・・・。

今日の話題は、もちろんあのふたりだ。
「花子知ってる?百目くんって、口裂け女のさきこと付き合ってるんだよ。
だって、一緒に帰ってるとこ見たもん。」
「え~~~。あんなに目がいっぱいあるのに気持ち悪くないのかしら。」
「ねぇ~~。」
「ねぇ~~。」

その時、隣から、
「わたしきれい?」
と、聞こえたような・・・。
聞こえなかったような・・・。