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【童話】新釈すっぱいぶどう【朗読用フリー台本】

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昔々、あるところに足の遅いきつねがいました。

足が遅いきつねは、足が遅いせいで、色々なことで損をしていました。

その中でも、一番困っていたのは、スーパーで欲しいものが買えないということでした。

きつねのスーパーは、基本はやいもの勝ちです。

スーパーが開店したと同時に、きつねたちは、店内を全速力で駆けめぐります。

人間のスーパーと違って、走ってはいけないというルールもありません。

足の遅いきつねは頑張って走るのですが、いつも他のきつね達に負けてしまいます。

商品売り場に辿り着いた時には、他のきつねたちが買った後の商品しか残っていません。

足の遅いきつねは、ぶどうが大好物なのですが、甘い香りのするぶどうは他のきつねが先に買ってしまって、すっぱい匂いのするぶどうしか残っていません。

足が遅いきつねは、仕方なくすっぱい匂いのするぶどうを買って帰ります。

家で食べると、やはり、すっぱい味がしました。

次の日も、その次の日も、足が遅いせいで、甘い匂いのするぶどうは買えませんでした。

きつねは、我慢してすっぱいぶどうを食べました。

   ● ● ●


さっきとは別の足の遅いきつねがいました。

そのきつねも足が遅いので、甘いぶどうを買うことができず、すっぱいぶどうしか買うことができませんでした。

しかし、このきつねはあきらめの悪いきつねでした。

このきつねは、こんな噂を流しました。

「知らないと損をする、すっぱいぶどうの健康効果! すっぱいぶどうに含まれる酸味の成分には、なんと美容効果や老化防止効果があった!? 若々しさを保ちたい奥様におすすめ!!」

この噂のせいで、すっぱいぶどうはたちまち人気商品になりました。

そして、甘いぶどうのほうが売れ残るようになりました。

こうして、足の遅いきつねは、甘いぶどうを買えるようになりました。

めでたし、めでたし。

   ● ● ●

ただ、時々。

本当に時々ですが、足の遅いきつねは懐かしくなって、すっぱいぶどうを食べたくなる時がありました。

しかし、今は人気商品となってしまった すっぱいぶどうを、足の遅いきつねがまた買えるようになることはありませんでしたとさ。

おしまい。


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