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今まで作った短歌たち(~2022.6)

いくつか気に入っているものを記録。

初恋に会うため湖西線に乗る 少し遠くにえり網が見える

 2019年11月4日(多分)読売歌壇 俵万智選 に載った。
 母親には「女の子の幼なじみと遊びに行く時に思い浮かんだの!」と必死に誤魔化していたが、本当はふつうに大学時代に恋愛対象として気になっていた男の子(が居る合宿所)に行く時に作った。
 二人で遊びに行くことはあったが特に告白したり付き合ったりすることもなく、彼とは連絡を取らなくなった。
 えり網が琵琶湖の風景の中で一番好き。

いいこともいやな思いも分け合って笑う 遠くで春の雷

 大好きな友達に送った歌。
 彼女とは好きなドラマ(MIU404)をきっかけに知り合った。私は米津玄師の曲だともちろん『感電』(MIU404の主題歌)がNo.1だと思っているが、それはそうとして『春雷』も最高。
 愚痴をLINEで壁打ちしあったり、電話越しに意味もなく泣いたり出来る友だちなので失いたくない。
 どんなに世界が非情でも、私は彼女を好きでいたい。

君からのLINEの返事を待つ時の横隔膜の縮む感覚

 好きな人とLINEしてる時って、鳩尾とか肺とかが苦しい。
 高校の時に、彼女がいる男の子を好きになった。絶対に叶わないと気づいていながら必死に片想いをしたけど、結局思いを伝えられずに私は高校を辞めた。
 彼とLINEをする機会はそう多くなかったけど、彼の存在を考えるだけで全身の空気を吐き出して死にそうになる恋だった。ずっと恋愛系のプレイリスト聞いてテスト勉強してた。
 あんなに一生懸命恋をするのは、人生を通してもあれが最初で最後だと思う。

助手席の心の内を知りたくて冷房を切る左手の指

 確かこれは車の免許をとる前に詠んだ。とある企画の題を借りて、誰にも見せずにひとりで短歌を作る練習をしていた頃だ。
 車を運転するようになって気づいた。左手でエアコンやスピーカーのボリュームを操作するとき、大抵は自分のためだ。なぜなら車に乗っている時間の8割は、自分しかいないから。
 だけど、助手席に大切な人(家族、友だち)が乗っている時、その時だけは左手が相手のために動く。
 声を聞きたいからBGMのボリュームを下げる。音楽に飽きたかもしれないからラジオに切り替える。寒くないか心配になって、冷房を切る。
 何となく詠んだ歌が、少しずつ、私の中で意味を持ち始めている。

銃声も傷も痛みも札束も似合わなくていい ただ生きていたい

 大好きなドラマ『MIU404』の第4話の登場人物、青池透子を想って詠んだ歌。
 とりあえずドラマを見て欲しいのだが、彼女の生き様は本当にかっこいい。どんなに日の当たらない場所にいても、瞳に光が差さなくても、心の中の小さなガラス片を忘れずにいた女性。いつか誰かに壊された心の欠片で、最後に最高な仕返しをしてやったところで私は泣いた。(抽象的な表現なのはネタバレを避けるため)
 ただ生きることすら難しい人がこの世にはいる。忘れることなんて出来ないはずなのに、見て見ぬふりだけは簡単に出来るのだ。

ケチャップか醤油か そんなことなのに全部終わるみたいな泣き顔

 とあるカップルが喧嘩をするなら? と妄想した末に出来た歌。
 推しが泣いている姿でしか得られない栄養素がある。恋人が泣いているのを見ている推しの姿からしか得られない栄養素も、ある。

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