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2024/01/08

「共に暮らして二分の一年」


気がついたら、20時間くらい寝ていた。
お正月気分も抜けないまま、家のことを片付けて七草粥もどきを作った。ああこれで今年が始まった、いや、昨年が終わった。そんな気分になりながら、削れたHPを少しずつ回復させている。

雪が降った。
2024年の初雪というのだろうか。キンと冷えた空気が家の中に満ちていて、どうにも布団から抜け出すのが億劫だった。
クリスマス前からずっと、プラチナの重みが左手の薬指にあって、それはどうしたって人体に影響がある重さではないのに、たった数グラムのプラチナのおかげで少しだけ前を向ける気がするから、約束ってすごい。

彼と出会って約10ヶ月、共に暮らして約半年。
初めて別れを意識した数日後に、生涯を約束するための指輪を作った。
どうしようもなくしんどいことや、どうしたって受け入れ難いことや、悲しみや、怒りや、戸惑いや、諦めも全て、私は彼と話し合おうと思った。
人生で最大の過ちさえ、彼は大丈夫と抱きしめてくれた。ごめんなさいと泣きじゃくる私を抱きしめてなだめながら彼は、どう思っただろう。僕はこんな荷物を背負って長い人生を歩くのか、と絶望しなかったのだろうか。僕はこんな荷物を背負った人と支え合って歩きたいと、思えたのだろうか。

今年は忙しくなるぞ、と笑い合えることの幸せを、社会人になったばかりの私は知らなかった。未来について話すことが楽しいだなんて、私は知らなかった。
ずっと、過去が嫌いだった。今もそんなに好きじゃない。過去はやり直せないくせに、嫌なものばかり記憶にこびりついているから、嫌いだ。
正月の帰省で、母と話して気づいたことがある。私は褒められたがりのくせに、肝心の褒められた場面を覚えていない。三者面談でもあなたはたくさん褒められていたよ、と言われたけれど、三者面談で言われたことなど何一つ覚えていない。他人から褒められても覚えていられないくらい、しんどい十代だった。
今は違う。「なるちゃん」と呼んでくれる声がキラキラ輝いて、褒められてなくても勝手に幸せになれる、そんな私になれる。気がする。

2023年の1月に死ぬほどキツい別れを経験してから、ようやっと一年が経つ。
もう少ししたら、私は乗り越えられるだろうか。
大切だと思えるものを守りながら、大切だと胸を張って、大きくなくていいから腹から声を出して、生きていきたい。
それが出来たらなんでもいい。
仕事もお金も、こだわらない。
ただあなたと同じ布団で眠れたら、それでいい。

以下 短歌連作十二首


毎晩のこと寝返りを打つたびに君の可愛いほっぺに触れる

行かないでくれと縋ってみるけれど困った顔で「仕事」と笑う

私より二時間早く起きる人 温もりだけを置いてゆく人

窓を開け町を見下ろす君は今どこにいるかなもう着いたかな

シンクには陶器のマグが置いてありあなたがちゃんと目覚めた証拠

お揃いに見えてほんとは別々に買った食器を泡で撫でゆく

水色は君の 桜色はわたし そっと並べばつがいのカップ

歯ブラシが毛羽立ってたり洗剤が切れてたりする 暮らしってそう

「今日帰り洗剤買ってきて欲しい」「わかった」「ありがとうね、好きだよ」

本当はひとりの方がやりやすい、だけどふたりで暮らしていたい

丸まった靴下を伸ばして干して早く帰っておいでと祈る

やなことは話せばわかる君だから共に暮らして二分の一年

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