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近所のすごいおじさんを紹介したい。

タイトルの通りなのだが、この記事はぼくの近所のおじさんをPRする記事である。

え、どういうこと?

と思うかもしれないが、まあちょっと読んでいってほしい。

リモートワークを積極的に利用して働いているので、リアルな場所での会話が足りていない。社内も社外もどちらもだ。そこはちょっとさみしいし、なんだか新しい発見や視点が減ったように思う。考えてみれば対面の人から突発的に浴びせられる発言やアイデアってけっこう重要だった気がする。

あーそういうのなくなったよなあって思いつつ、もう数年なわけで。

そんなときに意外とありがたいのが、近所に住んでいる人だ。

最近、散歩しているとたまに会うくらいの距離にすごい人がいることがわかった。

柳澤大介さんというおじさんである。いまは起業して自分の会社をやっている。

このひと、スマートニュース、メルカリという経歴もあって、共通の知り合いが多い。たぶん100人くらいはいるんじゃないか。

僕はこれまでずっと編集者やライターをやってきた。一方で柳澤さんはあのキーエンスにも在籍していたゴリゴリの営業パーソンである。家は近いが、専門分野がまったく別なので話していて興味深いことばかり。

僕らが集まる場所はだいたい近所のデニーズや大きな公園だ。

ここはよく行く近所の公園

夕方頃から一緒にコーヒーを飲みながらいろんな話をしている。

僕は「BtoBマーケティング…? それってどんなことをするんですか」っていうレベルだったが、デニーズで話すうちに「へえーマーケティングっておもしろい仕事なんだなぁ」と思うようになった。

おかげでいろんな言葉も覚えたし、なんならBtoBマーケティングの戦略の立て方とかも聞いた。

たとえば柳澤さんのこの記事は僕にレクチャーしながら書いてくれたものだ。

で、僕はといえば柳澤さんにポッドキャスト配信の方法を教えたり、ブログ記事の書き方の相談に乗ったりもした。

そしたらいつの間にかポッドキャストをはじめていた。すごい。

番組名は「40's Biz talk

そんな近所のおじさんつながりが、平日のいい気分転換になっている。


で、ここからが本題だが。

その柳澤さんが自分の会社で新しいサービスをつくった。BtoB企業がSNSを活用した営業を導入するための支援サービスだという。

企業や個人がSNSを使って営業することを海外では一般的に「ソーシャルセリング」と呼び、手法のひとつとして確立されているそうだ。

その手法をいろんな企業のマーケティング部門、営業部門にインストールするというのが柳澤さんの新サービスAccount Based Socialselling」(ABSである。

https://minority.works/service/account_based_socialselling.html


というわけで、冒頭の話に戻るが、この記事は近所のおじさんをPRする記事なのである。

「ABS」というサービスについて柳澤さんから話を聞いてみたら、すごくおもしろかった。僕は営業マンではないけど、この考え方はいろいろ応用できるところがあるなあと感じられた。

ぜひ以下のインタビューを読んでみてほしい。

営業は相手に「知られている」と格段に強い。

鳴海:柳澤さんはいまスタートアップのグロースを専門に請け負うマイノリティという会社を起業していて。そしてお客さんはSNS経由で見つけてくることが多いんですよね。

柳澤:そうです。実はうちは広告費をほぼかけていなくて、SNSでお声がけいただいたり、そこでつながった方からご依頼をいただくことがほとんどです。

いわゆるソーシャルセリングを実践していて、そのノウハウをクライアント企業にも提供しています。

鳴海:BtoB営業みたいなお堅そうな営業活動にSNSを使うって全然イメージできないんですが。「うちのSaaS、めっちゃいいですよ!」みたいなツイートをするってことですか? あの、箇条書きとかで。

柳澤:いやいや、ちがいます。ソーシャルセリングはそういうものではありません。まずBtoBの営業の場合、これから営業をかけたい相手に「認識されること」がなによりも大事だと思うんです。

鳴海:どういうことでしょう。

柳澤:たとえば僕が鳴海さんにまだ面識がない状態でX(旧Twitter)のDMでアプローチして、「うちのサービスを検討してください!」なんて言っても無視しますよね?

鳴海:しますね。普通にスルーです。たまにそういうの来ますけど。

Xには知らない人からの営業DMがよく届く。

柳澤:それが当たり前です。ただDMを送るだけでは意味がないし、なんなら即ブロックされて、貴重な連絡手段をつぶしてしまうだけなので非常にもったいない。

じゃあそれを意味あるものにするにはSNS上でどう行動するか?

それがソーシャルセリングの考え方です。

たとえばもし鳴海さんがXで、僕のポストをけっこうな頻度で目にしていたり、僕のプロフィールページを見ていたり、何ならちょっと興味を持ってフォローしていたらどうでしょう。僕からDMが来たときの対応も変わってきますよね。

鳴海:それはそうですね。フォローしてる相手だったら話くらい聞こうかなってなると思います。少なくともよくツイートを見かける人だったら何かしらリアクションはするでしょうね。

柳澤:そうなんです。「この人、見たことあるぞ、何ならフォローしてるぞ」っていう状態を作り出して、効率的で、確実性の高い営業活動につなげるのがソーシャルセリングの考え方なんです。

真面目に語っているが、この人、大学時代はバンドを組んでいて常にモヒカンだったらしい。

鳴海:なるほど、理屈はわかりました。でも実際どうやるんですか。自分のことを認識してほしいからといって、やたらとメンションとかで絡んでいったら逆効果になりそうです。

柳澤:実際に僕がやっている事例をお話しますね。まず営業相手として“つながりたい人”のことはSNSでもフォローしておきます。

次に、その人と信頼関係を築くための発信とアクションを継続的に行います。そういったやり取りを一定の回数やっていると、相手から認知され、フォローバックをしてもらえることもあります。

そこからあるタイミングで連絡をしてアポイントや商談に繋げる、というのが基本的なイメージです。実際はもっと細かくやることはあるのですが。

鳴海:そういった下準備をしておけば、いきなりDMを送るよりも格段にアポイントがとれやすくなる、と。

柳澤:そうですね、全然違うと思います。ただ、闇雲にいいねやリプライをするだけでフォローしてもらえることはありません。そこはやはり戦略が必要になってきます。

Xって一般的にはターゲティングができないですが、toBのビジネスの場合、見てもらいたい人はだいたい決まっているわけです。「広告業界のマーケターと繋がりたい」というふうに、自社が扱っている商品に応じて狙いたいターゲットは想定されています。

特にITや広告や人材系のビジネスをやられている方であればほぼ皆さん実名のX(Twitter)アカウントをお持ちなので、そういった業界であれば狙ってアプローチすることは可能です。

僕(@narumi)のアカウントを攻略するなら

鳴海:たとえばです。柳澤さんが僕に対して何かを売り込みたいときは、まずはどういったアクションを起こしますか。

柳澤:まずは鳴海さんに合わせたプロフィールをつくります。鳴海さんといえばポッドキャスト、編集、ライターといった界隈でよく知られているので、まずはそことの共通点を探っていきます。

ここで大事なのは、鳴海さん1人とつながることを意識するよりも、そのカテゴリ全体を狙うイメージを持つことです。

たとえばそれをポッドキャストとするなら、「音声配信をする中での気づきやノウハウを投稿します」とか、「ポッドキャスターの人たちとつながりたいです」みたいなプロフィール文にしておきます。

ターゲットとしては、広くポッドキャストに興味がある方全般になるんですけれども、その中には鳴海さんも入ってくるはずです。

鳴海:まず最初に、僕が食らいつきそうというか、興味を持ちそうなプロフィールをつくっておくわけですね。

柳澤:そうです。次の段階としては、毎日の投稿が必要なので、狙った人たちに向けたコンテンツを配信して投稿していく。

投稿の軸としてはさまざまなものが考えられますが、一番シンプルなのは役に立つ有用なコンテンツ。ノウハウとか業界動向とか、いろいろありますが、最近はXでも「図解ツイート」をよく見かけるじゃないですか。

たとえばこんな投稿です。

鳴海:あー、ありますね。箇条書きだったり、画像でまとめるものは見栄えもいいし、目に留まります。

でも、この段階では僕はまだ柳澤さんをフォローしていないし、知りもしないわけですよね。

柳澤:そのとおりです。おっしゃる通り、自分のことに気がついてくれないと意味がないので、次は具体的な働きかけをしていきます。

たとえばポッドキャスターを狙いたいのであれば、主要なポッドキャスト番組のXアカウントをスプレッドシートに並べておいて、その方たちにコミュニケーションをとっていくんです。

鳴海:あ、わかった。最近の柳澤さんのツイートにありましたけど、この投稿もその1つじゃないですか?

柳澤:半分正解です。上のポストは純粋に好きなポッドキャスト番組を紹介しただけなんですけど、たぶんこの番組の方々はちらっと私のことを認識したんじゃないでしょうか。

こうやって紹介されて失礼だとも思わないでしょうし、リツイートされると嬉しいじゃないですか。相手が喜ぶことを徹底的にギブしていく、という感じです。

鳴海:「誰かが紹介してくれたんだな」って気づきます。もちろん悪い気はしないですし、何なら名前も覚えてしまうかも。

じゃあ他にも、たとえば僕がツイートしたら、それにいいねをするなり、リツイートをされるわけですね。

柳澤:そうです。そこでのポイントは、DMではなくて引用リツイートをすることです。「読んでいますよ!」ということをご本人だけでなく、自分のフォロワーに向けて広くアピールします。

鳴海:じゃあ僕がもしnoteを書いていたら、それもシェアしたり?

柳澤:はい、それは私にとってもチャンスです。noteの感想をもらったら、鳴海さんはきっと嬉しいでしょ。

鳴海:とりあえず感想待ってますわ。

キャッチボールをするとわかるのだが、
柳澤さんは思ったよりも背が高く、スタイルが良い。

確実に成功させるためには「登場のしかた」が大事

鳴海:逆にソーシャルセリング的なアプローチをして失敗してしまったことはありますか。たとえば、絡んでいきすぎた結果、ブロックされてしまった、とか。

柳澤:いまのところ、そういった失敗はないですね。

僕がソーシャルセリングを企図する場合、失礼なやり方、たとえば「突然DMを送ってきた」みたいなことをしてしまうと、それ自体をSNSで拡散されるリスクがあります。

僕はいわゆるコンサルタントという立場で、クライアントに営業やマーケティングのやり方を教えているので、「突然知らない人に無差別のDMを送りましょう」みたいな雑なやり方をしていると、僕自身のブランド毀損にもなってしまいます。

だからこそ、登場の仕方というか、出会いの演出がすごく重要なんです。

たとえばSNSでアクションを起こしてお互いにつながった後に、普通であればDMを送るところなんですが、僕はほとんどそれをしません。

その代わり、手書きの手紙を1通送っているんです。

鳴海:え、手紙ですか。会社宛てに紙で送るんですか。

柳澤:そうです。僕の営業先は基本的に経営者なので、ほとんどの方がフルネームでわかります。会社宛てに手書きのお手紙を1通送って、届いてから数日経ったであろう頃にDMを送ります。

鳴海:なるほど。相手の方としても、直筆の手紙を見た時点で、「あの、いつも“いいね”してくれる人だ」ということは認識しているわけですよね。

柳澤:そのはずです。手紙の中には名刺も入れていて、そこに僕のXアカウントのQRコードもあるので、一連の流れが設定されているんです。

鳴海:ここで手紙が出てくるとは思いませんでした。そこまでの仕込みをするんですね。

柳澤:「ソーシャルセリング x 手紙」はおそらく誰もやっていないと思います。うちの会社は「マイノリティ」という社名ですから、誰もがやっているやり方を同じようにはやりたくないなぁ、と思っていて。

「どういうことをしてくれた人に、自分だったら会いたいと思うか」を常に考え抜いてコミュニケーションのプロセスの設計をしています。

鳴海:すごいな。(これ、ネタバラシしちゃっていいのかな…)。

モヒカンの写真提供は断られた。

広告費は掛け捨て、SNSは積み上げ

鳴海:僕、個人でお仕事の依頼をいただくことがあるんですけど、依頼をしてくださる方はだいたいポッドキャストのリスナーさんだったり、「昔からnoteを読んでいました」という方が多いんです。

やっぱり当然のことながら、僕のことを知っている方なわけですよね。

昔から僕のコンテンツを見ていたから仕事を依頼してみたくなった、という方がほとんどなので、自分の発信を見てもらう機会を得るのはかなり大事なことなんでしょうね。

柳澤:まさにそのとおりだと思います。ですから、僕はいまX、そしてnoteという武器を使っていますが、そこにポッドキャストも加えようとしていて。2024年は音声も頑張っていきたいと思っています。

鳴海:柳澤さんのポッドキャスト、普通におもしろいですよね。勉強にもなります。この「SMB企業向けプランを提案された時の話」は笑いました。

柳澤:この話はほんとに“営業あるある”なんですよ。

で、なんでこれをやっているかというと、僕と似たようなビジネスをやっている会社って、ほとんどがコンテンツマーケティングに投資をしています。たとえばSEO対策の記事を大量につくる、ですとか。

もちろん、それも一定の効果はあると思いますが、会社の「戦略」を本来の「戦いを略す」という意味で考えると、本当にそれだけでいいのか、とも思います。

小さなシェアでもいいからできるだけ競合がいない領域でトップになることを考えると、SNSやポッドキャストにはまだまだ余地があります。

モヒカンが気になって話が入ってこない。

そういったSNSをベースにした営業手法を実践して成果が出て、再現性を確立できたので、いまはそれをサービス化してBtoB企業に提供しているところです。

先月、自社の売上分析をしたら、基本はリファラルなんですけれども、新規の問い合わせの90%がX経由でした。

鳴海:BtoBマーケティングのアプローチとしては当然広告もあると思うんですけれども、広告よりもソーシャル経由のほうがコストもかからないものですか。

柳澤:そう思います。一方で広告の場合は当月開始して、すぐに結果が出るのがメリットですね。

ただ、いちばん重要なことは、「広告費は掛け捨て、SNSは積み上げ」だということです。

ちゃんとフォロワーが貯まっていけば、雪だるま式に成果が積み上がっていきます。

鳴海:広告をドカンと投下するのもいいけど、SNSでコツコツ信頼を積み立てておくと後で効いてきます、と。おもしろい。まさにマイノリティな戦略ですね。


というわけで

ちょっと長くなりましたが、近所に住んでいる柳澤さんのご紹介でした。他の人がやらない営業スキームをつくりあげるのが信条の方。

Account Based Socialselling」(ABSはちょっとおもしろいと思います。既存の方法に行き詰まりを感じていたら、一度お話を聞いてみてはどうでしょうか。

柳澤さん、SNSでは真面目なことを言っていますが、僕のnoteで紹介してくれって頼んでくる時点で相当変な人です。よかったらフォローしてみてください。

おわり。

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