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ビジネスモデルの変遷から、ブロックチェーンゲームというものを考えてみる

今年、ブロックチェーンゲームの開発に関わるようになって、見えてきたことがある。点と点が線でつながったので、一度思考の整理を兼ねて、ここでまとめる。それはソーシャルゲームの開発とは全く別ものである、ということだ。
2022年12月時点のブロックチェーンゲーム、というのはある種、初期のソーシャルゲームに似たところがある。
しかし、ソーシャルゲームの開発者はおそらく、必ずといって面を喰らうだろう。
それは、見た目こそ初期のソシャゲのようなチープさがありながらも、内部の設計が複雑に入り組んだものだからだ。
なので、異なるものをつくっている、というのを理解しないまま作ろうとすると、とドツボにはまるだろう。
そして、毛色が異なるということもあり、作るのはかなりむずかしい。

というのも、現時点では成功しているプロダクトというのはほぼ存在しないに等しい。
一世風靡した、『Axie infinity』『STEPN』でさえ、ゲーム内のユーティリティトークン(ゲーム内のおカネみたいなもの)の価値は下落しており、
「Play to Earn」で原資回収するのが、一部のユーザーを除き難しくなっている。


というのも、思考するレイヤーが増えているのだ、ということに気づいた。
この記事の洞察としては以下にまとめられる。

ポイント 新しく思考するレイヤーが生まれている
第1世代 アーケードゲームの「ゲームコア」レイヤー
第2世代 コンシューマゲームの「ゲームサイクル」レイヤー
第3世代 ソーシャルゲームの「マネタイズ」レイヤー
第4世代 ブロックチェーンゲームの「エコノミクス」レイヤー


新しい世代が生まれるタイミングで、ビジネスモデルが変化しており、そのたびに思考するレイヤーが増えているのである。
ここでは、世代ごとにどんなタイトルがあり、どんなビジネスモデルで、何が概念として生まれたのか?を考えたい。

第1世代 アーケードゲーム

具体的なタイトル

『スペースインベーダー』
『ストリートファイターⅡ』
『ビートマニア』など

ビジネスモデル

都度プレイごとに支払い

生まれた概念

ゲームコア

ゲームコアとは、ここではプレイヤーが実際に行う遊びのことを指す。
アーケードゲームは1コインで1プレイできるビジネスモデルだった。
ビジネスとして成立させるには、時間あたりの回転数を上げていけばよい(売上 = ワンプレイ単価* プレイ回数)
当時のゲームではセーブの概念もなかったので、いわゆるメインとなる遊び = ゲームコアを考えればよかった。
一人当たりの単価を上げるために、「ステージ制」「コンティニュー」などの概念が生まれ、
最後まで到達するために1ユーザーから追加でコインを投入させる仕組みがあった時代。長く遊ばせる、というよりは短いプレイ(5~10分くらい)をいかに楽しませるか?を考えればよかったのだろう。

第2世代 コンシューマゲーム

具体的なタイトル

『ドラゴンクエスト』
『ポケットモンスター』など

ビジネスモデル

ハード機の購入+ソフトの購入

生まれた概念

ゲームサイクル

ゲーム機がゲームセンターから、各家庭のテレビに繋がるようになった。
アーケードからの移植タイトルの他に、家庭用タイトル専用で長くプレイするゲームタイトルが求められるようになる。
これらのゲームは、アーケードのように数分プレイさせて終わるのではなく、何時間か遊べることが望ましくなる。
何時間も遊ばせるために、コアとなるプレイを何度もプレイさせるゲームのデザインが出てくるようになった
もちろん、『スーパーマリオブラザーズ』のように途中セーブがないゲームもある。
しかし、その一方で『ドラゴンクエスト』のような、途中で中断し、再開できるゲームも生まれた。

『ドラゴンクエスト』を例にすると、ターン制コマンドバトルという、ゲームコアの基本ルールが変わらないものの、
出てくる敵のバリエーションや、自分が使える呪文の種類が増えていくことで、遊びのバリエーションが生まれる
ようになる。
「ゲームサイクル」の誕生である。会社によっては、「ゲームループ」と呼ぶところもある。

たとえば、
・【バトル】敵を倒して
・【収集】ゴールドを集めて
・【強化】新たな装備を買い
・【拡張】次の目的地(ダンジョン等)に行く
 ※以下、繰り返し

デバイスの進化に伴って、カセットに「データのセーブ」をできるようになり、ゲームコアとゲームサイクルの両方を考える必要が出てくるゲームも出てきた。

第3世代 ソーシャルゲーム

具体的なタイトル

『探検ドリランド』
『パズドラ』
『モンスト』など


ビジネスモデル

基本プレイ無料 + アイテム課金(BtoC)、広告(BtoB)

生まれた概念

マネタイズ

ゲームを遊ぶのが無料になった、フリー・トゥ・プレイの時代
ゲームプレイするのが無料になることで、開発会社はどこで開発費を回収するのかというのを考える必要が出てくる。
当たり前だが、開発側に1円も入らないと、サービスの継続ができない。
そこで、無料でプレイできつつも、一部のユーザーさんにお金を払ってもらい、サービスを提供できるようにしていく。
マネタイズの誕生である。
一般的に、(購入率購入単価= PURARPPU)のような指標が用いられる。
ユーザーさんは無料で始めているので、やめるのも躊躇しない。
つまらなければ、アプリであれば即中断・アンインストールされる。
なので、いかに一度プレイしてくれているユーザーさんが離脱しないか、に気を遣う。
というのもユーザー数が少なければいくら単価が上がろうとも売り上げを維持できないからだ。

企画者はユーザーさんがこぼれない様にするのに加え、購入を促すためには色んな商材をつくり、いろんな売り方をし、心理を突く。
それも単体ではなく、前述したゲームコア、サイクルに加えて、マネタイズを考える必要
がある。

たとえば、アイテム課金であれば、
【商材】バトルで強い敵を出し、それを倒しやすくするキャラクターを販売する
【売り方】時限セールで、いま買わないとモッタイナイ、という心理を刺激する
【優越感の刺激】ソーシャルで、他人目線を入れることで、競争や羨望を刺激する
などがある。

広告であれば
・広告をみれば、もらえる報酬が増える
・広告をみれば、プレイできる回数が増える
などが挙げられる。

マネタイズだけを考える、サイクルだけを考える、では必要十分ではなくなってくる。
というのも、たとえば、強いキャラクターを売りたいとしても、それに活躍させる場(= 強い敵)がいなければいけない。
必ずしも全部を一人でできる必要はないが、ゲームクリエイターとしてキャリアアップしていくならば、これらを理解し、設計できる必要がある。

第4世代 ブロックチェーンゲーム

具体的なタイトル

『Axie infinity』
『STEPN』

ビジネスモデル

直接販売 = NFTの一次販売
間接販売 = ユーザー間のNFTの二次流通の手数料

生まれた概念

Play To Earn
トークンエコノミクス

ブロックチェーン技術と融合し、生まれたのがブロックチェーンゲーム(NFTゲーム等という言い方もする)である。
これによって何が変わったかというと、「最終的に、円やドルと変えられる」ようになったことが大きい

簡単に流れを説明すると
・ゲームでアイテムやトークンを獲得する
・トークンと基軸通貨(=たとえば、ETH、ビットコイン等)を交換する
・基軸通貨と法定通貨(=たとえば、円やドル)を交換する
ので、ユーザーさんが「ゲームをプレイしておカネを稼ぐことができる」ようになった。


これは魔法のようではないか。遊んでいるだけでおカネを稼げる。まさに夢のような時代。
当時『Axie』ではベトナムで家が建った、というの話や、『STEPN』では歩くだけで1時間に何万も稼げた、のようなことを聞くようになった。
しかし、多くのブロックチェーンゲームが数か月でそんな話は聞かなくなる。なぜなのか。

多くは『ポンジスキーム』(詳細はここでは割愛)と呼ばれる。
ややハイコンテキストになるが、稼ぐためにゲーム内のアイテムをまず購入するケースが多い。

その流れはこうだ。
・運営がアイテムを販売する
・既存ユーザーが新規ユーザーにアイテムを売る
・新規ユーザーはそのアイテムを使い、ゲームで稼ごうとする
・入った新規ユーザーは稼いでアイテムを、次の新規ユーザーに売ろうとする
・やがて、新規ユーザーがいなくなり、アイテムが売れなくなる
・アイテムが売れないと、そのアイテムの価格が下落する
・経済が崩壊
・稼げないので、プレイするユーザーがいなくなる
・サービス終了

この経済のコントロールが非常に難しい。
よく考えればわかることだが、「全員が儲かる」世界があるはずがない

長くその経済圏を持続させるためには、このゲーム内のアイテムや、トークンの流れをウォッチングする必要がある。
要するに、いまどれくらいのおカネが入ってきていて、いまどれくらい出ていってるのかを把握する必要がある。

あまりにもアイテムが希少すぎたら高くて新規ユーザーが入ってこれないし、
あまりにも売りたい人が多いのに、買いたい人が少なかったら既存ユーザーは、売り抜けるために安くするしかない。
なので、狙った適正価格で安定させる必要がある。
今日の日本円(130円)が明日、20円になったり、明後日は16000円のように乱高下したら、それが異常事態であるのは理解できるはずだ。
ということで、とにかく見張らないといけないことが多い。

おそらく、コンシューマ→ソーシャルに移転してきた人たちがぶつかる壁と似ているのではないか。
それくらい、まったく違う脳を使う必要がある。
なので、これまでと違った職種の人が活躍するゲーム・リセットのタイミングでもあるように思える。

まとめ


・新しく思考するレイヤーが生まれている
第1世代 アーケードゲームの「ゲームコア」レイヤー
第2世代 コンシューマゲームの「ゲームサイクル」レイヤー
第3世代 ソーシャルゲームの「マネタイズ」レイヤー
第4世代 ブロックチェーンゲームの「エコノミクス」レイヤー

・これまでの変遷を見るに、前の世代がなくなることはない
・新しい時代では、新しい職種の人たちが活躍する

ここまで読んで下さり、ありがとうございました! サポート頂いた分は、新しい記事を作成時の参考書籍や、 勉強代に充てさせてもらう予定です。