アミオダロンが原因となる甲状腺機能低下症
※この記事は医療関係者向けです
ニュービー薬剤師の勉強記録。本日は、アミオダロン(アンカロン)100mgが引き起こす甲状腺機能低下症について勉強しました。
アミオダロンってどんな薬?
適応は以下の通り
Vaughan Williams分類の第III群に属する抗不整脈薬です。心筋細胞膜のK+チャネルを阻害します。
アミオダロンにはヨードが含まれている
アミオダロンの禁忌欄には、『3.本剤の成分又はヨウ素に対する過敏症の既往歴のある患者』という文言が書かれています。何故だろう?と思って調べたところ、アミオダロン100mgは、1錠あたりにヨード37mgを含んでいるんですね。1日2回で200mg服用すると仮定すると、1日あたり74mg。
ヨード74mgは成人にとっても多量です。ヨードは昆布に入っていることが有名ですが、昆布1食あたりのヨード摂取量は、8~9mg程度(乾燥昆布5cm)です。※1
日本は海藻を食べる習慣があるため、もともとヨードの摂取量が多いことが知られています。
アミオダロンによる甲状腺機能低下症
さて、アミオダロンの服用によりヨードの過剰摂取が起こった場合、甲状腺機能低下症を引き起こすことがあります。
ヨードは甲状腺ホルモンの材料ですが、過剰に摂取すると甲状腺内のT3→T4への変換が起こり、 甲状腺ホルモンの合成が低下します。これを、ウォルフ−チャイコフ効果(Wolff-Chaikoff効果)と呼びます。
通常であれば、エスケープと呼ばれる適応現象が起こり、甲状腺機能低下症にはなりません。しかし、患者さんが橋本病(慢性甲状腺炎)を持っていたら、甲状腺機能低下症になりやすいとされています。
甲状腺機能低下症の症状は
・粘液水腫(浮腫)
・倦怠感
・徐脈
・便秘
・声枯れ
・無気力 などです
添付文章上ではアミオダロンの投与前・投与開始1か月後・投与3ヵ月ごとに甲状腺機能検査を行うことが望ましいとされています。薬剤師も、甲状腺機能低下症の兆候を確認する必要があるでしょう。
甲状腺機能低下症が起こったときの対処法
医師に相談し、アミオダロンの減量・中止を提案します。アミオダロンの減量が難しい場合は、チラーヂンによる補充療法を行う必要があります。
アミオダロンの半減期は約2ヶ月です。そのため、中止してもなかなかヨードの量は減ってくれないと考えられます。
慎重にフォローアップを行う必要があるでしょう。
参考文献
1)アミオダロンによる甲状腺機能低下症 伊藤病院内科部長 吉村弘
2)Basaria S & Cooper DS : Amiodarone and the thyroid. Am J Med, 118:706-714, 2005
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