東京出身という寂しさ

ジェーン・スーさんの『貴様いつまで女子でいるつもりか問題』を読み終えた。その中に、「東京生まれ東京育ちが地方出身者から授かる恩恵と浴びる毒(ブログでも読める)」という話がある。地方出身者に対してのモヤモヤは、ほとんど彼女がわたし以上の言葉で代弁してくれた。ありがとうございます、ジェーン・スー様。さて、夏休みです。

わたしは東京生まれ。トータルだと東京にいる期間の方が長いけど、横浜育ち。現在東京在住で、実家も東京。両親ともに東京出身。

自虐系自慢かよと思われるかもしれないけど、子どもの頃、夏休みは寂しいもんだった。友達はといえば、やれ新幹線に乗っただの、おばあちゃんちがデカいだの、親戚が○人集まっただの。わたしはといえば、祖母と渋谷か吉祥寺に行くのが毎年の恒例。映画館か、109か。子どもがニガテな祖母だったので、お金渡されて放流されるだけ。新鮮味のない渋谷(週末になれば友だちと行ってたしね)、コミュニケーションのない帰省。そんな具合なので、歳の離れた弟が大きくなるころには、両親は子どもらに気をつかってか毎年沖縄に連れてってくれた。これは自慢か。

今も寂しい。わたしには、故郷がない。帰る場所がない。

転居が多かったせいもある。今の実家は実家じゃない。ただ両親が住んでる家ってだけ。わたしが結婚して家を出てから両親が建てたものなので、「帰る」という感じもしない。わたしの部屋はないし、行っても落ち着かない。

それだけじゃない。東京も横浜も、景色が変わりすぎる。子どもの頃見ていた景色は、もうあとかたもない。寂しい夏休みの思い出が残っているはずの渋谷だって、もう祖母と行った映画館はないし、東急百貨店もやがて姿を変える予定だ。かつて住んでいたところももう開発されて道にも迷う。うちだけじゃなく、もともと両親とマンション住まいだった友人たちは、やはりほうぼうに散っていたり。

帰る場所がある人っていいなと、夏休みのたび思う。東京で金稼いで、夏休みは実家に帰ってのんびりして、楽しそう。幸せそう。ずるい。

せいぜい、東京で夢かなえてくださいよ。「『いろいろしがらみあるけど、やっぱり落ち着ける地元』を残したまま、東京でやりたい放題(ジェーン・スー)」してくださいよ。と、吐き捨てたくもなるね。

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