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こんな日向坂に誰がした?

秋元康氏がなぜせわざわざこんな手の込んだ試練を課したのかわかりません。

最初から派手に日向坂46としてデビューさせることだってできたはずなのに、3年もの長い間、あえて「けやき坂」(ひらがなけやき)という名で下積みをさせられるというポジションに置かれた日向坂46。

まさか、本気で最終オーディションを受けられずに宙ぶらりんになった長濱ねる一人だけのためにつくったわけではないでしょう。

10代のアイドルの女の子たちにとって3年という歳月は長すぎます。年齢によっては3年も経てば賞味期限を過ぎてしまいます。

しかし、よく言われることですが、日向坂46の魅力はやはりストーリー性の高さです。3年という長い下積みの「試練」こそが秋元氏の考えたストーリーだったのかもしれません。

そして、ストーリーにはキャラクターが立っていることが必須です。大ヒットしたストーリーには必ずキャラクターが立っています。

「友情・努力・勝利」を描いたストーリー

たとえば冠番組の「日向坂で会いましょう」でMCのオードリーが鉄板ネタとして頻繁に使う『キン肉マン』は、まるでキャラクター図鑑です。きっとマンガ史上も最も登場キャラクターが多いマンガと言ってもいいでしょう(200人以上)。オードリーがメンバーにどんなにひんしゅくを買っても、たとえとしてキャラクターの名前を出してくるのは、きっと日向坂46のメンバーに重ね合わせているところもあるのだと思います。

『キン肉マン』に限らず、数々の大ヒット作品を生み出してきた「少年ジャンプ」には「ストーリーの三原則」があると言われます。それは「友情・努力・勝利」。『鬼滅の刃』も『ワンピース』も『ドラゴンボール』も、すべてこの「友情・努力・勝利」のストーリーです。

そして日向坂46も、まさにこの「友情・努力・勝利」を描いたストーリーなのです。

彼女たちが先輩のAKB48や乃木坂46、櫻坂46と肩を並べるまでのストーリーは、まさに昭和のスポ根マンガのような試練に次ぐ試練。まるで『巨人の星』や『アタックNo.1』を見ているようです。

AKB48だって最初に花が咲くまで4年かかったのだから、秋元氏は「ここは原点回帰だ」と思ったのでしょうか。

個vs個からグループvsグループの競争へ

それまでのAKB48に始まった各グループにももちろんストーリーはありました。それは個々人の人気とポジションの争いが軸のストーリーでした。握手会も総選挙も個々の人気を争うストーリーでした。また、フォーメーションなら三列目より二列目、二列目より一列目、そして頂点はセンター。それぞれのポジションをめぐって競い合うストーリーがメインでした。

秋元氏はそこで次なるストーリーの展開を考えたのかもしれません。個人間の競争から、グループ間への競争です。

立ちはだかるのは人気絶頂にあった欅坂46。AKB48とも乃木坂46とも違うまったく独自のスタイルで不動の地位を築いたこの人気グループに、無名ながらトップをめざして爪を研ぎ澄ます若き挑戦者を立てたら、どんな化学反応を起こすのか? そう、無名の4回戦ボーイ(けやき坂46)がチャンピオン(欅坂46)に挑戦するストーリーです。 

何百倍もの競争を勝ち抜いてやっと手にしたアイドルという称号。しかし、それでも終わりなき競争と練習に明け暮れる過酷な日々に耐えきれず、心身ともに病んで辞めていく子もいます。実際、欅坂46の崩壊は、人気の上昇と比例して重なるプレッシャーや練習に潰された子たちの多さを象徴しています。

ところが、チャンピオンに君臨していた欅坂46が平手友梨奈の度重なる体調不良と合わせるように日に日に空中分解していく一方で、入れ替わるようにして、けやき坂46(現・日向坂46)がその存在感を強めていきます。

平手のケガによって、急遽代役として武道館での3日間コンサートを任された日が、きっとけやき坂46のターニングポイントだったに違いありません。それは、チャンピオンへの挑戦権を得た日と言っていいでしょう。

欅坂46が崩壊していく過程を赤裸々に描いた映画『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46』と、日向坂46が3年の歳月をかけて成長していく姿を描いた映画『日向坂46ドキュメンタリー映画 3年目のデビュー』を同時に観比べると、その明暗のコントラストが残酷なほどに浮かび上がってきますが、これも秋元氏の描いたストーリーだとしたら恐ろしすぎます(#゚д゚メ)。

“全員がセンター”の日向坂46

欅坂46は平手友梨奈のカリスマ性に依存しすぎたことが崩壊につながった気もします。

末期は、今泉佑唯、平手友梨奈、長濱ねる、志田愛佳、米谷奈々未と次々と飛車角が抜けたため、改名せざるを得なかったのも致し方なかったのだと思います。

そういう意味では日向坂46には絶対的なセンターがいません。「いや、小坂菜緒がそうだ!」という方もいるかもしれません。確かにセンター回数でいえば小坂菜緒はセンター的存在かもしれません。センターっぽいビジュアルだし、何事も卒なくこなす小坂は優等生的存在です。人気も最もあるでしょう。でも、たとえいま小阪が日向坂46から抜けてたとしても、欅坂46から平手が抜けたほどの影響はないでしょう。

日向坂は“全員がセンター”というくらい、個々のキャラクターが際立っているのです。きっと今後メンバーが100名になろうとも、『キン肉マン』のように個々のキャラクターは立ち続けていくことでしょう。楽曲次第では誰がセンターを務めても文句を言う人はいないのではないでしょうか。

アイドル冠番組の既成概念を破壊

いま、日曜の深夜に通しで放送されている「乃木坂工事中」「そこ曲がったら、櫻坂?」「日向坂で会いましょう」は、すべてKMAXという同じ制作会社がつくっているのですが、MCとメンバーが違うだけで番組の色がここまで変わるのかと驚かざるを得ません。

「日向坂で会いましょう」は、業界での評価がすごく高いという記事もよく見かけますが、アイドルの冠番組の枠を超え、下手なバラエティ番組よりずっとクオリティが高いのです。

もちろん、乃木坂46にも櫻坂46にもそれぞれの魅力があります。格と伝統で言えば、放送順に見られるように乃木坂46(0:00)→櫻坂46(0:30)→日向坂46(1:00)なのでしょう。

しかし、乃木坂46も櫻坂46も結成時と比べるとかなり多くのメンバーが入れ替わっているのに対し、日向坂46は結成から5年で辞めたメンバーは2人のみ(初期メンバーの長濱ねるは欅坂46メンバーとして卒業)。

12人で始まったメンバーもいまは22名。日に日にパワーアップしています。そういう意味では、今年6年目に突入する日向坂46は、いま坂道シリーズで一番のベテランと言ってもいいのかもしれません。

「日向坂で会いましょう」は、番組の面白さ、斬新さ、メンバーたちの可愛さ、面白さ、頭の良さ、性格の良さ、明るさ、愛嬌、気配り、前のめりな姿勢などが「乃木坂工事中」「そこ曲がったら、櫻坂?」と比べると群を抜いており、いまや別格の様相を呈しています。

それはやはり、日向坂46が「友情・努力・勝利」のストーリーを描き続けているからにほかなりません。

AKB48が登場したとき、それまでのアイドルの概念が覆されように、「日向坂で会いましょう」は、従来のアイドル冠番組の既成概念を破壊した事件と言えるでしょう。

バラエティという枠の中に「友情・努力・勝利」というストーリーを盛り込むことで、日向坂46は、ぼくたちに笑いだけでなく、心を揺るがす感動と元気もいっぱいもたらしてくれます。

これこそが日向坂46が放つ「ハッピーオーラ」なのです。

 

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