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居酒屋「西尾さん」のぬくもり酒

居酒屋「西尾さん」のぬくもり酒 著 西尾 尚


この本を読み終えて店内すべてにおいて、こだわりを持って経営をされている方だと分かりました。
この本の著者 西尾尚さんは早くに亡くなったお父様の代わりにお母様に女手一つで育てられた。
しかしお母様も身体が悪く西尾さんが十八の時に亡くなってしまいました。
お母様は入退院を繰り返していたため一緒に暮らせたのは数年だとか。
その数年の間に色々な食べ物屋さんに連れて行ってくれたそうでその時の思い出が体に染みついていたのか大きくなったら、食べ物屋さんになろうかなと思っていたそう。
西尾さん、実は飲食経験が長く、お寿司屋、大学の学食、下北沢で有名な居酒屋汁べゑ。
これらを経験し今の゛西尾さん゛を始めたとのこと。
今回の舞台である゛西尾さん゛
先ずご来店されたお客様に経木の札に名前を書いてお出迎え。
飲食店ではよく使われているお通しをセルフにし、サラダ食べ放題へ。
女性はサラダを注文する率が高いそうで、お通しに起用したとのこと。
ちなみにこのサラダ、永谷園の梅干し茶づけをかけるのが西尾さん流。

料理や、お酒にも独特のこだわりを持っていて、冷奴を注文した際に出てくる鰹節はお客様ご自身で削って頂くスタイル。
確かに、鰹節を削るなんて中々経験する事はないので面白い。
そして、最大のウリは毎朝仕入れる生シラス。
居酒屋にはお刺身があるものと、最初はお刺身を用意していたのですが、客数の少ない時などロスが出ることから、わざわざ神奈川の腰越漁港まで往復三時間かけて生しらすを仕入れに行くそう。
この生しらす西尾さんのこだわりが強い事からほとんどのお客様が注文してほぼその日のうちに無くなると。
その他にも、静岡おでんをオールシーズンやっていたり、私が一番興味を持ったのが、京都の老舗昆布屋さんの昆布をいれた、゛先斗割゛。
名前の由来は京都先斗町から。
ヒレ酒が大好きな西尾さん。
奥様が京都で買ってきた昆布を焼酎に入れたら、これが本当に美味しかったそうで、メニューに。
この昆布もわざわざ月に一回京都まで買いに行かれてるそうで、ここでも強いこだわりを感じました。
この゛先斗割゛替玉焼酎とお湯も提供しているらしく、昆布はそのままおつまみとして食べれますが、焼酎を追加して二杯、三杯と楽しめる。
おかわり焼酎はお客様ご自身で作っていいとの事で、分量もその方次第。
おもしろいシステムだと思いました。
西尾さんには面白い仕掛けがいくつもあり、椅子が茶箱や小型冷蔵庫だったり。
その中にカバンなどもはいるそう。
雑貨屋さんや旅先で見つけた小物を置いたり。
店内の張り紙もたくさんあり、前に冷し中華を作っていたそうですが、店が回らなくなった事から「冷し中華始めません」、静岡おでん「スイマセン…自分で取って、お会計の時○○本食べました。自己申告です。お願いします。」 
などまだまだたくさんあります。

目線をあげて、耳を立てる。
「すみません」と言われる前に注文を取りに行く。
お客様がメニューを見ている様子を見ていれば、決まったというのが分かるそう。
他にもお箸を落としたり、飲み物をこぼしたり、呼ばれる前にお箸を持っていく、テーブルを拭く。
私自身接客も経験しましたし、今も調理をしながら接客をしています。
これ、なかなか難しく調理にばかり気を取られていても対応できません。
かといって接客ばかりしていても調理はできません。
この様な動きが出来る人は私の昔先輩で一人だけいました。
その方は私に接客を教えてくれたホールの先輩ですが、常に耳をダンボにして聞き耳を立てていること。
キッチンの動き、どこの料理を作っている、次はここの料理が出るから今のうちに器を下げる、接待だったら誰に一番最初に料理をサーブするか。
オーダーを取るときに誰だと注文を取りやすいか。
この人はもう飲まないな、この人は飲みたそうだから声をかけてみる。
まだいろいろありますが、大変勉強させて頂きました。

話が逸れましたが、一人でお店を回すのはとても大変だし凄く疲れます。
単純に調理と接客。二倍の疲れではなく、三、四倍は疲れると思います。
一人でお店を回しているだけで正直尊敬です。
この本を読んでいて西尾さんのお客様を大切にしている気持ちが良いお客様を引き付けているのだろうと思いました。
良い人の周りには良い人が集まる。
ただそれだけではないかもしれませんが、私は単純にそう思いました。
お店の雰囲気だったり、空気は本を読んでいるだけではわかりません。
是非、西尾さんの雰囲気を実際に肌で感じてみたいです。

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