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選挙キャンペーンHPに何が表れているか?バイデン編/米国セカイ系大統領選 観戦記#4

バイデン陣営とトランプ陣営の選挙キャンペーンHPを見比べてみた。
今回はバイデンHPに絞って眺めていく。
こんなことはアメリカにいようがいまいができることだが、どうにもこういうことが好きなので。
ただバイデンとトランプに寄付をするには米国の電話番号や住所が必要なので、寄付結果を見ることに関しては地の利が生かされているはずである。

ささっと読みたい人は以下目次の「④セカンドヒットHP」だけでも十分です。この④がWEB上におけるバイデン選挙キャンペーンの中核です。


①Google検索結果/"joe biden"

「joe biden」でGoogle検索すると表示されるのがこちら。(地域はアメリカ)

トップ表示されるのはスポンサードされた寄付HP、次にホワイトハウスのHP、その次にバイデンのキャンペーンHPとなる。
ちなみに、バイデンとトランプの検索結果比較(ヒット数のみ)は以下。


バイデンの検索結果/424,000,000件
トランプの検索結果/582,000,000件

②トップヒット(スポンサード)HP/"Donate Now To Elect Joe Biden/Monthly Donation Needed"

アクセスしたのは検索トップ表示の寄付HP「Donate Now To Elect Joe Biden/Monthly Donation Needed

ページを開くとまず現れるのがこちら。

バイデン陣営、トランプ陣営の両方にアカウント登録しているためデフォルトで私の個人情報が表示されています

アクセスしたら即ポチで寄付ができる設計。
「寄付にあたってバイデン大統領からのメッセージ」のようなものはない。
注目は「Monthly(毎月定額払い)」というキーワード。左上段のトップページにもあるが、ページ中段にも「One-time」と「Monthly (Most Important)」とあり、ページを開いたときのデフォルト状態が「Monthly」となっている。

ということで「One-time(一回払い)」に切り替えて、自由記入欄に1ドルに設定し寄付ボタンをクリック。その結果は以下。

もう2ドルどうですか?」とメッセージが表示される。(右側)
Add $2 tipに照準が合わされているが、Leave no tipをクリック。

「寄付ありがとうございます! 毎月定額の寄付を考えてみませんか?
そして「Give $1/month」に照準が合わされている。
「Skip It」をクリック。

こちらで終了。
最初にアクセスしたときは、この「もう2ドルいかが?」的しつこさや、デフォルトで「毎月払い」にされていたりすることに嫌悪を覚えたが、これでも実にあっさりとしたオファーだったことがのちのちわかる。
そちらは別投稿にて。

③トップヒット(スポンサードなし)HP/"Joe Biden: The President"


次にスポンサードを除けばトップヒットだったホワイトハウスのHPであるJoe Biden: The Presidentへ。

開くとまずバイデンの顔。そして以下の紹介。

JOE BIDEN
THE PRESIDENT
From Scranton to Wilmington to the White House — with thousands of train rides in between
(ScrantonからWilmington、そしてホワイトハウスへ。その間に幾多もの列車に乗ってきた。)

Wikiによれば彼はScrantonで生まれ、主にはWilmingtonで育ったらしい。
その下のリンクはバイデン-ハリス政権の紹介ページで、これは割愛。

ポートレイトの下には「ダウンロード」の文字が。まぁダウンロードしたい人もいるかもしれない。そのダウンロードした画像は以下。

下にスクロールしていくとバイデンの個人史&業績紹介。家族の話にも触れており、物語調。

↓の、最後のバラグラフに要注目。

大統領の個人史にもかかわらず、2019年に大統領候補に立候補した時点までしか記されていない。
2020年の大統領選と、その後の大統領期間については何も記されていない。この「バイデンのこれからの活躍に乞うご期待!(2019年)」的な終わり方をみると、2019年時点に作られた何らかの文章をとりあえずコピペ転用し、その後追記しようとしたが忘れっぱなしになっている、のような状況に見える。
これは少し驚かされた。このHP自体には大したことが書いてあるわけではないし、それは過去のどの大統領も大差なかっただろうが、大統領の氏名で検索したらトップヒットするページで、ホワイトハウスのHPである。世界中からアクサスされるページである。
バイデン陣営の手ぬかりが感じられた。

ちなみに「岸田文雄」で検索すると以下となる。
トップは岸田首相個人のHP。

その岸田文雄公式サイトにアクセスするとこのような感じ。

そして検索結果の5番目くらいに首相官邸のHPが表示される。

この内閣総理大臣 岸田 文雄にアクセスするとこんな感じ。

④セカンドヒットHP/Joe Biden for President: Official Campaign Website

次にセカンドヒットとなるJoe Biden for President: Official Campaign Website

これがバイデン陣営の大統領選キャンペーンの中核となるHPで、つまり一番力を入れているHPである。
アクセスしてみる。

すると↑のとおり、トップ画像が表示される前に、まず「寄付のお願い」ポップアップが出る。
「BIDEN・HARRIS」をトップ画像・ロゴ両方で推しながら、今月3月31日までになにとぞ寄付を!というようなことが書いてあるが、特に3月31日までに必要な理由は特になく、ただ「goal(目標)」だからのよう。
上記は3月中旬のキャプチャだが、これが3月27日にキャプチャを取るとこのようになっている。

説明文の頭に“DEADLINE ALERT”とつく。改めてなぜ3月31日までに寄付が必要かというと「なぜなら四半期目標だからです」というのがこのアップデートでわかる。そして特に四半期目標数値や現状がいくらなのかの表示はない。

今後触れていくつもりだが、バイデンもトランプも寄付に関しては終始この調子で、とにかく抽象的に煽る。おそらくバイデン・トランプがどうこうではなく、アメリカにおける選挙運動の寄付はこういうものなのだろう。
とにかく今すぐ寄付を!理由は◯◯!とあるがその理由たる「◯◯」はものすごく抽象的で、とにかく煽ることに集中している。
ただ、適当に「抽象的」にしているのではもちろんないし、それぞれのトーンには個性が出ていてかなり面白い。こちらも別投稿にて。

なお、このHPのトップ画像には別バージョンがある。それが以下。

クリントンとオバマが登場

ここにはよく言われる、共和党支持者はもちろん民主党支持者からもバイデンの人気が全然ない、という状況がありありと表れている。すなわちバイデン一人では力不足。
通常版のトップページでハリスと共演しているのもその表れだろう。(ただハリスも人気がない)

この文章を書いているのは3/27(水)だが、翌3/28(木)にはニューヨークのRadio City Hallで、バイデンの呼びかけ(ということになっている)によってオバマとクリントンが集い、民主党大統領経験者三人衆による大規模な寄付イベントがある。
このイベント告知と、元大統領たちのお墨付き演出による票の獲得(なにせオバマのXフォロワー数はバイデンの3倍の1.3億人)をねらった、元大統領たちの力にあやかるためのトップ画像というわけだ。

なおこのイベントへのオンライン参加(参加料あり)を促すメールがいま時点でも頻繁にきており、これもめちゃくちゃしつこく、しかし面白く、こちらも別投稿にて。
ちなみに、バイデンはその人気の無さとは対照的に寄付集めには大きな成功を収めていて、トランプの倍以上の寄付を集めている。

こういった寄付お願いのポップアップを閉じると表れるトップページが以下。

最上段は寄付お願いで、こちらは固定表示となっている。
真ん中にはキャンペーンへの会員登録。この会員登録をすると毎日バイデンから寄付願いのメールが届く。(毎日受け取っている)
そしてその右には「America is back! -Joe」。これは2021年にバイデンが大統領就任直後に使い始めた文句のようだ。

もちろんトランプを意識してのことで、トランプのアメリカ第一主義(アメリカ自身の国益が他の何よりも大事)の4年間はアメリカ的ではなかったが、私が就任したことでそれは終わり、本来のアメリカが戻ってきました、というメッセージ。
これを改めてキャンペーンHPのトップページにも使うということは、つまり今は本来のアメリカが戻ってきているが、もしトランプが当選してしまったら?を表しつつ、これを「Make America Great Again」というキャッチフレーズに対抗して使えたら、ということだろう。

このトップページを開くとすぐ、右下にバイデンの顔ポップアップが出てくる。

Hey there, it's Joe.

日本でも今はかなり増えていていると思われるが、アメリカはサービスや製品に関する問い合わせが、まずはとにかくチャットで行われる。
ボット、またはなんらかAIを搭載したチャットポップアップが常駐しており、ボット相手にチャットをしてももだいたい埒が明かないので「人間を出して」と書き込むと、◯分ほどお待ちください、と表示されて人間が実際にチャット相手として出てくる。

この種のチャットは担当者による裁量が大きく、同じ問い合わせ内容であったとしても応対が異なり、すなわち当たり外れがあり、担当者によって言葉遣いやテンションも大きく異なり、同じ社のチャットでも相手によって結末が全く異なることもある。
問い合わせが一段落したところで「ところで今日はこうこうこんないいことがあって今とてもハッピーな気分なんだ。君にもいいことがありますように。Have a good weekend! Bye!」のように終わったこともある。
このチャットによるカスタマーサービス単体でもいろいろ面白いのだが、今は割愛。

このバイデンHPのチャットもカスタマーサービスチャットを模して「バイデンボット」とちょっとしたやり取りや質疑応答ができるのかな?と思いクリックしてみる。

チャットはできず、バイデンが一方的に言いたいことだけ言って終わった。「YES, I WILL DONATE」じゃねぇよ、と思う。

思うが仕方ないので「YES, I WILL DONATE」をクリックすると現れるのが以下。これはいかなる「DONATE」系のボタンをクリックしても共通。

ここではデフォルトが「Monthly」ではなく「One-time」になっていた。良心の存在を感じられた。

さて、TOPページをスクロールすると「OUR FIRST CAMPAIGN VIDEO」というキャンペーンビデオ(YouTube貼り付け)なるものが現れる。

上記と同じビデオがこちら。
https://youtu.be/ChjibtX0UzU?si=uw1knV6lfpPmkxL_

短時間(3分)で、トランプによる悲劇を回想→トランプが返り咲いたら悲劇が繰り返される→それに立ち向かうバイデン→明るい未来のイメージ、といった流れ。音楽・色味・編集・ナレーション等全般的にエモーション重視で宣伝(プロパガンダ)として普通によくできていると感じた。
73万回の再生(2024年3月時点)。

ただ、動画内容と同等に注目すべきはコメント欄で、トランプ支持者による荒らしはもちろんあるわけだが、それよりも重要なのは、
“I can't believe they allowed comments😂”
というコメントが圧倒的な評価(3396いいね)とともに評価トップのコメントになっており、
次に
“That’s the most times I’ve seen Kamala Harris ever”が評価セカンドのコメント(1486いいね)になっていること。

15,432 件のコメントがあるなかでこれらがトップに来ている。
これらはつまり「お前は自分がどういう風に見られているか全然わかってないんだな(笑)」という皮肉で、風刺である。
トランプ支持者による単なるヘイトやディス、そうでなくとも批判がトップではなく、トランプ支持者というわけでもなさそうな者による「風刺」コメントがトップ。

HPに戻って、さらにスクロールするとメニューが出てくる。

ごく普通のメニューであまり見るところもない。とりあえず「FAQ」をクリック。

ごくごく普通。具体的な答え内容も事務的なものだったので割愛。(※STOREについては別投稿にて)

もう他には特に何も無さそうだな、と思いながら「Work With Us」を開いてみる。すると具体的な人材募集が一覧になって表れる。これはとても面白い。

ここでも追いかけてくるJoe(右下)

大項目で15、中項目で27、個々の職種で76もの職種が募集されている。(最下部の「General」はバイデン陣営単体の募集ではなく、おそらく民主党全体としての募集)
つまりこれらは、バイデンの選挙キャンペーン組織の全貌が表れてしまっている、ということではないだろうか。

すべてを細かく見るのは手に余ったので、給料を中心に一通り確認してみた。単に給料が高いものほど、より重視されているだろうという理由で。
ということで、特に給料が高額だった職種は以下。

  • Paid Media Analytics Director:$120,000 - $145,000 a year

  • Associate Counsel - Campaign Finance:$120,000 - $145,000 a year

  • Director of Digital Partnerships:$125,000 - $135,000 a year

  • Design Director:$120,000 - $145,000 a year

  • Director of Video:$120,000 - $145,000 a year

  • Chief of Staff and Director of Strategic Planning, Digital and Mobilization:$125,000 - $135,000 a year

  • Director of Social Communications:$140,000 - $150,000 a year(最高額)

  • Director of Financial Planning and Analysis:$120,000 - $145,000 a year

  • Employee Experience Director:$120,000 - $145,000 a year

  • Director of Production:$140,000 - $150,000 a year(最高額)

  • Director of Scheduling and Advance - Principal Team:$140,000 - $150,000 a year(最高額)

安い職種は以下。

  • Communications Associate:$60,000 - $65,000 a year

  • Research Associate – Opposition:$50,000 - $55,000 a year(最安額)

  • Research Associate - Rapid Response:$50,000 - $55,000 a year(最安額)

  • Senior Research Associate – Opposition:$60,000 - $65,000 a year

  • Senior Research Associate - Rapid Response:$60,000 - $65,000 a year

  • Helpdesk Technician:$60,000 - $70,000 a yea

  • Briefing Coordinator:$50,000 - $60,000 a year

  • Donor Retention and Cultivation Assistant:$50,000 - $60,000 a year

  • Reproductive Rights Special Assistant/Coordinator:$55,000 - $75,000 a year

  • Scheduling Coordinator:$60,000 - $65,000 a year

  • Special Assistant to the Second Gentleman's Team:$55,000 - $75,000 a year

インターンも一つだけあり、こちらだけは時給となっていて以下。
Battleground States Intern:$17 - $17 an hour

平均するとだいたい年9万ドル~な印象。
最高額職種でも5年の経験があれば応募できる。その他は経験がなくても応募できる。

Chief Photographerに$90,000 - $110,000 a year、Photographerに$65,000 - $85,000 a yearの求人を出しているのが印象に残った。

ふと気になって、トップページに戻って言語を「En Espanol(スペイン語)」にして同じく「Work With Us」を見てみる。

赤マルがスペイン語への切り替え

すると「一緒に働きましょう」的な説明文言は英語と全く同じものが翻訳されているが、具体的な求人は一つもなかった。

以上がバイデン関連のHPを眺めた記録である。

選挙キャンペーンの中核たるキャンペーンHPは見やすく、色彩、フォント、配置、文字の大きさ等、当世風な洗練を目指して作られていると感じた。
我が民主党のイメージはこう/このように我が民主党はイメージされたい、という、仕様打ち合わせと幾度ものチェックを経て、このHPは作られている。

しかしそういったデザイン的なもの以上に、非常に重要な示唆として受け取ったこと。

バイデン陣営は自身のこの4年間の成果と、再選後のビジョンを、YouTubeに投稿したキャンペーンビデオを除いて一切プレゼンテーションしていない。
「仕様打ち合わせと幾度ものチェックを経て」それらをHPに含めていない。
なぜか。

それはバイデン陣営(人材募集ページを見たところ様々なデータ分析系のエキスパートが揃っている or 揃えようとしている(ただしそのエキスパート達はホワイトハウスのバイデン個人史がアップデートされていないことを指摘していない))自身が、バイデンの積極的支持者も消極的支持者(=反トランプ系)も、バイデンの功績やビジョン提示に関心がなく、そういうものを頑張って掲載しても効果がなく、なんなら邪魔に思われ、逆効果になってしまうから、とにかくコンテンツは削いでシンプルにして、誰でも迷わずぱぱっと寄付金を払える寄付中心(なんなら寄付オンリー)のHPにデザインしておいた方がよい、と分析しているからに他ならない。

どうすればトランプに勝てるか?を考えに考えた当座の結果がこのHPである。
岩盤支持層から浮動票まで含めて、この選挙はバイデン自身には、バイデンそのものには興味が持たれていないことを、このバイデン選挙キャンペーンHPが雄弁に示してしまっていると感じた。


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