ボドゲ用語 魔法の円(マジックサークル)について
児童クラブで毎週子どもたちとボードゲームをしているなりさんです。
低学年の子たちどうしでボードゲームを遊んでいると割と「もうやめる!」といった声が聞こえてきます。誰かがルールを無視したかか、負けそうになったかでゲームがつまらなくなったんでしょうね。
そのあとはもう残っていた子も次々と「わたしもやめる」「ぼくもやめる」と言い出し離れていきます。最後に残るのはカードが散らかったテーブルだけ。
今回はどんなボードゲームなのかという内容ではなく、人が集まる場で起こるものごとの様子についての備忘録です。
ボードゲームに限らず、場を共有するものごとには少なからず【魔法円(マジックサークル)】と呼ばれるものが生まれます。
いきなり専門用語なので補足をば
マジック・サークルとは…
ゲーム(共有意識)が成立する範囲のこと。
あるメンバーが集まって、あるルールのもと何かを行う際、その周囲にはそのメンバーだけに成り立つゲームの為の共通意識がある場が生まれる。
その範囲のことをマジック・サークル(魔法円)と呼ぶ。
逆に、マジック・サークルの範囲外にいる人から見れば、このメンバーは何をしているのかまったくわからない。
詳しくは ルールズ・オブ・プレイ をどうぞ。
なんだそりゃとなりますね 笑
簡単に言えば、
一般人から見れば、ボードゲームで使われているコマとか、さいころは、言ってしまえばただの木やプラスチックの塊です。
それに面白さを付与しているのは遊んでいる人達の想像力ではなく、それを動かすために決められた明確なルールなんです。
このマジックサークルと呼ばれる範囲はその場にいる者たちがあるルールに同意することで生まれます。
逆に、そのルールを守らないようなことをする人がいればマジックサークルは簡単に消滅してしまいます。
さて、子どもたちを見ているとこのマジックサークルが代わる代わる生まれては消えていく様子が分かります。突然遊びが始まって、突然終わる。
子どもたちは、遊びに入るための共通意識に入り込むのがものすごく速いんです。
1つの例を挙げると休み時間になると走り回る子たちです。
A君がB君に近づき、手でタッチをして逃げ始めます。
B君は逃げたA君を追いかけます。休み時間が終わるまでに追いかける側になっていた方が負けという鬼ごっこの始まりです。
このA君とB君にとってはもうこの場は鬼ごっこのフィールドです。他のものはただの障害物にしか見えていません。この2人にとっての「鬼ごっこ」という名の勝負を賭けた「マジックサークル」が形成された瞬間です。
大人目線で見た場合、この子たちは教室を走り回っているようにしか見えませんん。危険なので注意しなければいけませんね。
これはマジックサークル外から見ているからそう思うのです。
他にも、1人で石けりをして帰る子や、道路の縁石の上から落ちないように移動している子なども、あるルールに則った行動しているので、マジックサークルが生まれていると言えます。
では、このマジックサークルはどうすれば消えるのか。
1つは決着が付く(終了条件を満たす)こと。
もう1つは何かしらの要素の介入によってマジックサークルの継続ができなくなることです。
例えば、
先生に注意されておとなしくしなければならなくなった。
片方が怪我をしてしまい、やめることになった。
面白くないからやめると言い出した。
などなどほんの些細なことによってマジックサークルは消滅してしまいます。マジックサークルというものは不安定なものなんですね。
マジックサークルとは、本来無意味なものに対して意味を見出し、それを周りの人と共有することで生まれるものです。
ボードゲームはまさにそれで、ただの木やプラスチックや絵に対して意味を見出し、ルールを付け加えることで勝敗の条件をつくり、刺激的な楽しみを生み出します。
ボードゲーム以外にもマジックサークルと呼ばれる領域は生まれています。
例えばサッカーの応援、サークル活動、カラオケ大会、キャンプ会、アイドルのファン活動、花火などなど人が集まって何かをするときには必ずこのマジックサークルが少なからず生まれます。明確なルールがない場合でも、場にいるメンバーにとっての暗黙の了解といったものがその代わりに機能します。
「マジックサークル」という表現ですが、なんとも神秘的な名前です。
人は何かを楽しんでいるとき、その当事者は魔法にかかっているんですね。